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自分の為、家族の為の、自己啓発のためであり、本気で、宿命転換をする私の足跡🐾❤

未来対話

未来対話  君と歩む勝利の道 第1回   (2012
 

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未来対話  君と歩む勝利の道 

 

【第1回】 さあ 出発しよう!        2012.5.1

【第3回】 友情は宝なり           2012.7.1

【第4回】 夢は未来を開く“宝の鍵”  2012.8.1

【第5回】 学び続ける人が勝者     2012.9.1

【第6回】 朗らかに! 粘り強く!   2012.10.1

【第7回】 誇り高く 向上の道を!  2012.11.1

【第8回】 秀才とは親孝行の人なり 2012.12.1

【第9回】 世界が君の本舞台  (2013.1.1)

【第10回】 祈りは青春勝利の力  (2013.2.1)

【第11回】 使命の翼を広げよう!  (2013.3.1)

【第12回】 「チャレンジ」そして「チェンジ」! (2013.4.1)

【第13回】 君よ輝け! 世界を照らせ (2013.5.1)

【第14回】 いつも本とともに  (2013.6.1)

【第15回】「正義の走者」は進む!  (2013.7.1)

【第16回】 「平和の種」を蒔く人に(上) 2013-8-1

【第17回】 「平和の種」を蒔く人に(下)(2013.9.1)

【第18回】 感動とともに心は豊かに  (2013.10.1)

【第19回】 希望の未来を描こう!(2013.11.1)

【第20回】 御書があれば負けない  (2013.12.1)

【第21回】 勇気の一歩で世界へ!(2014.1.1)

【第23回】 師弟に勝るものはなし!(下) (2014.3.1)

 

第1回 さあ 出発しよう!   2012.5.1

 

みんなが勝つために私はいます

 

アメリカの民衆詩人ホイットマン

陽気に力強く大道を歩む。

今から後は幸運を求めない。

この私自身が幸運なのだ

 

 

 池田先生の新連載「未来対話──君と歩む勝利の道」がスタートします。聞き手は、未来本部の代表らによる「未来対話」編集委員会です。

 

池田名誉会長 「未来ジャーナル」の誕生、おめでとう!

 こうして新しい新聞紙上で、最も期待し、信頼する未来部の君たちと対話できることが、私はうれしい。

 私は、日本中、世界中から、毎日毎日、たくさんの報告やお便りをいただきます。

 大切な同志の近況はもとより。各国の指導者や学識者の方々からのお手紙や連絡もあります。

 また、いくつかの対談も、連載が続いています。

 そうした中で、何にもまして私の心が弾むのは、中等部や高等部の皆さんが元気に成長している姿や一生懸命に努力している様子をうかがうことです。

 ぐんぐんと伸びていく君たちの若き生命ほど、まぶしいものはありません。

 もちろん、一生懸命に努力しても、なかなかうまくいかないこともあるでしょう。しかし、一生懸命であるということ自体が、素晴らしいのです。

 自分では意識していないかもしれないけれど、生きることは戦いです。全細胞が、生きよう、生きようとしている。目に見えない病原菌とだって必死で戦っている。だから、毎日、成長するんです。

 日蓮大聖人の仏法は、一生懸命、生きる人のためにあります。生きて生きて、生き抜くためにあります。幸福になるためにあります。勝つための信心です。

 ですから、みんなが勝つために、私はいるんです。

 本当なら、すぐにでもみんなのもとへ飛んでいき、語り合いたい。みんなが、今、悩み、考えていることを、一緒に考えていきたい。

 一番大事な皆さん方を、少しでも励まし、力づけたいのです。

 皆さん方のことを真剣に応援してくれている、お兄さんやお姉さんたちもまじえ、また、時には、お父さんやお母さん方もお招きして、お茶でも飲みながら、さわやかな緑の公園で楽しく語り合う。そんな思いで、この「未来対話」を始めましょう。

 

 ──中等部、高等部のメンバーは、本当にさまざまな悩みを抱えています。勉強や将来の進路、学校での人間関係、自分の性格や容姿のこと、両親のことなど……。厳しい経済不況も、メンバーの家庭に深刻な影響を与えています。「いじめ」の問題も根深くあります。最近は、インターネットを悪用したケースも増えています。

 

名誉会長 複雑な時代だね。本当に難しい問題ばかりです。

 私の青春時代とは、今は世の中が大きく違います。

 みんなは元気かな、大丈夫かなと、何をしていても、皆さんのことが心から離れません。

 今から40年前に、私は、偉大な歴史学者のトインビー博士と対話を交わしました。

 当時、80代だった博士は、ひ孫たちの世代が生きる時代のことを基準にして、物事を考えていると言われました。未来のために心を尽くしていくことが、若々しく生きる秘訣であるとも、微笑んでおられました。

 私も博士と同じ年代になって、その気持ちがよく分かります。

 私も、皆さんから、たくさん教えてもらいたい。そして、共々に未来へ進んでいきたいのです。

 未来を見つめ、よりよくしていくために、貴重な鏡となり、糧となるもの──それが、歴史です。また先人たちの知恵です。

 ですから、私が学んできた人類の精神の遺産、また戦いのなかでつかんできた「心の宝」を、皆さんにお伝えしながら、対話を進めていきたいと思います。

 とくに私は、青春時代、「戸田大学」に学びました。毎日毎朝、人生の師である戸田城聖先生から万般の学問を教えていただいたのです。

 先生は、それはそれは厳しかった。「大作、今、何を読んでいる?」とも、よく聞かれました。

 一冊の本も、深く深く掘り下げて、そこに書かれた思想の真髄を教えてくださいました。

 一つ一つが、ありがたい薫陶でした。それが、私の「宝」です。そのすべてを、みんなに贈りたいのです。

 

 ──ありがとうございます。

 メンバーにとって、池田先生との大事な原点になると思います。とくに今回の大震災を通し、皆が共々に立ち上がる「言葉の力」があらためて見直されています。

 

名誉会長 本当にそうだね。

 東北の被災地でも、中等部、高等部のみんなが、友だちや家族で励まし合いながら、苦難と戦い続けていることも、よくうかがっています。

 あまりにも過酷な試練の中で、懸命に自分の思いを言葉にし、声をかけ合って、負けるものかと、前へ進んできました。

 偉い。本当に偉い。私は、みんなを心からほめてあげたい。

 人生には、言葉を失うような出来事がある。言葉では言い尽くせない悩みや苦しみもあります。

 しかし、それでも言葉にして、少しでも分かち合うことができれば、そこから光が見えます。解決の道が開けます。言葉は心と心をつないでくれるからです。

 この対話の副題は、「君と歩む勝利の道」だね。

 私一人でもなく、今、この新聞を読んでいる君一人でも、あなた一人でもない。

 どこまでも、私たちは一緒なんです。

 私と、また良き友、良き先輩、良き後輩と共に、一歩一歩、勝利へ向かって歩いていくんです。

 その意味から、今回は、ホイットマンの詩を選びました。

 ちょっと難しいかもしれないけど、私は大好きなんです。一緒に読みましょう。

 

 ──はい。アメリカの民衆詩人ウォルト・ホイットマンの「大道の歌」からです。

 「徒歩で、陽気に、わたしは大道を歩き出す、

 健康で、自由に……」

 「今から後わたしは幸運を求めない、このわたし自身が幸運なのだ、

 今から後わたしはもうこっそり話などはしない、もうひきのばしなどはせぬ、何ものをも入用《にゅうよう》としない、

 家の内での愚痴や、知ったかぶりや、あら捜したらだらの批評など飽き飽きした、

 力強く、満足して、わたしは大道を旅する」(『詩集 草の葉』富田砕花訳、第三文明社

 ホイットマンは、リンカーン大統領と同時代を生き、民主主義の理想を高らかに歌いました。

 

名誉会長 「大道の歌」という題名も素晴らしい。明るいじゃないか。

 「大道」は、英語のタイトルでは「オープンロード」です。「開かれた道」「自由な道」「広やかな道」という意義もあるでしょう。

 みんなの未来も、この詩のように、大きく大きく開けています。だれ人たりとも、皆さんの行く手をさえぎることはできません。

 私がこの詩を読んだのは、戸田先生とお会いして間もなく、皆さんより少しお兄さんのころです。

 私の青春時代は戦後の混乱期です。それまでの価値観が崩壊した時代です。私たち青年は、何も信じられなかった。

 戦争が終わって、皆、どうやって生きていけばいいのか。確かなものが見出せませんでした。

 加えて、私は結核を患っており、医者からは「30歳までは生きられない」と言われていました。夕方になると、決まって微熱が出ました。本当に苦しい毎日だった。精神的にも、肉体的にも疲れ切っていました。その中で、ただ本だけが「確かなもの」として目の前にあったのです。

 当時、本は、なかなか手に入らなかった。皆さんには想像もつかないかもしれませんが、長時間、本屋の前に並んでも買えないこともあったのです。ホイットマンの詩集『草の葉』は、そうした時に手に入れた、まさに「宝の一書」でした。

 私はこの詩を読み、心に残った部分は暗唱しました。口に出すたびに、大詩人の魂が私の血潮を駆け巡るように感じました。そうやって、自分を励まし、鼓舞していきました。

 師匠・戸田先生は、そんな私に最高の大道を開いてくださったのです。19歳で初めてお会いし、先生の「大道の旅」を、共々に歩ませていただきました。

 この詩のように、私は本当に幸運でした。何よりも幸せでした。もう何も、いりませんでした。

 先生の進んでこられた道が、私の道になりました。先生の弟子として、私は戦い、勝ちました。今も、その道を歩み続けています。私には、一点の後悔もありません。

 

 ──私たちも、「大道の歌」から「さあ、出発しよう! 悪戦苦闘をつき抜けて! 決められた決勝点は取り消すことができないのだ」という一節を池田先生に教えていただき、自分自身を励ましてきました。

 

名誉会長 ありがとう。この言葉も、中等部、高等部のみんなに贈りたい大切な宝です。

 何人もの青年に、この言葉を書き贈ってもきました。

 生きることは、悪戦苦闘の連続です。でも、みんなが勝つことは決まっている。みんなが幸せになるのは決まっている。

 「決められた決勝点」は、だれにも取り消せない。

 悪戦苦闘が続く時、そこを突破するには、ど真ん中を勇敢に突き進むことです。それが、最も近道であり、直道なんです。

 もがくこともある。悩むことだっていっぱいある。しかし、それは、勝利の大道を、まっしぐらに前進している証拠です。

 時には、くたびれて立ち止まることもあるでしょう。大きく深呼吸して、また歩き出せばいいんです。私たちは、いつでも一緒です。どこまでも共に行く旅路です。

 どうせ悪戦苦闘するなら、楽しく朗らかに進もう──私は、そうしてきました。一歩も引きませんでした。いじめられても、いわれなき非難中傷を受けても。師子王である戸田先生の弟子ですから。

 ホイットマンにも、良き仲間がいました。彼の健康にも尽くした近代医学の父オスラー博士は、こう語っています。

 「勇気と快活さがあれば、人生の荒波を乗り越えるのが容易になるばかりでなく、諸君は心の弱った者に慰めと助けを与えることができる」(『平静の心 オスラー博士講演集』日野原重明・仁木久恵訳、医学書院)

 「勇気」に燃えて、そして「快活」に荒波を乗り越えた分だけ、多くの人を励ませるのです。

 いよいよ、みんなの時代だ。みんなにも、それぞれの「決勝点」がある。今は分からなくても、意味が見出せなくても、一生懸命、粘り強く進み続けていけば、必ず見えてくるものだ。

 君の、あなただけの「決勝点」が絶対にあります。

 さあ、出発しよう! 私がついています。毎日毎日、祈っています。「勝利の大道」を決勝点に向かって、明るく胸を張って、歌を歌いながら前進しよう!

 この「未来対話」を通して!

 

 ──よろしくお願いします。

 聞き手の私たち自身が、まず中等部、高等部の皆さんと共々に、成長してまいります。

 

第3回 友情は宝なり    (2012.7.1付 未来ジャーナル)

 

「良き友」がいれば負けない?

 

古代ローマの哲学者 キケロ

友情は順境をいっそう輝かせ逆境を分かち担い合うことで軽減してくれる

 

 ──今、若き後継の友は、各地で「未来対話」を学び合い、皆で成長を誓い合っています。

 「池田先生のお話を、直接、聞いているような気持ちになりました」と、感想を寄せてくれたメンバーもいます。「師匠」と「弟子」の心は一つと、深く感動します。

 

名誉会長 未来部のみんなは、私の生命だもの。私も、みんなの声を聞いて、みんなの心を感じているよ。さまざまな悩みに、真っ正面から向き合っていることも、よく分かります。

 

 ──友情に関する質問や悩みが多いのには、本当に驚きました。

 「同級生との接し方が苦手で、自分から声をかけられません」「ケンカをして仲直りしたいけど、なかなか勇気が出ません」などなどです。

 

名誉会長 何とかしたいと悩むのは、一歩前進している証拠です。一生懸命だから、悩むんです。

 昔から文学作品にも、「友情」をテーマにした傑作が多い。太宰治の『走れメロス』や、ロマン・ロランの『ジャン・クリストフ』などが、時代が変わっても読み継がれているように、誰もが真剣に見つめてきた命題なんです。

 だから、みんなの友情の悩みも、自分だけで窮屈に抱えずに、偉大な文学や先人たちの「智慧の鏡」に照らしながら、大きな心で悠々と見つめていったらどうだろうか。

      

 ──「友だちは増えても、親友がいません」という悩みも寄せられていました。

 

名誉会長 焦ることはありません。若い皆さんの友情の物語は、いよいよ始まったばかりです。

 皆さんの年代になれば、自分の個性も考え方も、はっきりしてくる。今まで仲良しだったのに、だんだん合わない感じがする友だちもいるでしょう。時には「孤独」を感じることもあるかもしれない。

 それは、みんなが成長しているからなんです。

 皆さんは、体も、心も、頭も、日々、発達している。友情だって成長し、発達していくんです。それは、自立した人間として、大人への階段を上っていくステップと言ってよいでしょう。

 その途上の孤独や葛藤に耐えてこそ、「自分が本当に必要としている人は誰か」を知ることもできます。

 私は、戸田先生と出会う直前の19歳の時、親友と真摯に人生を語り、哲学を語り合いました。友はキリスト教の信仰を選びました。私自身は詳しい教義を理解できないながらも友の決断を尊重し、それぞれの道を歩み始めたのです。

 「森ケ崎海岸」の詩に──

 

 友の求むる 遠き世に

 たがうも吾《わ》れは 己が道

 

 と詠んだ通りです。

 その友は、今も私の胸の中にいますし、仏法者として題目を送り続けています。

 「真実の正しい人生とは」──戦後、それまでの価値観が崩壊する中で、私は悩み抜きました。

 師匠と仰ぐ戸田城聖先生とお会いできたのは、まさにその時です。私が求めていたのは、この方だと思いました。

 そして数々の薫陶を受け、戸田先生の弟子として、世界中に友人をつくり、広げてきました。皆さんのお父さん、お母さん方とも、広宣流布という志のもとに、固い友情で結ばれています。

     

 ──「嫌な人を避けてしまったり、仲の良い友だちにも、ちょっとしたことで怒ったり冷たくしたりしてしまう」「苦手な友だちとつき合うには、どうしたらいいでしょうか」という声もありました。

 

名誉会長 人間だから、“好き嫌い”があるのは、当たり前です。仲が良いからこそ、ケンカしたり、激しくぶつかったりすることもあるでしょう。また、「ちょっと苦手だから」と距離をとっていても、何かのきっかけで、心が通い合う場合だってあります。

 だから、ありのままでいいから、快活につき合ってみることだ。

 試行錯誤を繰り返しながら、みんなと仲良く聡明に協調できる人格を、自分らしく、だんだんと鍛えていけばいいんです。

 ある夕べ、私はイギリスと中国の敬愛する知性と、心ゆくまで語り合いました。その時、3人で確認し合った『論語』の一節があります。

 「文を以て友を会し

  友を以て仁を輔《たす》く」と。

 少し難しいかもしれませんが、「学問によって友人を集め、その友人によって自分の人格の成長を助けていく」という意義です。

 「友情」には、好き嫌いの感情に振り回されるのではなく、お互いを高めていくための二つの翼があります。

 一つが「向学」であり、一つが「錬磨」です。

 「学ぼう」「向上しよう」という人の周りに「良き友」は集うのです。その「良き友」の中で人間は「磨かれる」のです。高みを目指す真実の友情は、その努力の実りを、何倍にもしてくれます。

 とくに、学生時代の友情には、共に学び合い、共に切磋琢磨する素晴らしい触発の力がある。

 気が合う、気が合わないという次元を超えて、一緒に努力し、向上していく中で、自分の力が引き出される。相手の良さを引き出すこともできる。互いに「さすがだな」と尊敬し合うこともできる。

 皆さんには、ぜひ、この友情の深さをつかんでいただきたい。

 

 ──携帯電話を持つメンバーが教えてくれましたが、「メールの返信が遅れると関係が悪くなる」と言ってくる友だちがいるそうです。

 

名誉会長 便利な反面、慌ただしいこともあるんだね(笑い)。

 確かに、反応は速い方が気持ちいい。私も、伝言や礼状などスピードを大切にしてきた一人です。

 でも、中高生の皆さんが、もしメールのやりとりなどで神経をすり減らして、勉強や睡眠の生活のリズムを乱してしまったら、本末転倒だろうね。これは、お父さんやお母さんに心配をかけないように、賢くお願いします。

 本当に信頼できる友だちなら、メールの返信が遅れたことだってきっと分かってくれるはずだよ。

 私の世界の友人にも、お互いに多忙のゆえに、数回しかお会いしたことのない方が少なくありません。中には、手紙のやりとりだけで、一度もお会いできていない友人だっている。

 中国の「人民の父」と敬愛される周恩来総理とは、たった一度しかお会いしていません。

 それでも、私たちの友誼は、永遠だと確信しています。

 なぜか──それは、私が周総理を信じているからです。周総理の心を心としているからです。

 たとえ、総理がおられなくても、私の心が変わらなければ、友情は不滅なのです。

 

 ──池田先生は、不滅の「友情の物語」として『永遠の都』(ホール・ケイン著)について、これまで何度も語ってくださいました。

 

名誉会長 そうだ、『永遠の都』だね。戸田先生が「この本を君にあげよう」と手渡してくださった。信頼する同志と回し読みしたことも懐かしい思い出です。

 『永遠の都』には、青年革命家ロッシィと、無二の盟友ブルーノの同志愛が描かれています。

 西暦1900年のローマを舞台に、「人間共和」の世界を築くために立ち上がったロッシィ。その彼が、独裁者によって弾圧を受けます。ロッシィの盟友ブルーノもまた捕らえられ、拷問を受ける。

 ブルーノは「ロッシィがお前を裏切っている」との嘘の手紙を見せられます。

 しかしブルーノは、最後の最後までロッシィを裏切らなかった。そして、「ロッシィ万歳!」と叫びきって、死んでいく。

 その叫びは「自分に打ち勝った勝利の声」と讃えられています。友を信じ抜いた人の胸中には、勝利の栄冠が輝くのです。

 二人の友情の素晴らしさは、互いに信じ合い、共に正義の理想に生き抜いていく「強さ」にある。

 この究極の「人間の強さ」は、苦難によって磨かれます。

 盟友ブルーノの前で、ロッシィは語ります。

 「苦しみを甘んじて受け、耐え忍んで強くなってきた人間こそ、この世でいちばん強い人間なのだ」(新庄哲夫訳、潮出版社刊)

 自分が強くなれば、何があっても崩れない金の友情が築けます。

 友情は、いつも「自分から始まる」のです。誇り高い友情を築くには、自分自身が誇り高い信念を持つことです。誇り高い青春を生き抜いていくことです。

 たとえ相手に裏切られようと、自分は絶対に裏切らない。この信義を勇敢に誠実に貫き通した人生は、永遠に光る勝利の劇です。

 「友情の真髄は、わが創価の同志愛にあり」と、私は19歳から65年間の命を賭した大闘争を通して、断言することができます。

 

 ──私たちも、この尊い「友情の道」に必ず続いてまいります。

 

名誉会長 日運大聖人は「立正安国論」で「蘭室の友」と仰せです。

 香り高い蘭の花のある部屋にいると、わが身まで香しくなる。それと同じように、自然のうちに良き感化をもたらしてくれる善友が「蘭室の友」です。こうした友情を広げていくことこそ、平和と正義の社会を築いていく力なのです。

 ともあれ、私が信じるのは友情です。今回は、古代ローマの哲学者・キケロの言葉を贈りたい。

 「友情は順境をいっそう輝かせ、逆境を分かち担い合うことで軽減してくれる」(『友情について』中務哲郎訳、岩波文庫

 

 ──キケロは、戦争や権力の横暴に苦しむ人々を救うため、悪と戦った「正義の人」です。それゆえ悪人たちから、ねたまれました。

 

名誉会長 そうです。その中で彼を勇気づけていたのは、真の友人でした。良き友がいたから、前進し続けることができたんです。

 一人で笑うよりも、友と一緒に笑う方が、楽しい。頑張ったことを喜んでくれる友がいれば、その喜びは倍になる。

 悩みを聞いてくれる友がいれば、どれだけ安心できるか。つらいことがあった時に、「大丈夫だよ」と声をかけてくれる友がいるだけで、心が温かくなる。豊かになる。苦悩と戦える。

 友は宝だ。輝く希望の太陽であり、苦難の冬空にきらめく星です。気持ちが安らぐ爽やかな風であり、心が潤う泉です。共に夢に向かって航海する勇気の大船であり、共に世界に雄飛する英知のジェットエンジンなのです。

 

第4回 夢は未来を開く“宝の鍵”  (2012.8.1付 未来ジャーナル)

 

望みは大きすぎるくらいでいい

 

女性初の宇宙飛行士 テレシコワさん

 未来のために闘い

 勇敢に困難に打ち勝つのです。

 それで初めて目的は達せられ

 最も大胆な夢でも、必ず叶うのです

 

 ──未来部は、「鍛えの夏」「飛躍の夏」を迎えました。

 「創価ファミリー月間」であり、家族の皆さんの応援もいただいて、みな、元気に頑張っています。

 

名誉会長 夏は、若い生命がグングンと伸びゆく季節です。みんなの成長が本当に楽しみです。健康・無事故で、張り切って充実の夏を過ごせるよう、私も真剣に題目を送っています。

 夏になると、鮮やかによみがえる光景があります。

 恩師・戸田城聖先生に、故郷の北海道・厚田へ連れていっていただき、一緒に眺めた大海原です。

 当時、私は26歳。厚田の海は、夕日に赤く染まり、雄大でした。

 先生は力強く言われました。

 「この海の向こうには、大陸が広がっている。世界は広い。そこには苦悩にあえぐ民衆がいる。

 君は、世界の広宣流布の道を開くんだ。この私に代わって」

 地球上から「悲惨」の二字をなくし、人々が「生きる喜び」を味わいながら、幸福と平和を勝ち開いていく──この「世界広宣流布」という師匠の夢を、私の夢として受け継いだ語らいです。

 当時(1954年)、まだまだ小さな創価学会で、世界広布は「夢物語」でした。誰も想像できなかったでしょう。

 しかし、私は心に深く誓ったのです。必ず実現してみせる、と。その誓いが私の人生となりました。

        

 ──かつて関西創価学園生との語らいの折、「池田先生の夢は何ですか」という質問に、先生は「私の夢は、戸田先生の夢を実現することです」と答えてくださいました。あの時の感動は忘れません。

 

名誉会長 戸田先生は、偉大な夢に生き抜かれました。先生の夢には、希望が輝いていました。青年と壮大な夢を分かち合いながら、進むべき正しい道を厳然と示してくださったのです。

 「新聞をつくろう。日本中の人に読ませよう」

 「大学をつくろう。世界一の大学にしよう」

 そう夢を語られたのは、先生の事業が一番苦しかった時です。

 この戸田先生の夢を、私は全て実現してきました。ありがたいことに、師匠の大きな夢に向かってまい進する中で、私自身が皆さんの年代のころに描いていた夢も、叶えることができました。

 「日本中に桜の木を植えたい」

 「人々の心に残る小説を書きたい」等々です。

 そして今、私には、新しい夢があります。それは、「未来部のみんなの夢が実現すること」です。

 君たちの描く夢に、私の夢は受け継がれていきます。あなたたちの夢への一歩が、私の夢の一歩です。一緒に夢見て、一緒に実現したい。そのために、祈り、見守り、応援したい。それが私の心です。

       

 ──今の時代は、あらゆる分野に行き詰まり感があり、夢を持ちにくい時代だと言われています。

 

名誉会長 夢を持つことは、みんなの特権です。大人が決めるのでも、時代によって決められるものでもありません。こんな時だからこそ、若い皆さんには明るい夢を広げて、世界を変えていってほしい。

 何でもいい。今は、あいまいでもいい。小さくても構わない。叶うか叶わないか、わからないままでいい。まず心に思い描いてみることだ。そして決めたら、勇気を持って一歩踏み出すことだ。

 踏み出せば、歩むべき道が、どんどんはっきりしてくる。そこを、まっしぐらに前進していくのです。

 思い悩む時もあれば、壁にぶつかる時もある。どちらも成長の証しです。

 今の自分の限界という難所を乗り越えれば、新しい景色が広がっている。だからこそ、もう一歩の努力、あと一歩の粘りが大事なのです。

 戸田先生は、「青年は、望みが大きすぎるくらいで、ちょうどよいのだ」とおっしゃっていた。

 みんなには「祈りとして叶わざるなし」という偉大な妙法と絶対勝利の信心があるのだから!

 祈りは勝利の源泉です。真剣な祈りと、最高の努力が合致する中にこそ、夢は叶い始めるんだ。

       

 ──「厚田の海」のお話を伺いました。海と言えば、50年前、ヨットで単独での太平洋横断という大きな夢に挑戦して成功した青年がいます。

 

名誉会長 堀江謙一さんだね。よく存じ上げています。その後も数々の冒険航海を成功させました。私も敬愛する友人です。

 2004年10月から翌年6月、単独で「無寄港世界1周」を成し遂げた時も、航海中、最大の難所である南米・南端のホーン岬に挑む前などに、メッセージを送らせていただきました。

 この冒険王は、皆さんに大きな期待を寄せてくださっています。

 「若い人は、夢を目標に変え、それに向かって、どんどん挑戦してほしい」「考えてばかりで行動しないと、何も変わりません。失敗してもいいじゃないですか。失敗こそが自分の本当の財産になるんですから」と──。

 どんな夢でも、挑戦を開始すれば、そこから冒険が始まります。

 現代経済学の最先端をリードしてこられたアメリカのサロー博士に、私は尋ねたことがあります。

 「人類にとって、『本当の意味での富』とは何でしょうか」

 博士は、即答されました。

 「冒険心、そして探求心だと思います」

 サロー博士ご自身も、7000m級のヒマラヤの山々に登り、サウジアラビアの広大な大地を自動車で走破する冒険家です。

 真の富とは「お金」よりも「冒険心」「探求心」である──。

 私も大賛成です。青年の心に「冒険心」「探求心」が燃えている限り、人類は新たなフロンティア(未開拓の分野)を切り開いていくことができます。

 

 ──「未知なる世界」は、まだまだあります。この前、17番目の素粒子ヒッグス粒子)が、やっと見つかったばかりです。

 

名誉会長 そうだね。学問の世界でも、遠大な夢に向かい、日々、勇敢な冒険が続けられています。

 特に人間の内なる「生命」の探求は、いよいよ、これからです。仏法という「生命尊厳」の大哲学を、若くして探求し始めた皆さんは、偉大な開拓者なのです。

 皆さん一人一人の生命に、どれほど素晴らしい力が秘められているか。想像もできないほどです。それは、夢に挑戦して初めて見えてきます。こんな、わくわくする大冒険はありません。

       

 ──「理想と現実のギャップに悩み、自分の無力さを感じます」というメンバーもいます。

 

名誉会長 素晴らしいことじゃないか。それだけ大きな夢を描いているということなのだから。

 夢と現実にギャップがあるのは当然です。すぐに叶えられるような夢では、つまらないよ。

 夢を実現するためには、“これをやり遂げてみせる!”という、強い一念を定めることです。

 「みんなの生活を便利にしたい」と強く思ったからこそ、劣等生と言われたエジソンは発明王になれた。

 「鳥のように空を飛びたい」という夢を抱き続けたからこそ、ライト兄弟は失敗の連続を超えて、動力飛行機を作ることができた。

 皆、苦難の中で、大きな夢を持ち続け、夢に向かって努力を重ねたんです。周りから、「無理だ」と言われようが、バカにされようが、夢を手ばなさなかった。

 インドの非暴力の大英雄マハトマ・ガンジーだって、アメリ公民権運動の指導者・キング博士だって、私の親友で人種差別政策と戦った南アフリカマンデラ元大統領だって、誰も20世紀中に実現できると思わなかった自由や平等という夢を、不屈の信念で勝ち取ったんです。

 私と妻の大切な友人であるワレンチナ・テレシコワさんも、積極果敢に夢への努力を貫いて、人類初の女性宇宙飛行士として歴史を飾りました。世界の平和のために、今も、大いに活躍されています。

 このテレシコワさんの言葉を、皆さんに贈りたい。

 「未来のために闘い、勇敢に困難に打《うち》かたなければならないのです。それではじめて目的は達せられ、もっとも大胆な夢でも、かならず、かなえられるのです」(『はてしない宇宙へ』岡田よし子訳、プログレス出版所刊)

 

 ──「将来、安定した職業に就くことが夢です」という人が多いという調査もありました。

 なりたい職業として、医師や看護師、弁護士、公務員、サラリーマン、家業を継ぐなどが挙げられています。スポーツ選手や歌手、最近はお笑い芸人も人気です。

 

名誉会長 みんな、いいね。全て、大切な夢です。あこがれの職業に就いて、その道でトップを目指す。それは素晴らしいことです。

 その上で、もう一歩深めて考えてほしいんだ。「何のために」自分の夢を目指すのだろうか、と。

 自分のためばかりではなく、人のためにもなる夢。共に、みんなと喜び合える夢。人類の幸福と平和を創り上げていく夢──これが広宣流布です。

 みんなの父や母、祖父や祖母の方々は、私と一緒に、広宣流布という最極の夢のために、自分らしく、それぞれの使命の地域で頑張ってくださっている。“自分さえ良ければ”という時代にあって、人のため、社会のために悩み、汗を流し、労苦を惜しまない──こんな尊い人生はありません。

 時には、忙しすぎて割に合わないように見えたり、地道すぎてさえないように見えたりすることもあるかもしれない。

 しかし、仏の眼から見れば、一番正しく、一番尊貴な人生なんです。

       

 ──私たちは、池田先生と共に、世界の同志と共に、すでに大きな夢に生きているのですね!

 

名誉会長 日々の勉学の努力は着実に粘り強く、そして心には宇宙大のロマンを光らせ、誇り高い青春を朗らかに進んでください。

 日蓮大聖人は、若き弟子の南条時光に「願くは我が弟子等・大願ををこせ」(御書1561ページ)と叫ばれました。大願に生きることは、「露を大海に入れ、塵を大地に埋めるようなものである」と教えられています。

 露のように儚くとも、大海に入れば、自分自身が大海と一体になって、大いなる命を得る。

 塵のように小さくとも、大地と一体になれば、皆から頼られ、万物を生み出せる力を得る。

 若くして妙法を持《たも》った皆さん自身が人類の希望であり、夢です。その皆さんが、「世界を平和にしよう」という夢に生き抜けば、必ず、世界は平和へ近づくのです。

 夢があれば、どこまでも成長できる。夢は、自らの可能性を最大限に発揮し、未来を開く“宝の鍵”なのです。

 

【第5回】 学び続ける人が勝者  2012.9.1

 

――いよいよ、新学期がスタートしました。受験生の皆さんも、大切な “秋の陣” に入ります。

 

池田名誉会長 みんなが希望の道、努力の道、勝利の道を進めるように、私はますます真剣に祈っていきます。全国、全世界の創価家族も受験生の皆さんの味方です。

思えば、私が夜学に通い始めたのは、17歳の9月でした。第2次世界大戦が終わった翌月です。大空襲の焼け野原が一面に広がる中で、「ともかく今は勉強だ。何が何でも学ぶのだ」と、向学の心を奮い立たせたことを覚えています。

今も私は、勉強を続けています。世界の識者との対談も、学び語り、語り学ぶ連続です。若い皆さんからも、新しいことをたくさん教えてもらいたいと思っています。

 

──思う存分、勉強できること、それ自体が幸福なのですね。

 

名誉会長 そう。勉強は権利であり、喜びです。「学ぶ」ということは、何より楽しいものなんです。

それを若者から奪い取るのが、残酷な戦争です。その苦しさや悔しさを、次の世代には絶対に味わわせてはならないと心に決め、私は平和のために戦ってきました。

だから、私が青春時代から愛読してきた、ドイツの大文豪ゲーテの言葉を、みんなに贈りたい。

「学問のなかには、なんというすばらしい世界がひらけていることだろう」(ビーダーマン編 『ゲーテ対話録第二巻』 菊池栄一訳、白水社刊)

学問の探究に思い切って飛び込めば、発見がある。その喜びでゲーテは生命を躍動させました。

詩人、小説家、劇作家であり、そして、自然科学者としても、政治家としても大活躍したゲーテは一生涯、学び続けた人でした。

今、このゲーテを巡って私は、ワイマール・ゲーテ協会顧問のオステン博士と対談を進めています。(総合月刊誌「潮」で連載)

その冒頭、オステン博士は、ゲーテの信条について語られました。

それは「力を入れて学んだことは、誰も奪い去ることができない、永遠である」との確信です。

人は学ぶために、生まれてきました。「生きること」は「学ぶこと」といってよい。

学んだ内容は、たとえ忘れたとしても、学ぶ心は、わが生命を永遠に飾ってくれるのです。

 

──現実の学校生活の中では、「頑張ろうとは思うのですが、なかなか勉強のやる気が出なくて困つています」という声があります。

 

名誉会長 みんな、そうなんだよ(笑い)。「頑張ろう」と思っていることが偉いじゃないか。

私が対談したトインビー博士ほどの世界的な大歴史学者でも、「やる気」になるのを待っていたら、いつまでたっても研究は進まない。だから、気分が乗っても乗らなくても、毎日、決まった時間に机に向かって勉強を始めることを、ご自分に課しておられました。

「学ぶ習慣」ができれば、やる気が自然に湧く。勉強が面白くなり、努力の大切さが分かる。そこまで、あきらめないで、頑張ってほしいんです。

 

──「なぜ勉強するのか」「何のために学ぶのか」を自らに問いかけることが大事ですね。

 

池田先生は、創価大学に──

「英知を磨くは何のため 君よ それを忘るるな」と指針を贈ってくださっています。

名誉会長 「何のために学ぶのか」という問いを、生涯、持ち続けてほしい。

「自分のため」だけに勉強していると、いつか行き詰まる。「人のため」「社会のため」「世界のため」という大きな志が、勉強を楽しくする。偉大な自分をつくりあげます。

1995年、私は、釈尊が生誕した国ネパールを訪問しました。

トリブバン大学での講演などを終え、ネパールSGI(創価学会インタナショナル)の総会に出席すると、深紅の民族衣装に金色の髪飾りをまとった、5人の可憐な小女たちが出迎えてくれました。

少女たちは、その後、ご両親の励ましを胸に、「人材の流れをつくるために、まず自分が人材に」「民衆に尽くす指導者に成長を」と誓い、失敗してもあきらめずに両親と自分を信じて勉強に励みました。

17年たった今、全員が世界の大舞台で学究の道、社会貢献の道を進んでいます。ネパールの父母や同志の誇りとなり、希望となっている。そして、彼女たちに、未来部の友が続いています。

勉強は、すればするほど、夢が大きくなっていく。力がついて、人の役に立つことができる。人を笑顔にすることができる。人に喜びを与えることができる。

それは、結局、自分の周りに、素晴らしい世界を広げてくれるのです。

 

──私たち未来部担当者も「中学・高校の時、もっと、しっかり勉強しておけばよかった」と反省することしきりです。

 

名誉会長 いや、クヨクヨ振り返る必要はありません。学ぶことは、「今から」「ここから」直ちに始めることができるからです。

ゲーテの時代とも重なる女性の作家マルヴィーダ・フォン・マイゼンブークは、60歳の時に、こんな言葉を残しています。

「私は学びます、学びます」「更に学ぶことができるためというこの一点でだけ私は今一度若くなりたいと思います」(シュライヘア著

『マルヴィーダ・フォン・マイゼンブーク』 片山敏彦訳、みすず書房刊)

学歴イコール知識・学力ではない。まして人間の能力ではない。学び続ける心が、人間の真の実力です。わが創価大学の通信教育部では、この春、85歳と83歳の2人の女性の方も晴れ晴れと卒業を勝ち取られました。学び抜き、学び切る姿は、人間として神々しい光を放つものです。

 

──でも、若い時は、勉強できる環境にあるのに、つい後回しにしてしまいます。

 

名誉会長 まあ、後回しにするのは、それなりに理由がある(笑い)。内容が難しすぎて理解するのが大変だからとか、そろそろ机に向かおうと思った矢先に、お母さんやお父さんに「勉強しなさい」と言われて嫌になるとか(笑い)、部活が忙しいとか……。

でも、自分の好きなことだったらどうだろう。それなら、すぐに始められて、いくらでもやれる、何時間でも没頭できるという人も多いのではないかな。

「どうやったら、サッカーが上達できるか」「あの人みたいに上手に楽器を演奏するには、どうすればいいんだろう」「秋の流行の服は」などと関心を持てば、本を読んで研究したり、試したり、誰かに質問したりするでしょう。それは、楽しいし、面白いことです。勉強だって、自分なりに工夫すれば、楽しく面白くできるはずです。

 

――実際、社会のさまざまな分野で活躍している人は、例外なく真剣に勉強を重ねていますね。

 

名誉会長 その通りです。一流のスポーツ選手も、体を鍛えるだけでなく、体のしくみや栄養のことを積極的に学んでいる人が少なくない。演技の質を磨いたり、参考にしたりするために、膨大な読書をしている俳優や芸人の方を、私もよく知っています。

皆さんのお母さんの、いつどこで買い物をすればいいか、という分析力には、どんな経済学者もかなわないでしょう。生きた経済の動きを学んでいます。

すべて、立派な学問です。

だから、今の学校での勉強は、将来、それぞれの道で、好きなことを好きなだけ学ぶための「土台」と考えてはどうかな。人生、後になって、思わぬことが役に立つ。まず何かを始めてみることだ。何か努力を開始することだ。

勉強ができるできないといっても、やるかやらないかだけなんだ。

勉強すると息が詰まる思いがするかもしれないが、実は小さな自分を打ち破り、広々とした世界へと解放してくれる。人生を明るくしてくれる。「学は光」です。

何があってもへこたれず、強く朗らかに学んだ人が、勝ちです。

 

――「目の前の問題集に取り組むことが、将来の、何の役に立つのか分からない」という質問も寄せられています。

 

名誉会長 建物を建てる時、土台だけを見ても、上にどのような建物が建つのかは分からないものだ。また土台は、その上に建物が建てば、見えなくなるものです。

それでも、建物を何十年、何百年にわたって支えていくのは、その見えない土台です。

勉強も同じでしょう。君の目の前にある課題の一つ一つが、強固な土台になっていくのです。

そもそも、勉強に挑むこと自体が、偉大な人格を磨きゆく訓練の一つです。考える力を養い、頭脳を鍛え、強い心を育んでいく。今、みんなは、その

“土台作り” をしているんだよ。地道で繰り返しの作業はつまらないかもしれない。でも、地道に繰り返すからこそ、その土台は強い。崩れない。だから、毎日、自分らしく1㍉でも2㍉でも、築いていってほしい。

 

──「学校の成績が思うように上がらなくて苦しい」と悩んでいるメンバーもいます。

 

名誉会長 成績が上がれば、自分もうれしいし、お父さん、お母さんも喜んでくれる。良いに越したことはない。だけど、それが君の真価を決めるものではない。人と比べる必要もない。いわんや、自信をなくす必要もない。

だから、成績は、上手に自分の努力目標にしてほしい。少しずつ、だんだんと着実に向上していく。そういう、たくましい勉学の歴史を残してもらえたら、うれしいね。

たとえ、不本意な結果であっても、努力を重ねた分だけ、力は必ずついてくる。成長している。

長い人生を大きく左右していくのは、目先の成績よりも、「学び続けようとする姿勢」です。どんな状況にあっても「さあ、勉強するぞ!」という勢いのある人は、そこから人生を開いていける。

だから、勉強に「もう間に合わない」も「手遅れだ」も絶対にない。「自分はだめだ」と思わない限り、たとえ今がビリでも大丈夫。そこから上がっていくのは、痛快じゃないか。一番もったいないのは、成績が上がらないからといって、勉強をやめてしまうことだ。

「栄光」とは、「忍耐」です。自分が苦労し、苦しむことです。勉強も、一日では結果は出ない。大事なのは、「粘り強さ」です。ですから、受験生の皆さんには、「受験は、知性と忍耐の修行である」と贈りたい。

 

──池田先生は、戸田先生のもとで「一対一」の個人教授を受けられました。

 

名誉会長 真剣勝負でした。戸田先生の事業が困難を極める中での薫陶でした。当時、日記に次のような内容を書いています。

「朝の講義、法律学政治学、経済学、化学、漢文と進む。

先生の、身体をいとわず、弟子を育成してくださる恩──私は、どのようにご恩返しすればよいのか。今だ、力、力、力を蓄える時は。あらゆる力を、将来の準備として蓄えていこう」

戸田先生は万般の学問に通じておられました。しかも、生きた学問として教えてくださいました。

「大作、今、何の本を読んでいるか」「その本の内容を言ってみよ」と、いつでも、どこでも聞かれた。どう読んだのか、何を学んだのか、先生の追及は実に鋭い。冷や汗をかきながら、しどろもどろで答えたこともありました。

ある講義が修了した時、戸田先生は、机の上の一輪の花を取り、私の胸に挿してくださいました。

「この講義を修了した優等生への勲章だ。金時計でも授けたいが、何もない。すまんな……」

それは、師匠から授かった、世界一、誇り高い勲章です。この恩師の授業があったからこそ、世界の識者と文明を結ぶ対話も残すことができたのだと、感謝の思いは尽きません。

創価の師弟の勝利は、学び続けてきた勝利です。

ですから、私は、毎日、強盛に祈っています。

わが未来部の友が、さえわたる英知と正義の大指導者に育つように! どの分野に進もうとも、大人材として自由自在に力を発揮して活躍できるように!

そして、一人ももれなく健康で、家族も大福運に包まれ、素晴らしい勝利の人生であるように! と。

みんな、新学期も、元気に学び、前進しよう!

 

【第6回】 朗らかに! 粘り強く!  2012.10.1

 

ベストを尽くせ! それが勝利

 

ドイツの考古学者 シュリーマン

才能とは 何よりも エネルギーと忍耐力のことである

 

 ──「挑戦の秋」です。全世界の未来部の友から一生懸命、努力する様子が寄せられています。クラブ活動や、さまざまなコンクールなどで活躍するメンバーのニュースも、数多く届いています。

 

名誉会長 うれしいね!

 お手紙も、たくさんいただいています。担当者の方からも、毎日、報告が届きます。この「未来ジャーナル」でも、「聖教新聞」でも、スポーツや音楽、美術、語学など、あらゆる分野で奮闘するメンバーが紹介されているね。

 努力を重ね、栄冠を勝ち取ったみんなの姿は、お父さん、お母さんや家族の誇りです。地域の学会家族も喜んでくれます。

 勝利は、皆を明るく元気にし、希望と向上の力を広げます。

 でも、道は無限です。もっと、もっと上達できる。さらに向上心を燃やして力をつけ、前へ前へ進んでいってください。

 

 ──残念ながら、頑張ったけれど、思うような成果が出なかったり、惜しくも目標に届かなかったりと、悔しい思いをしている友もいますが……。

 

名誉会長 勝敗は時の運だから一喜一憂する必要はありません。思いっきりベストを尽くしたら、それが勝利です。

 人間は誰だって、勝ったり負けたりして強くなる。鍛えられていくんです。だから、くよくよしてはいけない。「心」が負けなければいいんです。

 真の勝利者とは、勝っても負けても、にっこりと、いっそう強い根性を持って、次の勝利に向かっていく人です。

      

 ──メンバーから、クラブ活動では、「なかなかうまくなれない」「レギュラーになれない」という悩みを聞きます。

 

名誉会長 さあ、そこだね。

 「入門」という言葉が、あるよね。どんな分野であれ、基礎から始まって、奥は深い。その門に入ったからには、先生やコーチ、また先輩の教えを受け、基本の稽古や練習を重ねて、一つ一つ学んでいく以外にありません。

 それは、厳しいし、苦しい。地道だし、時間だってかかります。

 だから、始めた時の気持ちを忘れないで、へこたれず、あきらめず、じっくりと力をつけるんです。

 きのうの自分より、きょうの自分が、少しでも成長していれば、勝ちです。真のライバルは「きのうの自分」だよ。

 一生懸命、頑張っているのに、なかなか結果が出ない。それでも歯を食いしばって努力をする。その一番つらく、苦労している時が、実は一番、力がついている時なんだ。

 そうやって鍛えたことは、クラブ活動にとどまらず、一生涯の心の宝になります。

 たとえレギュラーになれなくとも、努力は無駄にならない。未来部時代、補欠として陰で頑張り抜いたことが力となって、社会の晴れ舞台で大活躍している友も、私はたくさん知っています。

      

 ──なかなか上達しないと、ついつい人と比べて、「自分には才能がないのでは」と、弱気になってしまうことがあります。

 

名誉会長 そんなわびしい気持ちに引きずられてはいけない。

 カラッと自分で自分を励ましながら、勝つための努力を、朗らかに、粘り強く、貫き通すんです。

 本当の才能とは、何だろうか。ドイツの考古学者・シュリーマンの言葉を思い出してほしいんだ。

 「才能とは何よりもエネルギーと忍耐力のことである」(ディヴィッド・A・トレイル著『シュリーマン──黄金と偽りのトロイ』周藤芳幸ほか訳、青木書店刊)

 全くその通りです。だから、誰にも才能はあるんだ。

 

 ──シュリーマンは、「トロイ遺跡の発掘」という夢を実現した人物ですね。確か、今年で生誕190年になります。東京・八王子の地を、訪れたこともあります。

 

名誉会長 そうだったね。

 自伝(『古代への情熱』岩波文庫)等によると、シュリーマンは8歳の時に、お父さんから一冊の本をもらった。そこに描かれた古代のトロイ戦争の絵を見て夢を広げ、その遺跡を「いつか僕が見つけてみせる」と決意したのです。

 ここから、長く険しい戦いが始まりました。

 幼くして最愛のお母さんを亡くし、お父さんが職を失ったので、高校へ行かずに働かなければならなかった。時間をこじあけて勉強しても、すぐ忘れてしまうほど、体は疲れはてていた。だが、夢を実現するには、語学が必要だった。彼は独自の学び方で、英語、ギリシャ語など十数カ国語を習得した。

 また、必死で働いて事業を成功させ、資金を蓄えていきました。実際に発掘に取りかかったのは、40歳を過ぎてからです。

 そして、それまで信じられていなかった「トロイ文明」や「ミケーネ文明」が実在したことを、見事に証明していったのです。

 まさに、「才能とは何よりもエネルギーと忍耐力のことである」ことを示した勝利の劇であったと言ってよいでしょう。

      

 ──シュリーマンは、自分の「やりたい夢」のために、語学や仕事など、「やらねばならないこと」も、我慢強くやり通したんですね。

 

名誉会長 だから勝った。

 人は「やらねばならないこと」をやり切れば、必ず「やりたいこと」の力に変えていける。

 皆さんは今、「勉学第一」ですから、「やらねばならないこと」は勉強でしょう。

 クラブが忙しくて、疲れてしまう場合もあるかもしれない。でも、将来の大きな夢を実現するために、今は積極果敢に、しっかり学んでおいた方が得だ。

 なんとか聡明に工夫して、クラブで鍛えた力を、勉強でも大いに発揮してもらいたいんだ。

 

 ──勉強とクラブ活動の両立に悩む未来部員から、たくさん質問が届いています。

 

名誉会長 確かに両立は大変だ。でも、以前、一人の女子学生から質問を受けた時、私は、こう答えました。

 「『二兎(二匹のウサギ)を追う者は一兎をも得ず』と言われる。しかし、力があれば、百兎でも千兎でも追ってごらん」

 質問してくれた乙女の顔が、ぱっと明るくなりました。

 みんなは若いんだから、それぐらい大きな心意気を持って、伸び伸びと自分の可能性を引き出してもらいたい。

 あれこれ迷っている前に、まず「やってみる」ことです。「どちらも、やり切ってみせる」と一念を定めて、祈り、知恵を湧き立たせて挑戦することです。そうすれば、試行錯誤し、悪戦苦闘しながらも、必ず道は開けてくる。

 私と対談したアメリカの歴史学者で、人権の闘士のハーディング博士は述べていました。──スポーツ選手は真剣にトレーニングを続けることによって、自分でも想像できなかったような能力を開花させることができる。同じように、私たちには無限の可能性がある。それなのに、自分で自分に限界を作ってしまってはもったいない、と──。

 みんなの可能性は宇宙大です。ましてや、若くして妙法を持っている皆さんです。

 戸田先生も、青年に、「まず肚《はら》を決めよ! 決まったら勇ましく進め」と、いつも言われていた。

 目の前の課題に、100%の自分で、思い切ってぶつかろう。

 「全てに100%で挑む」──これが、青春の勝利の秘訣です。

 もちろん試験前は、勉強に集中する。試合などの前は、練習には力を注ぐ。そうしためりはりを賢く作っていくことも大事でしょう。

 

 ──クラブ活動が忙しく、学会の会合になかなか参加できないということもあるようです。

 

名誉会長 「心こそ大切」です。少しでも会合に出ようという心が尊い。その人は、太陽の方向を向いています。必ず、明るく正しい成長の軌道を上昇できます。

 今回は参加できなくても、今の自分の目標や頑張っていることを、担当のお兄さんやお姉さん、また、未来部の仲間たちにも伝えてほしい。

 学会は「心」で結ばれた世界です。「題目」で結ばれた世界です。同志は、みんなの成長を祈り、応援してくれる“応援団”です。みんなの頑張りが、喜びとなって広がり、それが大きな力となって、みんなのところに返ってくる。同志との絆が、いざという時に、みんなを支えてくれます。

 時間がなくても、心はつながっていける。だから、都合がついた時は、胸を張って会合に参加してほしい。学会の会合は、行く前はたとえ気が乗らなくても、帰りは来た時より元気になれる!

 

 ──「部内の仲間と仲良くするには?」「クラブの雰囲気が悪くて、いやになる」という、人間関係の悩みも、多数、聞いています。

 

名誉会長 クラブもまた、一つの「社会」です。だから、目標や目的を共有して切磋琢磨できるライバルもいれば、どうしても気が合わない人もいる。競争や、時には、ヤキモチなどもあるかもしれない。

 今から50年以上も前、私は戸田先生と共に、宮城県仙台市青葉城址に登りました。戸田先生は、その堅固な石垣を見ながら、「学会は人材をもって城を築くのだ」と教えてくださいました。

 石垣の石は、二つとして同じものはありません。大きさも形も、バラバラです。しかし、それぞれの石の特徴を生かし、的確に組み上げてこそ、何百年も崩れない堅固な石垣ができます。

 クラブという団体も同じです。一人一人が、特徴や個性を生かすことで、思ってもみないチーム力が発揮できる。

 「団体」の中でこそ、「個性」は生きるのです。

 その見事なるチーム力を発揮するには、「仲間を尊敬する」ことです。お互いが信頼し、尊敬し合えば、自ずと団結は生まれます。

 偉大な仏法を持った皆さんは、友を励まし、友の長所を見つけていく太陽の存在になってほしい。

 雰囲気が暗ければ、自分が太陽になって、皆を明るく照らしてほしい。

 

 ──部の中心になったメンバーからは、「皆をまとめていくには、どうすればいいか」「部長として、どうあるべきか」という質問が寄せられています。

 

名誉会長 偉いね。そう悩むことが、すでに立派なリーダーです。

 皆をグイグイと引っ張るリーダーもいれば、陰で皆を支える「縁の下の力持ち」のリーダーもいる。青年らしく、自分らしくで、いいんです。全部が勉強になります。

 歴史上の信念のリーダーや、私が対談してきた世界の指導者に共通していることがあります。それは「熱意」です。結局は、「熱意」のある人が信頼される。

 「勝ちたい」「皆と成長したい」「部を団結させたい」「皆に喜んでもらいたい」という熱い思いが根底にあれば、さまざまな知恵が生まれる。

 その祈りを込めた題目は、必ず全体に通じていきます。

 私も、戸田先生から、さまざまなリーダー論を教わった。確信を持つこと、誠実を尽くすこと、心を配ること、力を磨くこと──。それを支えるのは「熱意」です。その信念です。祈りです。

 ともあれ、苦労した人が偉大になる。愛する未来部の皆さんが、良き友人と朗らかに粘り強く成長し、世界の大指導者に羽ばたく日を、心から楽しみにしています。

 

【第7回】 誇り高く 向上の道を!  2012.11.1

 

「私はやり切った」と言える人に

 

オーストリアの詩人 リルケ

あなたを、これまでのあなたの最善の時以上のものにするものは、すべて正しいものです

 

 ──本年も残り2カ月。特に中学・高校の3年生にとって大切な時期です。皆、新たな進路に向け、勉強と努力の日々を送っています。

 

名誉会長 未来部のみんなは、誰もが社会の柱と育ちゆく大人材です。学会の将来を担うリーダーです。

 創価家族が、皆さんの活躍する晴れ姿を楽しみに待っています。

 受験生は、風邪などひかないように、元気に頑張ってください。全員の健康と勝利を、私も毎日、真剣に祈っているからね。

 

 ──ありがとうございます。メンバーと語り合う中で、進路に関する悩みを多く聞きます。将来に対し、漠然とした不安もあります。また、「どの学校に行ったらいいのか分からない」「将来の夢が見えず、進路もはっきり見えてこない」というメンバーもいます。

 

名誉会長 そうだろうね。

 人生は、難しい選択の連続です。とりわけ受験は、未来部のみんなが初めて迎える、大きな岐路とも言えるでしょう。分からないことや不安があって、当然です。

 だから、自分一人で悩みを抱えこまないで、親や学校の先生、信頼する先輩方に率直に相談しながら、大きな心で最高の進路を選び取っていただきたい。

 「進路」とは「進む路」です。恐れずに前へ前へ進むためにこそある。大事なのは、一歩踏み出す勇気を持つことです。

 大空には、鳥の進む道がある。

 大海には、魚の進む道がある。太陽だって、曇っても、雨が降っても、厳然と軌道を進んでいく。

 人にも人の軌道があります。幸福へと向かう軌道がある。それは「上へ上へ」と向かう軌道です。

 何があっても、強く賢く、自分で自分を向上させていく道です。

 

 ──明年には新総合教育棟が完成し、発展を続ける創価大学創価女子短期大学、アメリ創価大学、東西の創価学園へも、多くのメンバーが挑戦しています。

 

名誉会長 創立者として、これほどうれしいことはありません。

できれば、受験してくれる全員を合格にしてさしあげたい。

 でも、そういうわけにもいかないし……。

 ただ私にとっては、志願してくれた人はみんな、創大生・短大生であり、学園生です。その人が必ず幸福になるよう、立派になるよう、祈りに祈っていきます。絶対に忘れません。

 これが、創立者の心です。

 もちろん、どの学校を志望しても自由です。私の大切な宝である、未来部の君たちが目指すのだから、それぞれが決めた進路で伸び伸びと断じて勝利できるよう、最大に応援したいのです。

 

 ──どういう進路をとっても、向上していけばいいんですね。

 

名誉会長 その通りです。

 この「向上の人生」の模範を示されたのが、創価の父・牧口常三郎先生です。

 牧口先生は、みんなと同じ年代から働かねばなりませんでした。しかし、わずかな時間を見つけて本を開いて学びました。そして独創的な地理学者、偉大な教育者となられました。

 軍国主義と戦い、投獄されても、獄死されるまで学び続け、「向上の道」を進み抜かれたのです。

 このあまりにも崇高な探究者が、わが創価学会創立者です。

 きょうは、牧口先生と同じ時代を生きたオーストリアの詩人リルケの言葉を、皆さんに贈りたい。

 「人生は正しいのです、どんな場合にも」「あなたを、これまでのあなたの最善の時以上のものにするものは、すべて正しいものです」(中村ちよ訳「若き詩人への手紙」、『リルケ全集 第6巻』所収、彌生書房刊)

 ちょっと難しいけど、自分の「最善」「ベスト」を超えていくように励ます、含蓄深い言葉です。

 自分を向上させていく道が、正しい道です。

 受験も就職も、たとえ自分の思うような道に進めなくても、その道で「自分を向上させていこう!」と決意できれば、それは正しい軌道です。絶対に大勝利の人生を歩むことができる。

 「向上する心」さえあれば、進路に「失敗」はない。ゆえに、何も恐れることはありません。

 

 ──『リルケ詩集』『ドゥイノの悲歌《ひか》』『マルテの手記』など、リルケの作品は、世界で時代を超えて共感を呼び、愛読されています。

 

名誉会長 リルケは若き日、自分で進路を選べず、悩みました。元軍人のお父さんの意向で軍人を目指す学校に入れられたのです。そこになじめず、いじめを受けた。やがて退学。今度は商業学校に入学しますが、結局そこも退学せざるを得なかった。

 本人も苦しんだだろうし、お父さんもがっかりしたようだ。

 しかし、勉強をやり直し、その後、大学に進んだころから、ペンで身を立てる決心を固め、詩や散文を書いて書いて書きまくっていったのです。

 のちに、リルケは、当時のことを、自分で選んだ道で成功できるかどうかの自己点検の時期であったと振り返っています。

 そして、文豪トルストイや彫刻家のロダンなどと出会いを重ねながら、努力を続けました。悩みに負けず、自分らしく創造の戦いを貫き通したのです。

 

 ──そんな生き方が結晶しているからこそ、世界の青年の心に響く詩を残せたのですね。

 

名誉会長 青春の魂は不屈です。転んでも、へこたれないで、また立ち上がればいいんです。

 仏法では「煩悩即菩提」と説きます。信心根本でいけば、悩んだ分、苦労した分、すべてが「心の財《たから》」に変わります。

 今、具体的な将来像が見えなくても、あせる必要はありません。

 現代は、ただでさえ、情報があふれている時代です。将来の自分を思い描こうとする時に、悲観的な情報にふりまわされ、迷ってしまうこともあるかもしれない。

 周囲の友人と成績を比べて落ち込んでしまうこともあるでしょう。受験シーズンになれば、なおさらです。

 しかし、リルケがそうであったように、目の前の課題に全力で取り組むうち、希望を持って進める「わが道」は、必ず見つかります。

 

 ──「受験の日は刻々と近づいてくるのに、どうしても苦手科目が克服できず不安だ」「成績がなかなか上がらず自信がない」というメンバーも多いようです。

 

名誉会長 そういう“勝負”の時に逃げない。「当たって砕けろ」と思い切って立ち向かったことが「自信」になる。それは、生涯にわたって自分を支えてくれます。

 私も対談した、あの大秀才のトインビー博士も、パブリックスクール(名門進学校)へ入るための試験が不安でしかたなかった。その時、ご両親から“ベストを尽くせばいいんだよ。志望校に入れなくたって、この世が終わるわけじゃない”と励まされ、ほっとし、実力を出し切れたといいます。

 「自分は自分なりに、できることをやり切った」と言える戦いをすれば、その人が勝利者です。

 日蓮大聖人は、「法華経を信ずる人は冬のごとし冬は必ず春となる」(御書1253ページ)と仰せになられました。

 厳しい冬を乗り越えてこそ、春に美しい花が咲き薫る。

 どれだけ寒さが厳しくても、木々は一つも文句も言わず、じっと耐える。そして少しずつ着実に、養分を吸収している。

 万事、大変な時こそ、本物の強さが身につくのです。

 これから季節も、ぐっと寒くなってきます。受験生の皆さんが、忍耐と負けじ魂で冬を乗り越え、勝利の春を迎えられるよう、皆で応援していこうよ。

 未来部の一人一人が、どれほど偉大な大樹に伸びゆくか。これが、私の一番の希望です。わが21世紀使命会の皆さん、どうか、温かく見守り、こまやかに励ましていただくよう、お願いします。

 

 ──はい! 一丸となって、受験生を後押ししていきます。

 ところで最近は、「本当は大学に行きたいけれど、家庭の事情で、進学を断念せざるをえない」という声が寄せられています。厳しい不況の中、保護者の方が経済的に大きな困難に直面している場合も少なくありません。

 

名誉会長 ご家族の皆様のご苦労は、よく分かっています。信心根本に乗り越えていけるよう、一生懸命に題目を送っています。

 未来部の皆さんにお願いしたいことは、どんなに家庭が厳しい状況であっても、絶対に卑屈になったり、感傷的になったりしてはいけないということです。

 何もかも恵まれた中から、強い人間は育ちません。逆境の中から、ダイヤモンドのように光る偉大な力を、朗らかに胸を張って、磨き上げていただきたいのです。

 牧口先生を師と仰いだ私の恩師・戸田城聖先生も、高等小学校を首席で卒業したが、家業を支えるために進学できなかった。それでも屈しないで、商店に勤めながら向学心を燃やし、小学校の教員になられました。

 私の大切な友人である韓国の趙《チョ》文富《ムンブ》博士は、名門の国立済州《チェジュ》大学の総長を務められました。この博士も、経済的な理由から中学進学を断念せざるをえなかった。だから、苦学の末に教育者になってからは、給料をはたいて、後輩の援助を続けてこられました。つらく悔しい思いが、博士の学問の道を開き、人格を輝かせたのです。

 人生は自分次第です。環境に決められるのではない。自分が環境をつくるのです。自分が道を切り開くのです。その魂を燃やすために、信心があるのです。

 

 ──以前、創価大学生の体験を聞きました。彼は小・中学生のころ、いじめに遭っていました。ある日、池田先生のスピーチを聴いて決意し、いじめを克服しました。創価大学を目指しましたが、お父さんを亡くし、経済的にも厳しくなり、進学はあきらめかけました。しかし、「命の恩人である池田先生の大学に行きたい」と、必死に祈る中で、思いがけないところから学資を援助してくれる人が現れたのです。さらに創価大学は、さまざまな奨学金などの制度も大変に整備されています。

 今、彼は、創価大学の大学院博士課程で大いに学びながら、後輩の勉学もサポートしています。

 

名誉会長 うれしいね。不可能を可能にしてくれたんだね。

 「学は光」です。「学びの道」は明るい。その道は必ず開けていく。ゆえに、何があっても、「向学の心」を失わないことだ。前進し続けることだ。そうして進んだ道が、君にしかない、あなたにしかない「使命の道」「充実の道」「勝利の道」になっていきます。

 その力を、あなたは持っている。

 その可能性を、君は持っている。

 生命に厳然と具わる無限の力を引き出していく妙法を朗々と唱えながら、ともかく前へ前へと、誇り高く向上の道を進んでいこう!

 

【第8回】 秀才とは親孝行の人なり 2012.12.1

 

――1年の締めくくりの12月、未来部のメンバーは、各自の目標に向けて元気に前進しています。

 

池田名誉会長 この1年の全員の奮闘を、私は心から讃えたい。

とともに、何かと気ぜわしい年末です。交通事故や火災に注意をお願いします。

受験生のメンバーをはじめ、みんなの健康・無事故と大勝利を、毎日、祈っています。

日本では12月を「師走」と呼んでいます。私の恩師・戸田城聖先生は、ユーモアをまじえて、皆に語られていました。

「師走といって、文字通り、“師も走って” いるのだよ。皆さんも多忙だと思うが、私も走っている。広宣流布のために、ひとつ頑張ってくれ」

皆さんのお父さん、お母さんは、地域に幸せを広げるため、世界を平和にするために、一生懸命、走り回ってくださっている。誰よりも尊い “仏の使い”

であり、誰よりも立派な “国の宝” です。どんなに感謝してもしきれません。

皆さんは、この偉大なる父母(ちちはは)を大切にし、親孝行を頼みます。

 

──池田先生から、いつも「親孝行」の大切さを教えていただいています。

ですから、忙しい親の手伝いを心掛けたり、家族で過ごす正月には「親孝行」をしようと決意したりしているメンバーもいます。

 

名誉会長 その気持ちをお父さん、お母さんが知ったら、涙を流すほど喜ぶよ。疲れや悩みも吹き飛び、お年玉だって余計にあげたいと思う(笑い)。親というのは、そういうものです。

私は、高等部の皆さんに「秀才と 親孝行は 一致かな」と詠んで贈ったことがあります。

親孝行は、人間性の芸術です。

親孝行は、究極の幸福の道です。

親孝行は、世界平和の礎(いしずえ)です。

 

──メンバーから、「親孝行をしたいと思っているのですが、何をすればいいのか分かりません」という質問も寄せられています。

 

名誉会長 仏法では、親孝行に三つの段階があると説きます。

第1に、親に衣食などをプレゼントすること。

第2に、親の思いに従うこと。それぞれ、大事な親孝行です。

そのうえで、第3の最高の親孝行とは、妙法の力で、親の生命を永遠に救っていくことであると、教えています。

つまり、皆さんが大宇宙の法則である題目を唱え、信心を根本に立派な人に育つことが、何よりの親孝行になるのです。

ですから、今は大いに学び鍛え、やがて多くの友を幸福へとリードし、社会に世界に貢献していくことです。

わが子が「あなたのお子さんのおかげで」と皆から感謝されるような人になってくれる。それは親にとって、何ものにも代え難い喜びであり、誇りです。子育ての苦労が報われたと感じるものです。

君自身の成長が、あなた自身の栄光が、一番の親孝行なんです。

親子の関係というのは、ずっと続く。いつまでたっても、親は親、子は子です。たとえ亡くなっても、生命はつながっている。

ゆえに、親孝行とは、一生涯の目標といってよい。じっくり焦らずに、自分自身を磨いていくことです。

その意味から、今回は、フィリピンの若き大英雄ホセ・リサールの言葉を皆さんに贈りたい。

「子どもが両親に表せる最高の敬意とは、誠実な人となり、社会から尊敬される人になることである」と。

 

──リサールは、19世紀の後半、植民地として支配されていたフィリピンを独立に導いた英雄です。35歳の若さで革命に殉じました。言語学者や詩人、小説家、医師、美術家、農学者、教育者としても活躍した、「アジアのルネサンス人」と言うべき万能の偉人です。

 

名誉会長 そうだね。彼の才能の原点は、両親、特に母親の愛情あふれる教乱世を勝ち抜くでした。

お母さんは、リサールが幼いころから読書を勧め、時には読み聞かせもしてあげました。その時、聞いた物語が、生涯、彼を支えました。

お母さんと共に「語学」を学び、世界市民の大きな心を養い、のちに22もの言語を使いこなせるようになっています。

ところがある時、そのお母さんが、支配者たちの策略によって、2年半もの間、投獄されてしまう。もちろん、まったく無実の罪です。学問があったお母さんは、権力者の言いなりにはならず、ねたまれ、憎まれていたのです。

理不尽な権力の魔性を目の当たりにしたリサール少年は、祖国の独立を誓います。母のため、国のため、立ち上がったのです。その勇者の精神は、今もフィリピンの大地に光り輝いています。

 

── “親の恩に報いるんだ!” との思いが、リサールの精神を、迫害をも恐れぬ強い魂へと磨いていったのですね。

 

名誉会長 その通りです。

私の大好きな沖縄の民謡(「てぃんさぐぬ花」)には、“天の星は数えようと思えば数えられるけれど、親の教えは数え切れない”

という歌詞があります。親は、子どもが見えないところで、想像できない苦労を重ねて、君たちを育ててくれています。そうした親の恩を知り、恩に報いていく時、大いなる力が湧きます。

日蓮大聖人は、12歳の時、父母の恩に報いようと、「日本第一の智者となし給へ」(御書888㌻等、「善無畏三蔵抄」)との誓願を立てられました。

心こそ、一切の根本です。

「親孝行」という心があれば、人間は、どこまでも成長していけるんです。

そのうえで、具体的な “親孝行の方法” があります。

大聖人は、青年門下の南条時光に、「親に良い物をあげようと思っても、何もできない時は、せめて日に二度、三度、笑顔を見せてあげなさい」(御書1527㌻、通解、「上野殿御消息」)と、実に分かりやすく教えてくださっています。

みんなは、まだ働いていないんだから、無理して高価な物をプレゼントしたら、かえって心配をかけてしまうでしょう。

でも、笑顔は “タダ” です。自分の “心の銀行” から、いくらでも引き出すことができる。しかも、親が一番、喜んでくれる。

わが子が笑顔であれば、親は無条件で幸せなのです。

 

──「素直に笑顔になれない」「いまさら照れくさい」というメンバーもいるかもしれません……。

 

名誉会長 まあ、思春期だもの。しょうがない一面もある。笑顔が苦手であれば、元気よく声を出すことです。

特に、返事が大事だ。「はい!」の一言は、親を安心させる “魔法の言葉” なんだよ。

「いってらっしゃい。気をつけるのよ」「はい! いってきます」

「ちょっと、宿題がまだでしょう」「はい! 今やります」(笑い)

「いいかげん、テレビ消して!」「はい! すぐ消します」(爆笑)

何でもいいんだよ。とにかく元気に「はい!」と返事をすることです。そうすれば、親はまず安心するんです。

「宿題したの?」「うるさい」

「早く寝なさい」「やだ」

「歯を磨きなさい」「ウザい」

これでは、親がかわいそうだ。親は、いつだってうるさいものです。“ああ、うちの親は、エネルギーが有り余っていて、いいな” ととらえていくことです(笑い)。

明るい返事一つで、親も自分も、驚くほど心が明るくなる。家庭の雰囲気が温かくなる。みんなの返事には、それほど大きな力がある。

 

──仏法でも「声仏事を為す」と、声や言葉の重要性が強調されています。

 

名誉会長 先日、創価学園を訪問してくださったモンゴルの大詩人メンドオーヨ先生(モンゴル文化詩歌アカデミー総裁)も言われていました。

「言葉ほど力強いものはありません。言葉は使い方によって、『光の言葉』 として人々を輝かすことができます」と。

真心を言葉にすることです。

「お母さん、いつもありがとうございます」

「お父さん、肩でももみましょうか」

「毎日、健康を祈っています」

「必ず立派になって、将来は海外旅行に連れて行きます」

たまには、これくらいのことを言ってあげようよ。「熱でもあるのか?」と心配されるかもしれないが(笑い)、心ではうれしいよ。

ともあれ、何か特別なことをするのが親孝行とは限らない。

毎朝、早く起きて、きちんと朝食を食べて学校に行く。勉強を頑張る。友達と仲良くする──そうした行動一つ一つが親孝行につながります。

 

──お父さんやお母さんがいなくて、人知れず、寂しい思いをしているメンバーも、少なくありません。

 

名誉会長 よく、分かります。でも、みんなは師子の子です。強く明るく朗らかに、胸を張って生きていくんです。

お母さん一人ならば、お父さんの分まで2倍、大事にしてあげていただきたい。お父さん一人ならば、お母さんの代わりになって支えてあげてください。

親を亡くした友もいるでしょう。しかし、あなたの胸の中で生きておられる。御本尊を拝すれば、御本尊の中におられます。題目で結ばれています。いつも成長を見守ってくれている。みんなの努力に必ず大拍手を送ってくれているのです。

日蓮大聖人は、母を亡くした門下に、仰せになられた。

「我が頭(こうべ)は父母の頭・我が足は父母の足・我が十指(じっし)は父母の十指・我が□は父母の口なり」(同977㌻、「忘持経事」)

ゆえに、父母から授かった我が身を使って広宣流布に励む功徳は、そのまま、すべて父母の生命に伝わっていきます。

君の勝利の姿が、父母の勝利の姿なのです。

 

──「どうしても親を尊敬できない」と言うメンバーもいます。

 

名誉会長 今はそれでもいい。親がどうあれ、自分は自分です。一人の人間として、思う存分、伸びていこうよ。かけがえのない、わが青春なのだから。

自分だけでは抱えきれない、難しい問題があったら、信頼できる学会の先輩に相談してください。

そのうえで忘れてはならないのは、「生んでくれたこと自体に大恩がある」ということです。親も人間です。決して完璧ではない。

聡明な皆さんは、どうか、親の悩みや苦労も察してあげられる「大人」になってください。

戸田先生は「親をも愛せない者には、広宣流布はできない!」と、あえて厳しく言われました。

親子の縁は不思議であり、深い意味がある。みんな、偉大な使命を果たさんがために、自分の親を選んで生まれてきたんだ。

だからこそ、親を大切にすることは、生まれてきたこと、生きることへの感謝の表れです。親孝行しようという心は、自身の生命を大きく開くことになるのです。

ともあれ、皆さんには、共に悩み、共に祈ってくれる創価家族もついています。私も一緒です。

大きな明るい心で、楽しく賑(にぎ)やかに希望の新年を迎えようよ!

 

【第8回】 秀才とは親孝行の人なり 2012.12.1

 

――1年の締めくくりの12月、未来部のメンバーは、各自の目標に向けて元気に前進しています。

 

池田名誉会長 この1年の全員の奮闘を、私は心から讃えたい。

とともに、何かと気ぜわしい年末です。交通事故や火災に注意をお願いします。

受験生のメンバーをはじめ、みんなの健康・無事故と大勝利を、毎日、祈っています。

日本では12月を「師走」と呼んでいます。私の恩師・戸田城聖先生は、ユーモアをまじえて、皆に語られていました。

「師走といって、文字通り、“師も走って” いるのだよ。皆さんも多忙だと思うが、私も走っている。広宣流布のために、ひとつ頑張ってくれ」

皆さんのお父さん、お母さんは、地域に幸せを広げるため、世界を平和にするために、一生懸命、走り回ってくださっている。誰よりも尊い “仏の使い”

であり、誰よりも立派な “国の宝” です。どんなに感謝してもしきれません。

皆さんは、この偉大なる父母(ちちはは)を大切にし、親孝行を頼みます。

 

──池田先生から、いつも「親孝行」の大切さを教えていただいています。

ですから、忙しい親の手伝いを心掛けたり、家族で過ごす正月には「親孝行」をしようと決意したりしているメンバーもいます。

 

名誉会長 その気持ちをお父さん、お母さんが知ったら、涙を流すほど喜ぶよ。疲れや悩みも吹き飛び、お年玉だって余計にあげたいと思う(笑い)。親というのは、そういうものです。

私は、高等部の皆さんに「秀才と 親孝行は 一致かな」と詠んで贈ったことがあります。

親孝行は、人間性の芸術です。

親孝行は、究極の幸福の道です。

親孝行は、世界平和の礎(いしずえ)です。

 

──メンバーから、「親孝行をしたいと思っているのですが、何をすればいいのか分かりません」という質問も寄せられています。

 

名誉会長 仏法では、親孝行に三つの段階があると説きます。

第1に、親に衣食などをプレゼントすること。

第2に、親の思いに従うこと。それぞれ、大事な親孝行です。

そのうえで、第3の最高の親孝行とは、妙法の力で、親の生命を永遠に救っていくことであると、教えています。

つまり、皆さんが大宇宙の法則である題目を唱え、信心を根本に立派な人に育つことが、何よりの親孝行になるのです。

ですから、今は大いに学び鍛え、やがて多くの友を幸福へとリードし、社会に世界に貢献していくことです。

わが子が「あなたのお子さんのおかげで」と皆から感謝されるような人になってくれる。それは親にとって、何ものにも代え難い喜びであり、誇りです。子育ての苦労が報われたと感じるものです。

君自身の成長が、あなた自身の栄光が、一番の親孝行なんです。

親子の関係というのは、ずっと続く。いつまでたっても、親は親、子は子です。たとえ亡くなっても、生命はつながっている。

ゆえに、親孝行とは、一生涯の目標といってよい。じっくり焦らずに、自分自身を磨いていくことです。

その意味から、今回は、フィリピンの若き大英雄ホセ・リサールの言葉を皆さんに贈りたい。

「子どもが両親に表せる最高の敬意とは、誠実な人となり、社会から尊敬される人になることである」と。

 

──リサールは、19世紀の後半、植民地として支配されていたフィリピンを独立に導いた英雄です。35歳の若さで革命に殉じました。言語学者や詩人、小説家、医師、美術家、農学者、教育者としても活躍した、「アジアのルネサンス人」と言うべき万能の偉人です。

 

名誉会長 そうだね。彼の才能の原点は、両親、特に母親の愛情あふれる教乱世を勝ち抜くでした。

お母さんは、リサールが幼いころから読書を勧め、時には読み聞かせもしてあげました。その時、聞いた物語が、生涯、彼を支えました。

お母さんと共に「語学」を学び、世界市民の大きな心を養い、のちに22もの言語を使いこなせるようになっています。

ところがある時、そのお母さんが、支配者たちの策略によって、2年半もの間、投獄されてしまう。もちろん、まったく無実の罪です。学問があったお母さんは、権力者の言いなりにはならず、ねたまれ、憎まれていたのです。

理不尽な権力の魔性を目の当たりにしたリサール少年は、祖国の独立を誓います。母のため、国のため、立ち上がったのです。その勇者の精神は、今もフィリピンの大地に光り輝いています。

 

── “親の恩に報いるんだ!” との思いが、リサールの精神を、迫害をも恐れぬ強い魂へと磨いていったのですね。

 

名誉会長 その通りです。

私の大好きな沖縄の民謡(「てぃんさぐぬ花」)には、“天の星は数えようと思えば数えられるけれど、親の教えは数え切れない”

という歌詞があります。親は、子どもが見えないところで、想像できない苦労を重ねて、君たちを育ててくれています。そうした親の恩を知り、恩に報いていく時、大いなる力が湧きます。

日蓮大聖人は、12歳の時、父母の恩に報いようと、「日本第一の智者となし給へ」(御書888㌻等、「善無畏三蔵抄」)との誓願を立てられました。

心こそ、一切の根本です。

「親孝行」という心があれば、人間は、どこまでも成長していけるんです。

そのうえで、具体的な “親孝行の方法” があります。

大聖人は、青年門下の南条時光に、「親に良い物をあげようと思っても、何もできない時は、せめて日に二度、三度、笑顔を見せてあげなさい」(御書1527㌻、通解、「上野殿御消息」)と、実に分かりやすく教えてくださっています。

みんなは、まだ働いていないんだから、無理して高価な物をプレゼントしたら、かえって心配をかけてしまうでしょう。

でも、笑顔は “タダ” です。自分の “心の銀行” から、いくらでも引き出すことができる。しかも、親が一番、喜んでくれる。

わが子が笑顔であれば、親は無条件で幸せなのです。

 

──「素直に笑顔になれない」「いまさら照れくさい」というメンバーもいるかもしれません……。

 

名誉会長 まあ、思春期だもの。しょうがない一面もある。笑顔が苦手であれば、元気よく声を出すことです。

特に、返事が大事だ。「はい!」の一言は、親を安心させる “魔法の言葉” なんだよ。

「いってらっしゃい。気をつけるのよ」「はい! いってきます」

「ちょっと、宿題がまだでしょう」「はい! 今やります」(笑い)

「いいかげん、テレビ消して!」「はい! すぐ消します」(爆笑)

何でもいいんだよ。とにかく元気に「はい!」と返事をすることです。そうすれば、親はまず安心するんです。

「宿題したの?」「うるさい」

「早く寝なさい」「やだ」

「歯を磨きなさい」「ウザい」

これでは、親がかわいそうだ。親は、いつだってうるさいものです。“ああ、うちの親は、エネルギーが有り余っていて、いいな” ととらえていくことです(笑い)。

明るい返事一つで、親も自分も、驚くほど心が明るくなる。家庭の雰囲気が温かくなる。みんなの返事には、それほど大きな力がある。

 

──仏法でも「声仏事を為す」と、声や言葉の重要性が強調されています。

 

名誉会長 先日、創価学園を訪問してくださったモンゴルの大詩人メンドオーヨ先生(モンゴル文化詩歌アカデミー総裁)も言われていました。

「言葉ほど力強いものはありません。言葉は使い方によって、『光の言葉』 として人々を輝かすことができます」と。

真心を言葉にすることです。

「お母さん、いつもありがとうございます」

「お父さん、肩でももみましょうか」

「毎日、健康を祈っています」

「必ず立派になって、将来は海外旅行に連れて行きます」

たまには、これくらいのことを言ってあげようよ。「熱でもあるのか?」と心配されるかもしれないが(笑い)、心ではうれしいよ。

ともあれ、何か特別なことをするのが親孝行とは限らない。

毎朝、早く起きて、きちんと朝食を食べて学校に行く。勉強を頑張る。友達と仲良くする──そうした行動一つ一つが親孝行につながります。

 

──お父さんやお母さんがいなくて、人知れず、寂しい思いをしているメンバーも、少なくありません。

 

名誉会長 よく、分かります。でも、みんなは師子の子です。強く明るく朗らかに、胸を張って生きていくんです。

お母さん一人ならば、お父さんの分まで2倍、大事にしてあげていただきたい。お父さん一人ならば、お母さんの代わりになって支えてあげてください。

親を亡くした友もいるでしょう。しかし、あなたの胸の中で生きておられる。御本尊を拝すれば、御本尊の中におられます。題目で結ばれています。いつも成長を見守ってくれている。みんなの努力に必ず大拍手を送ってくれているのです。

日蓮大聖人は、母を亡くした門下に、仰せになられた。

「我が頭(こうべ)は父母の頭・我が足は父母の足・我が十指(じっし)は父母の十指・我が□は父母の口なり」(同977㌻、「忘持経事」)

ゆえに、父母から授かった我が身を使って広宣流布に励む功徳は、そのまま、すべて父母の生命に伝わっていきます。

君の勝利の姿が、父母の勝利の姿なのです。

 

──「どうしても親を尊敬できない」と言うメンバーもいます。

 

名誉会長 今はそれでもいい。親がどうあれ、自分は自分です。一人の人間として、思う存分、伸びていこうよ。かけがえのない、わが青春なのだから。

自分だけでは抱えきれない、難しい問題があったら、信頼できる学会の先輩に相談してください。

そのうえで忘れてはならないのは、「生んでくれたこと自体に大恩がある」ということです。親も人間です。決して完璧ではない。

聡明な皆さんは、どうか、親の悩みや苦労も察してあげられる「大人」になってください。

戸田先生は「親をも愛せない者には、広宣流布はできない!」と、あえて厳しく言われました。

親子の縁は不思議であり、深い意味がある。みんな、偉大な使命を果たさんがために、自分の親を選んで生まれてきたんだ。

だからこそ、親を大切にすることは、生まれてきたこと、生きることへの感謝の表れです。親孝行しようという心は、自身の生命を大きく開くことになるのです。

ともあれ、皆さんには、共に悩み、共に祈ってくれる創価家族もついています。私も一緒です。

大きな明るい心で、楽しく賑(にぎ)やかに希望の新年を迎えようよ!

 

【第9回】 世界が君の本舞台  (2013.1.1)

 

私が開いた友情の大道を皆さんに託したい

 

未来学者ヘンダーソン博士

世界市民とは自分が今いる場所から可能な限りの行動を起こす人。

 

名誉会長 未来部の皆さん、新年、おめでとう!

 グングンと大樹に伸びていく皆さん方と新しい年を出発できることが、私は本当にうれしい。

 

 ──中等部、高等部の皆さんからも、「海外で活躍できる人になります」「池田先生に続いて、世界中の人と友情を結んでいきます」等、新年の決意が寄せられています。

 

名誉会長 そう言ってくれる皆さんのために、私はこれからも世界に道を開いていきます。

 世界広宣流布の土台は、完璧にできあがりました。あとは「人材」です。みんなが力をつけ、偉大なリーダーに育ってくれることです。

 未来部の君の成長が、あなたの前進が、人類の希望です。

 どうか、“心の世界地図”を大きく広げ、自らの無限の可能性を開きながら、勝利、勝利の1年にしていってください。

 

 ──最近は、どの国に行っても、SGI(創価学会インタナショナル)のメンバーと会うことができる。そういう時代になりました。

 

名誉会長 すごいことだね。

 恩師・戸田城聖先生は、「君の本当の舞台は世界だよ」と、私に平和のバトンを託してくださった。私は、世界に行けなかった先生の“分身”として駆けめぐりました。師の心を心として、世界を友情で結んできました。

 SGIが発足したのは、38年前の1月のことです(1975年1月26日、グアム)。

 あの日、私は発足式の会場の署名簿に「池田大作」と書き、国籍の欄には「世界」と記しました。戸田先生が叫ばれた「地球民族主義」が、私の信条だからです。

 今やSGIの連帯は、192カ国・地域に広がっている。国家や民族、人種など、あらゆる違いを超え、人類を結ぶ平和の連帯になっています。

 一人一人が、それぞれの国、それぞれの地域に根を張り、「良き市民」として、信頼を集め、社会に大きく貢献しています。

 

 ──世界へ雄飛しようと決意する未来部員から、「世界市民になるためには何をすればいいですか」という質問がありました。

 

名誉会長 偉い。いい質問だね。

 「シンク・グローバリー、アクト・ローカリー」という言葉を聞いたことがあるかな。「地球規模で考え、地域から行動する」という意味で、世界市民の条件です。

 この言葉は、私と共に対談集を発刊した未来学者のヘイゼル・ヘンダーソン博士が、地球環境の問題を解決するために掲げていたスローガンです。

 博士は、私との対談で、世界市民になることは「決して難しいことではない」と言われていた。大事なのは、さまざまな世界の問題に対して、「同じ地球に住む一人の人間として、今、自分が住んでいる場所で、可能な限りの行動を起こしていくこと」と語られています。

 この言葉を、皆さんに贈りたい。「世界市民」とは「心」で決まる。日ごろの「行動」で決まります。

 

 ──ヘンダーソン博士は、もともと無名の一主婦でありながら、大気汚染などの環境の改善に立ち上がった女性リーダーですね。

 

名誉会長 そうです。今から50年ほど前のアメリカ・ニューヨークは、人の肌がススで汚れてしまうほど、大気汚染がひどかった。博士は、子どもたちの未来を守るために、立ち上がりました。

 まず、広場に集まる母親たちに声をかけ、少しずつ仲間を増やし、小さなグループをつくりました。そして、市長やテレビ局に手紙を書き、庶民の苦しみを訴えました。環境を破壊する企業にも強く抗議します。しかし、“主婦に何が分かる”とあざ笑われました。

 しかし、博士は負けなかった。自らが猛勉強していくとともに、市民の声を高めながら、ねばり強く、公害を規制する法律を成立させる流れをつくっていきました。

 

 ──一人の勇気ある行動が、社会を変え、世界を変革していったのですね。

 

名誉会長 その通りです。

 ヘンダーソン博士の勇気の原点は、偉大なお母さんの姿でした。

 博士が6歳の時、第2次世界大戦が起こり、当時住んでいたイギリスも空爆を受けました。博士のお母さんは、焼け出された人たちのために自宅の部屋を開放し、多くの人々を助けたのです。

 自分も苦しい、それでも、苦しんでいる人を救わずにいられない──この崇高な母の魂こそ、「世界市民」の原点です。

 実は「世界市民」の最も良い模範が、皆さんのすぐ側にいる。それは、みんなのお父さん、お母さんであり、近所の学会員さんです。

 毎日毎日、地域のため、あの人この人のために、一生懸命、行動を積み重ねながら、しかも「世界広宣流布」という、大きな大きな理想に燃えています。

 時には「トインビー博士は……」とか、「ゴルバチョフ元大統領も……」などと、まるで自分の友だちのようにしゃべる(笑い)。

 悩む人がいれば、生命の希望の哲学を語り、宇宙の大法則を語り、人間蘇生の体験を語る。共に涙を流し、共に祈り、励ましを送る。

 これほど地道に、着実に、人類の幸福のため、世界の平和のために貢献している人が、どこにいるだろうか。この素晴らしき創価の父母《ちちはは》の連帯を、ヘンダーソン博士も心から称賛されています。

    

 ──あるメンバーから、「池田先生のように、文化や言葉、宗教も違う人と語り合い、世界に友情を結ぶには、何が大切ですか」という質問がありました。

 

名誉会長 「世界」と言っても、根本は「人間」対「人間」です。

 同じ「人間」という視点に立てば、共通点はたくさん見つかります。

 特に「生老病死」という万人の課題を、心ある知性は真剣に思索しています。ですから、仏法を学び、実践しているということは「生命」という最も奥深い次元で心が通う対話を進めることができるのです。

 ともあれ、外国の方々と友情を結ぶと言っても、何も特別なことではありません。

 人間として尊敬するのです。

 人間として率直に語るのです。

 人間として理解し合うのです。

 ゆえに、人間としての振る舞いが重要です。

 例えば、自分からあいさつができる人、自分から声を掛けられる人は、世界市民です。朗らかなあいさつ一つ、明るい声一つで、“ああ、この人は、いい人だな”と、相手が安心し、打ち解け合うことができるからです。

 また、「約束は必ず守る」ことも世界の指導者に共通しています。

 戸田先生は、「青年の最高の修行は、約束を守ることだ」と、いつも教えてくださった。

 偉大な人は、信義を貫きます。友との約束、そして、自分自身との約束を、絶対に破りません。誓ったことを必ずやり通す──この人間としての「信念」が、君を、あなたを、世界市民へと育ててくれるんだよ。

 

 ──池田先生の「人間外交」は、日本と中国、日本とロシアな

ども大きく結んでこられました。

 

名誉会長 平和を愛する一人の人間として、私は私の次元で「可能な限りの行動」を誠実に貫いてきただけです。

 1974年、私が初めて中国を訪問した時、かわいらしい一人の少女が私にたずねてきました。

 「おじさんは、何をしに中国に来たのですか?」

 私は答えました。

 「あなたに会いに来たのです」

 それは、まぎれもない私の率直な思いでした。「人間と人間、民衆と民衆、青年と青年を結ぶ懸け橋に」──これが私の決心でした。

 中国に続いて、ソビエト連邦(現在のロシアなど)も訪れました。当時、ソ連は“こわい国”という印象を持っている人が少なくなかった。行く前には、“宗教者なのに、なぜ宗教を否定する共産主義の国に行くのか”と、批判もされました。私は答えました。

 「そこに、人間がいるからです」

 そうやって世界に開いてきた「友情のシルクロード」を、私は皆さん方に託していきます。

 

 ──池田先生は、アメリカの名門コロンビア大学での講演で、世界市民の模範として──

 ①生命の平等を知る「智慧の人」

 ②違いを尊重できる「勇気の人」

 ③人々と同苦できる「慈悲の人」の3点をあげられました。

 この視点は、世界の争いごとを解決するための重要な条件としても注目されています。

 

名誉会長 皆さんは、これから世界中の人と友だちになり、平和を創造していく若き指導者です。

 学びに学んで、人間としての実力を、じっくり磨いていってください。

 世界の文学にも挑戦してもらいたいね。読書は、ただ「情報」を得るだけではなく、その国の文化や歴史も深く学ぶことができる。豊かな「心」の共感を広げてくれます。

 とともに、語学をしっかりと学んでほしい。語学は“世界へのパスポート”です。一つの言語と言わず、これからは二つも、三つも必要になります。

 東北・岩手生まれの新渡戸稲造博士は、若き日に「太平洋の懸け橋」となることを志し、国際連盟事務次長も務めた世界市民です。初代会長の牧口先生とも、交友がありました。その博士が、こう言われています。

 「自分の現在の義務を完全に尽くす者がいちばん偉いと思う。そして、自分の現在の義務は何であるかをはっきり認め得る人は、人生の義務と目的とを理解する道に進むであろう」(新渡戸稲造著『自分をもっと深く掘れ!』三笠書房刊)

 博士は、今の自分自身を掘り下げていけば、世界に道は開かれていくと考えていました。

 今、この時に、学んで学んで、自分を深めていく──その努力の先に、世界はいくらでも広がっている。

 世界がみんなを待っています。

 

 ──未来部員の中には、語学が苦手という人がいます。

 

名誉会長 これまでは、そうだったかもしれない。しかし、人は変わることができます。学ほうと決意した時がチャンスです。

 勉強するのに「遅すぎる」なんてことは、絶対にありません。

 「習うより慣れろ」です。最近のあれだけ難しい日本語が話せるんだもの(笑い)、外国の言葉も必ず話せるようになります。

 私が、みんなと同じ年代のころは戦争中だったので、英語は敵性語として勉強できませんでした。

 もう一度、学生時代に戻れるならば、語学をしっかり身につけたいと、つくづく思います。

 だから、若い皆さんは思い切り語学を習得して、世界に友情を広げていただきたいのです。

 できれば、お父さんやお母さんも、外国に案内して差し上げてほしい。

 「世界広宣流布」は、日蓮大聖人が御生涯をかけられた大願です。御書を拝すると、「世界」をあらわす「一閻浮提」「閻浮提」「閻浮」という言葉が、実に200カ所以上も、記されています。

 この大仏法を持《たも》つ皆さんが、立派な世界市民と躍り出て、社会と広布のリーダーとして大活躍していくことは決まっています。

 その日を楽しみに、この1年も、皆さんと一緒に前進したい。

 さあ、新しい年の始まりに、新しい目標を掲げて出発しよう! 共に未来へ! 共々に世界へ!

 

【第10回】 祈りは青春勝利の力  (2013.2.1付)

 

唱題と努力が不可能を可能に

 

非暴力の闘士 マハトマ・ガンジー

祈って成し遂げられないものはこの世界にない。

祈る人間には退却というものはない

 

名誉会長 寒い日が続いているね。皆さんが風邪をひかないように、「健康第一」で元気に勉学に励めるように、いつもいつも、題目を送っています。

 

 ──ありがとうございます!

 受験生も、いよいよ勝負の時を迎えています。私たち担当者も、全力で応援していきます。

 受験や、日ごろの勉強、クラブ活動での目標を立て、また、さまざまな悩みなどを機に、勤行・唱題に挑戦し始めたメンバーも数多くいます。

 

名誉会長 目標を掲げて、祈る。祈って、悩みに立ち向かう──素晴らしいことじゃないか。ここに、生命の真の輝きがあります。

 そもそも、祈ることは、人間にしかできない「特権」です。また、人間として最も崇高な行動です。

 ましてや、宇宙の大法則である妙法を、若くして持《たも》った皆さんです。この題目を唱えられることが、どれだけ偉大なことか──。

 今はまだ分からないかもしれない。でも、必ず深く実感できる時が来ます。

 

 ──読者からも、多くの質問が寄せられています。「『祈りは必ずかなう』と親に言われましたが、なかなか信じられません」「なぜ、祈りはかなうのでしょうか?」という声がありました。

 

名誉会長 日蓮大聖人は、率直に質問を寄せてきた門下を、最大に讃嘆されました。

 「仏法について疑問を持ち、その意味をお尋ねになったことは、尊い大善の行いです」(御書1402ページ、趣意)と。

 ですから、みんなが、信心について考え、質問すること自体に、実は大きな功徳があるんです。

 では、なぜ祈りはかなうのだろうか。それは、君自身に、もともと祈りをかなえる力があるからです。あなた自身が、本来、無限の可能性を秘めた存在だからです。

 仏法では、すべての人々に、一人ももれなく、「仏界」すなわち仏の生命が厳然と具わっていると説かれています。

 

 ──はい。「仏界」については、教学部の任用試験で「十界論」を学んだメンバーもいます。

 私たちには、10種類の境涯(地獄界・餓鬼界・畜生界・修羅界・人界・天界・声聞界・縁覚界・菩薩界・仏界)があり、それぞれの「縁」に触れることで、その生命が現れてくる、という教えですね。

 

名誉会長 その通りです。

 みんな、一日の生活を見ただけでも、いろんな境涯が現れていることが分かるよね。

 「一人一日の中に八億四千念あり」(同471ページ)とされるくらい、人の心は縁によって目まぐるしく変化します。では、一番、力強い「仏界」を引き出していくためには、どうすればいいのだろうか。

 結論からいえば、「南無妙法蓮華経」と御本尊に題目を唱えること。この祈りから始まるのです。

    

 ──唱題すると、なぜ、仏の生命が湧き出してくるのでしょうか。

 

名誉会長 「南無妙法蓮華経」が、仏の生命の“名前”だからです。みんなもそれぞれ、名前を持っています。「○○君」「○○さん」と呼ばれれば、「はい」と言って、振り向くよね?

 同じように、「南無妙法蓮華経」の題目を唱えることで、自分の中から、仏界の生命が呼ばれて、「はい!」と元気良く出てくるんだ。

 大聖人は御書で、「我が生命の中の仏性が南無妙法蓮華経と呼ばれてあらわれるところを仏というのである」(557ページ、趣意)と仰せです。

 そして、南無妙法蓮華経は、宇宙を貫く根源の法です。太陽や星が運行していく究極の力でもあります。

 宇宙のあらゆる存在の奥底に、みんなと同じく南無妙法蓮華経が厳然と具わっている。ですから、ひとたび、題目を唱えれば、そのすべてが呼び起こされ、味方となっていくんです。

 御本尊は、いわば大宇宙に開かれた生命の窓です。題目は、宇宙のあらゆる仏界を呼び起こす合言葉といえる。

 唱題をすることで、自身に宇宙大の可能性を開いていくことができる。自分でも気づいていない、本当の自分の力を湧き立たせていくことができるのです。

 そして、宇宙の善の力をすべて味方にしていくのだから、これほど強いことはないんだよ。

 これは、戸田城聖先生の弟子として、世界に仏法を弘めてきた、私の人生の確信です。

 今、題目を唱える創価の連帯が世界192カ国・地域に広がっていることは、妙法の偉大さの何よりの証明です。

 仏教発祥の国・インドの地にも今、皆さんと同じ世代の友が唱題に挑戦しています。実は、インド独立運動の大指導者、マハトマ・ガンジーも、「南無妙法蓮華経」の題目を、祈りに取り入れていました。この非暴力の闘士は、あらゆる行事や集会を、「祈り」から始めていたのです。

    

 ──池田先生は、インドの国立ガンジー記念館から招請され、ガンジーの人と思想をめぐって、講演をされました。その日は、東洋広布を願われた戸田先生の誕生日である2月11日でした(1992年、「不戦世界を目指して──ガンジー主義と現代」と題し講演)。

 

名誉会長 そうだったね。わが恩師に捧げる思いで講演させていただきました。

 マハトマーガンジーは、人間に秘められた力を信じ抜きました。権力の迫害にも屈せず、正義の信念を貫き通しました。その根幹には、「祈り」の力があったのです。

 ガンジーは、題目が、人間に内在する力の究極の表現であり、宇宙の生命そのものであることも学び取っていました。

 今回は、皆さんに、ガンジーの信念の言葉を贈りたい。

 「心からの祈りによって、成し遂げられないものは、この世界にない」「祈る人間には退却というものはない」

 彼にとって、「祈り」は強い人間の証しでした。その揺るがない信念があったからこそ、どんなにつらい状況でも、“未来は必ず明るくなる”“人間には限りない可能性がある”と、楽観主義を貫くことができたんです。

 いわんや、私たちの題目は、智慧の宝の蔵を自在に開く鍵です。わが心を悠々と宇宙大に広げて、勇気の太陽を昇らせる響きです。

 だから、落ち込んだり、悩んだりしても、勤行・唱題を実践する人は、必ず生命力を蘇らせていくことができる。何があっても快活に、自分らしく輝いていけるのです。

   

 ──「南無妙法蓮華経」とは、どういう意味でしょうか。

 

名誉会長 一字一字に、深い意味があります。それは、御書に全部、記されています。じっくりと学んでいってください。

 たとえば、「日本」という文字の中に、北は北海道から南は沖縄まで、全国が含まれるね。

 同じように、「南無妙法蓮華経」の中には、すべての経典の核心が含まれている。宇宙の法則、世界の哲学、人間の生命の不思議さ、あらゆるものを凝縮したエッセンスが「南無妙法蓮華経」なんです。

 いわば、南無妙法蓮華経は──

 永遠不滅の希望の泉です。

 巌窟王の負けじ魂の炎です。

 絶対勝利の勇気の師子吼です。

 大宇宙の前進のリズムです。

 そして、歓喜の中の大歓喜です。

 それを形に顕されたのが、御本尊なのです。御本尊は、最高無上の生命の明鏡です。

 大聖人は、「すべての人々にとって、南無妙法蓮華経と唱える以上の遊楽はありません」(御書1143㌻、通解)と仰せです。

 

 ──たしかに、どんな苦しい時も、唱題すると絶対に生命力が湧いてきます。これは不思議です。

 

名誉会長 仏法の法理からすれば、当然です。「自分は最高に尊い存在だ! 何ものにも負けないんだ!」と、何度も何度も、仏の生命に呼びかけているんだから。

 「自分はダメな人間だ」「私なんて小さな存在だ」とさげすむ現代の社会の風潮には、断じて流されてはなりません。

 

 ──「唱題は、どのくらいやればいいのでしょうか」という問いがありました。

 

名誉会長 祈ることは、あくまで、あなたの「権利」です。祈りたいと思う分だけ、無理なく実践すればいいんです。「これだけ唱題しないと、だめ」なんて狭い考えは、仏法にはありません。

 特に、皆さんは、今は学業が本分だから、伸び伸びと考えてください。「一遍の題目」にも計り知れない力があります。

 朝、時間のない時などは、心を込めて題目三唱をすれば、必ず通じます。

 そのうえで、時間を見つけて、勇んで題目を唱えた福運は、“宇宙銀行”に積まれています。いざという時、限りない力となります。

  

 ──「雑念が湧いて真剣に唱題できない」「テレビが気になって、長続きしない」という正直な声もあります(笑い)。

 

名誉会長 だから、「仏道修行」なんだよ。唱題に挑戦し続けようという姿勢があれば、また、心の底からかなえたいことがあれば、自然と真剣に唱題できるようになります。ありのままでいいんだよ。

 目標を明確に定めれば、祈りに真剣さが増すでしょう。若いのだから、自分自身を高めていく具体的な内容を一つ一つ掲げることが大切です。

 私も青春時代、病気との悪戦苦闘が続きました。戸田先生の事業の絶体絶命の窮地もありました。

 その中で、ともかく、題目の力を試してみるのだと決めて、唱題を重ね、全身全霊で戦い切りました。そして、一切を勝ち越えて、「祈りとしてかなわざるなし」「題目に勝る力なし」との絶対の大確信をつかんだのです。

 

 ──「真剣に唱題しているのですが、なかなか祈りがかないません」というメンバーもいます。

 

名誉会長 真剣に唱題すれば、必ず、すべてが良い方向に向かっていきます。

 仏法の祈りは「誓い」です。「必ず実現してみせる」と決める祈りです。そう決意を固めるから、本気で努力できる。努力するから、祈りを実現できる自分になるのです。仏法とは、あくまでも

 「道理」です。何か神秘的な力ではない。

 また、信心は「人間革命」するためにある。仮に、すぐ祈りがかなってしまえば、“努力しなくても、何とかなるんだ”と思ってしまうかもしれない。それでは、人間性の真の向上はありません。

 祈って、努力していけば、心の奥底にある願いは必ずかなっていきます。題目の人は、最後は自分の思い描いた以上の大勝利の青春、そして人生を歩めるのです。

 だから、思うようにいかない、一時の苦しみや悲しみに、負けてはならない。焦ってもならない。

 人生には、病気、経済苦、人間関係の悩みなど、さまざまな試練が襲いかかってくる。しかし、祈り続ける人は、それを断固として素晴らしい勝利の劇に転ずることができます。

 あとで振り返って、あの時にあの出来事があったから、今の自分があると、必ずいえるようになる。そのための信心です。

 君もどうか、未来に大きな目標を掲げ、祈り続けていってほしい。

 そして、その祈りのままに挑戦を貫いていってほしい。私も毎日、君たちと共に祈ります。

 そして、「君よ、あなたよ! 今日も、明るく強く! 青春勝利の道を!」と、強盛な祈りを重ねていきます。

 

ガンジーの言葉は、The Collected Works of Mahatma Gandhi, Vol.84。 The Publications Division of The Ministry of Information and Broadcasting, Goverment of India。 (c)Navajivan Trust, Ahrmerabad.と、「私の宗教的実践の補助」ガンジー著『私にとっての宗教』所収、保坂俊司訳、新評論

 

【第11回】 使命の翼を広げよう!  (2013.3.1)

 

「自分がやる」と決めれば力が出る

 

名誉会長 春3月は、旅立ちの月、希望の出発の月です。

 私にとって、未来部の皆さんが見違えるように成長して、新たな一歩を踏み出していく姿ほど、心躍るものはありません。

 

 ──メンバーは、この1年、「未来対話」を学び、池田先生と心で語らいながら、前進してきました。私たち担当者のほうが、未来部員から師弟の息吹を教わっています。

 

名誉会長 うれしいね!

 未来部の皆さんも、担当者の皆さん方も、春夏秋冬、いつも私と心は一緒です。

 勉学や読書、クラブ活動、友情、親孝行、未来部の活動など、それぞれの挑戦を重ねてきたみんなの活躍は、毎日、報告をもらいました。全員が、努力の勝利者です。

 晴れの卒業を迎える皆さん、おめでとう! 3年間、本当によく頑張ったね!

 とりわけ、東日本大震災から2年、あらゆる困難を乗り越えてきた被災地の皆さんを、私は最大に讃えたい。どうか、これからも、家族や友人と支え合い、励まし合って、勝ち越えていってください。私は、一生涯、皆さんの人生の幸福と栄光と勝利を祈り、見守っていきます。

     

 ──女子高等部の卒業生は、晴れて女子部の「池田華陽会」の第6期生になります。

 

名誉会長 世界中に、皆さんの仲間がいます。すごい時代です。

 卒業する皆さんが、どこに羽ばたいていっても、私たちの心の絆は絶対に切れません。

 これからも、明るく健やかに、自分らしく思う存分、若き生命を伸ばしてください。

 3月は「弥生」ともいいます。弥生とは、草木が「いよいよ生い出る」という意味の「いやおひ」が語源だと言われています。

 冬を越えた若芽のように!

 春を告げる花々のように!

 これから広がる新たな舞台へ、「いよいよ」の勢いで飛び出していこうよ!

 

 ──卒業生の中には「せっかく仲良くなった友達と別れるのが、さびしい」という人もいます。

 

名誉会長 そうかもしれない。でも、よき友情は、一生涯を通して育てていくものです。たとえ、進む道が違っても、いくらでも励まし合える。お互いに若いのだから、共に未来を見つめて、カラッと明るく進んでいくんです。

 今まで以上に、たくさんの新しい出会いも待っています。

 センチメンタルな気持ちに流されず、朗らかに聡明に、よき縁を大切にし、心豊かな青春としてください。

 とりわけ、卒業は〝自分は周りに支えてもらっている〟と、人のありがたさを再認識する機会です。人間関係をいっそう深めるチャンスです。

 ご両親や家族、学校の恩師、友達や先輩・後輩、さらに地域の創価家族の方々などに、すがすがしく感謝の言葉を伝えてほしい。

 

 ──最高学年になる在校生からは、部活や生徒会の活動などで、「先輩たちのようにできるか、心配です」との声が届いています。高等部の部長や副部長になる友からも、「皆をどう引っ張っていけばよいでしょうか」との質問が寄せられています。

 

名誉会長 大丈夫! 誰だって、最初は不安なのが当たり前です。

 それは、リーダーとして、皆のことを真剣に考えている証拠だし、クラブや生徒会、わが部の今後に責任を感じているからでしょう。それ自体、素晴らしい指導者の心じゃないか。偉大な人間修行です。

 ただ、君は君、あなたはあなたです。先輩と同じようにはできないし、そうする必要もない。よき伝統は引き継ぎつつ、どこまでも自分らしく、誠実にベストを尽くしていけば、必ず道は開けます。

 ましてや、妙法を持《たも》っている皆さんです。朗々と題目を唱えて、苦労も喜びに変えながら、信頼される先輩、力あるリーダーに成長できないわけがない。

      

日本を代表する経済人 松下幸之助

成功するためには、成功するまで続けることである

 

 ──「自分から大きな役割を担うのは気が引けるし、自由を奪われる気がする」「責任を負うのは重い」という人もいるようです。

 

名誉会長 たしかに、「責任」と言われると、重く感じてしまうかもしれない。

 でも実は、「責任」を担った時こそ、自分自身のカラを破る最高のチャンスなんだ。

 皆さんは、実業家の松下幸之助さんを知っているかな。「松下電器産業株式会社(現・パナソニック)」の創業者で、「経営の神様」と呼ばれました。私も何度もお会いしました。会えば4時間、5時間と、人生の万般にわたって語り尽くしたことが懐かしい。共に対談集も発刊しました。

 松下さんは、人を育てる名人でした。

 こんなエピソードがあります。昭和の初め、電気アイロンは便利なものでしたが、庶民には手の届かない高級品でした。そこで松下さんは、一人の若い技術者を呼んで、こう言われました。

 「できるだけ安いアイロンをつくり、その恩恵に誰もが浴せるようにしたい」

 若い技術者は、賛成した上で、「しかし、誰がそれを担当するのでしょうか」と尋ねます。

 「君だよ。君ひとつ、このアイロンの開発を、ぜひ担当してくれたまえ」

 若い技術者は、アイロンをつくるのに必要な電熱関係の知識や経験がありませんでした。そこで、「私一人では、とても無理です」と断ってしまった。

 すると間髪を入れず、松下さんは、こう言い切ったのです。

 「いや、できるよ。君だったら必ずできる」

 この松下さんの期待に応え、青年は懸命に創意工夫を重ねていった。そして、これまでの性能を落とさず、価格を下げたアイロンを完成させたのです。「国産優良品」にも指定されるほどの高品質の製品です。

 

 ──若き技術者の力を、松下さんは見抜いていたのですね。

 

名誉会長 その通りです。それは、技術者自身も気づいていなかった「自分の中に秘められた力」だったんだ。

 のちに、この技術者は会社の重責を担うリーダーになりました。

 そして、あの日の松下さんとのやりとりについて、「あの『君ならできるよ』という小さな言葉が、私の心に火をつけたのです」と回想されています。

 松下さんは、青年を信じて使命を託した。その信頼が、若き心の中の「責任感」に火をつけた。

 青年は、「自分がやる。必ずやり遂げてみせる」と腹を決めることだ。一念が定まれぱ、自分自身も気づかなかった力が、どんどん湧いてくる。

 今回は、この松下さんの言葉を、皆さんに贈りたい。

 「“失敗するかもしれない”とか“おそらくできないだろう”ということでなく、“やれば必ずできる”“もし転んでも、そこに転がっているものをつかんでやり直そう”という積極性、根性をもつ」

 「成功するためには、成功するまで続けることである」

 松下さん自身、何度も経営の危機に陥ったが、そのたびに立ち上がった。事業は人で決まると考え、仕事を託すなかで、粘り強く人を育てた。体が弱かったが、あきらめなかった。会社のため、そこで働く人や、その家族のため、さらに、日本と世界の繁栄のために──。

 責任感とは、「自覚」と「執念」の異名なのです。

      

 ──松下幸之助さんは、創価大学にも、関西創価学園にも、来られました。

 

名誉会長 教育に力を入れておられました。私より30歳も年長で、わが師・戸田城聖先生と同世代の方です。私は恩師をお迎えする思いで、ご案内しました。

 関西創価学園では、歓迎演奏が終わると、満面の笑みで鼓笛隊に歩み寄り、温かな関西弁で、「よろしゅうおますなぁ──。ほんまにおおきに」と何度も言われていた。

 学園生たちと交流した後、松下さんが、かみ締めるように語られた言葉が忘れられません。

 「きょうは、10歳も20歳も若返りました。青春の若さをもう一度得られるなら、自分は全財産を投げ出してもいいと思うてます。でも、それはできません。かわりに学園生の皆さんから、若さのエネルギーをいただきました」

 皆さんは、何ものにも勝る「青春の若さ」という財宝をもっています。若いということは、それだけで素晴らしいのです。何も恐れる必要はありません。

 戸田先生も、心から青年を愛してくださいました。

 理想へ向かうまっすぐな純粋さ、正義を貫く大情熱、そして、無限に成長しゆく未来性を絶対的に信じてくださったのです。

 

 ──間もなく、戸田先生から池田先生に師弟のバトンが継承された3・16「広宣流布記念の日」を迎えます。

 

名誉会長 1958年(昭和33年)の3月16日。戸田先生のもとに6000人の青年部員が集い、広宣流布の後継の式典が行われました。今年で55周年になります。そこには皆さんと同じ、未来部の世代の同志も集ってくれました。

 この師弟の厳粛な式典は、“広宣流布の主体者は青年である”という大宣言でもあったのです。ずっと側にお仕えしていた私には、師の心が痛いほど分かりました。

 この戸田先生の心を受け継いで、自身の使命に目覚めた青年たちが、「人間革命」の大潮流を起こしていったのです。

 戸田先生のために、先生が願われた広宣流布のために、私たちは、どんな迫害にも負けず、どんな困難も勝ち越えてきました。これが、我らの人生の誉れです。

 御書には、「二陣三陣つづきて」(911ページ)と仰せです。

 これからの本格的な世界広宣流布を担い立つのは、君たち、あなたたちです。

 私は、今この時に、師弟の魂のバトンを、未来部の皆さんに厳然と託していきます。

 

 ──池田先生は、かつて未来部に、「自らの使命を自覚した時、才能の芽は、急速に伸びる」との言葉を贈ってくださいました。

 

名誉会長 使命とは「命を使う」と書く。生きている限り、わが命を何に使うか。追い続け、求め続け、決め続けていくのです。

 それは、遠くにあるのではない。目の前の課題に全力で挑戦していけば、いつか、自分にしかない使命が、必ず見つかる。必ず、「自分の使命は、これだ!」と分かる。だから、焦ることはありません。

 皆さんの生命には、もともと限りない前進の力、幸福の力、勝利の力が備わっています。

 だから、自身の課題に思い切って挑戦し、学び、鍛えてほしい。若い力を出し切ってほしい。

 誰が何と言おうと、私は君を、あなたを信じています。信じ抜いています。心配や不安に押しつぶされそうになったら、ありのままの自分で御本尊に祈ろう。

 もし君自身が、「もう、だめかもしれない」とあきらめそうになっても、私は絶対にあきらめません。私自身が、あきらめないで、戦い抜いてきたからです。今も戦い続けているからです。

 ゆえに、たとえ、君が、あなたが、どんな状況であっても、私はこう呼びかけるのです。

 「君なら、あなたなら、必ずできる!」

 

 松下幸之助氏のアイロンのエピソードは『松下幸之助 ビジネス・ルール名言集』、言葉はいずれも『松下幸之助 成功の金言365』 (PHP研究所刊)

 

 

【第12回】 「チャレンジ」そして「チェンジ」! (2013.4.1)

 

目標は具体的に! 努力は朗らかに!

 

アメリ公民権運動の母ローザ・パークスさん

変化を起こすには、まず最初の一歩を踏み出すことを恐れてはいけない。失敗はただ一つ、やってみないこと。

 

名誉会長 新入生の皆さん、晴れの入学、おめでとう!

 みんな、待っていたよ!

 ご家族の方々が、皆さんの成長を祈っています。21世紀使命会のお兄さんやお姉さん、地域の創価家族の皆様も、全力で応援してくれます。

 私も毎日毎日、真剣に、題目を送っています。挑戦そして勝利の青春を、共に歩みだそう!

 

 ──新しく中学1年生になるメンバーのほとんどは、この4月号で、初めて「未来ジャーナル」を手に取ることになります。

 

名誉会長 ありがとう! 私はいつも、君に、あなたに、一対一で語りかける思いで、この「未来対話」に臨んでいます。

 毎月、全国から寄せられる声をうかがうのを楽しみにしています。悩みや疑問に真正面から向き合うみんなの姿を思い浮かべて、一緒に考え、一緒に乗り越えていきたいと決心しています。

 難しいところがあれば、読み飛ばしてもらってかまわない。何か一つでも、みんなの心に残れば、それでいいんだ。

      

 ──入学や進級に際しては、新しい人間関係への不安があります。「どうやったら友達ができますか」との質問や、「クラスで浮いてしまわないか、心配です」などの声が届いています。

 

名誉会長 みんな同じ思いなんだから、あまり堅苦しく考えなくてもいいんだよ。

 もう40年近く前、国交が回復してまもなく、私が最初に中国を訪問する時のことです。一緒に行く青年たちは、事前に中国関係の本を山のように積んで、知識を詰め込むことにとらわれていました。

 当時は、中国のことを、全然、知らなかったから、みんな緊張して、身構えていたんだね。青年の勉強する心はうれしかったけれども、私は、あえて言いました。

 「先入観を持たず、ありのままに中国を見て、友情を結ぼう! 同じ人間として、青年として、心を開いて、語り合い、学び合い、信頼を築いていこうよ!」と。

 その通り、新しい友好が、たくさん誕生する旅になりました。

 皆さんの新学年の学校生活でも、「この人は、ちょっと気難しいかな」などと決めつけないで、気さくに「おはよう」「ありがとう」と、周りにあいさつをしていくことから始めたら、どうかな。驚くほど、お互いの心が通じていくよ。

 

 ──「新しい環境への期待よりも、不安が大きい」という声もあります。「この不安な気持ちを早く消したい」という中等部員もいました。

 

名誉会長 たしかに、大きく環境が変われば、誰だって不安になります。無理矢理、不安を消そうとしなくてもいいんです。

 そういう時、大事なことは、まず一歩、前進することです。受け身にならず、自分から何かを始めることです。一歩踏みだせば、不安はどんどん小さくなります。

 新しい環境は、新しい自分になるチャンスなんです。思い切って、新しい挑戦をスタートできるチャンスです。

 新しい春の出発をする皆さんに、私と妻の懐かしき友人でもあるローザ・パークスさんの言葉を贈ります。

 「変化を起こすには、まず最初の一歩を踏み出すことを恐れてはいけない」「失敗はただ一つ、やってみないこと」

      

 ──人種差別と戦ったアメリカの「公民権運動の母」ですね。

 1950年代の半ば、黒人はバスに乗った時も、白人の乗客に席を譲ることを強制されていました。ところがパークスさんは、それをはっきりと拒否し、逮捕されたのです。

 この勇気が、「バス・ボイコット運動」へとつながり、歴史を大きく変えました。世界中の教科書でも紹介されています。

 そのパークスさんが、池田先生との出会いこそ「私の人生に一番大きい影響を及ぼす出来事」と、感動を語っておられました。

 

名誉会長 偉大な女性でした。平和の信念の闘士であり、世界中の子どもを愛される母でした。パークスさんとの初めての出会いの際、公民権運動の中で歌われた「ウィ・シャル・オーバーカム(私たちは必ず勝利する)」を、皆で大合唱したことも、黄金の思い出です。

 パークスさんは幼いころ、病気がちで学校に行けず、悲しい思いをした時期がありました。でも、彼女は負けなかった。家にいても、母や祖母から勉強を教わったのです。おかけで、勉強も読書も大好きになりました。

 しかし、高校生の時、祖母が病気になり、パークスさんは看病をするために高校を中退したのです。その後、もう一度、高校に復学しようとすると、今度は母親が倒れました。勉強したくても、思うようにできない──そんな青春時代でした。

 それでも、パークスさんは挑戦をやめませんでした。若くして結婚した後、高校を卒業するチャレンジを開始します。努力は実を結び、彼女はついに、卒業証書を手にすることができたのです。

 どんな状況でも、自らの決意を貫いていく。まず、思い切って、チャレンジする──これが、パークスさんの偉大さです。

 

 ──周りはどうあれ、自分らしく挑戦していくことが、大切なのですね。

 

名誉会長 その通りです。

 日蓮大聖人は、「夏・秋・冬・春と四季の変わり目には、必ずふだんと異なることがある。私たちが仏になる時もまた同じである」(御書1091ページ、趣意)と仰せです。

 冬から春に移りゆく時には、「春一番」という強風が吹く。その日だけ見れば、「風が強くて、嫌だな」と思うかもしれない。でも、その風は、春の到来を告げる希望の便りなんです。

 人間もまた、同じです。不安や苦しみ、悩みが出てくるからこそ、成長できる。「大変」だからこそ、大きく変われるんです。

 〝不安の風〟にひるまないで、一歩一歩、前へ前へ、進むんです。焦らなくていい。人と比べる必要もない。自分にしか歩けない道を、自分らしく、悠々と行くことです。

      

 ──「新年度になったので、新しいことに挑戦したいという気持ちはありますが、何をやればいいのか分かりません」という質問も寄せられています。

 

名誉会長 正直でいいね(笑い)。頑張りたいと思っていること自体、素晴らしいじゃないか。

 「新しい挑戦」「新しい自分になる」といっても、何か特別なことをやる必要はないんです。浮き足立って、自分を見失ってしまったら、もったいない。

 大いなる飛躍のためには、基本がしっかりしていることが重要です。着実な努力が根本です。そして、やれることから一つずつ挑戦していく勇気と粘りが大切です。

 今、創価学会の総本部が建設の真っ最中です。一昨年の2011年に工事が始まり、今年の秋には立派な建物が完成します。実は、その建物を支える基礎の工事、つまり土台造りに、徹底的に時間を費やしたのです。

 あの雄大な富士山も、広い裾野があるからこそ、悠然としている。美しい桜も、地中で大きく根っこを張っているからこそ咲き誇れる。

 人間だってそうです。立派な人は皆、人としての土台がしっかりしている。

 だから、みんなは、聡明な「基本第一のプリンス(王子)」「生活勝利のプリンセス(王女)」になっていただきたい。

 例えば、あいさつをしっかりする。朝ご飯をちゃんと食べる。忘れ物をしない。遅刻しない──。

 「なんだ、そんなことか」と思うかもしれない。しかし、「正しいことを繰り返しできる人」こそ、人生に勝利していける。人格も輝いている。

 野球の大バッターといわれる名選手も、基本の素振りをたゆみなく繰り返している。

 勤行・唱題にも挑戦してほしい。祈りは「心の栄養」であり、「生命の鍛え」です。自分の生命と宇宙のリズムを合致させていく、最も崇高な時間なのです。

      

 ──「変わりたいとは思うけどどう変わればいいでしょうか」という声もありました。

 

名誉会長 まずは、何か目標を立ててみよう。その際の大切な点は、「より具体的に」ということです。それを自分の見えるところに張り出しておくのもいい。

 「読書を頑張るぞ」と思っても、時がたてば、いつの間にか決意が薄れ、本を開くのも面倒になり、本を持っていたことすら忘れてしまう(笑い)。でも、「今月は、必ず、この本を読むぞ」と決めると、「一日あたり、どのくらい読めば読了できるか」が分かる。「じゃあ、10分だけ早く登校して、その時間に読めば、達成できる」など、目標達成への道筋が見えてくる。

 その目標が一日できれば、一日分の「人間革命」の物語が生まれる。それが、「自分は少しずつ成長している」という実感になる。

 「やればできるんだ」という自信にもつながるし、さらに先への挑戦の意欲にもつながる。

 「竹の節を一つ割れば、他の節もそれにしたがって割れるようなものである」(同1046ページ、通解)と御書にも仰せです。一点突破から、破竹の勢いが生まれる。

 また、目標は、あくまでも自分自身で決めよう。自分らしい努力でいい。誰かを見て、「私は大して頑張っていないんじゃないか」と悩む必要はない。「これだけやれれば、自分の勝利だ!」と言える目標でよいのです。

 創価学会の初代会長で、大教育者であられた牧口常三郎先生は、「あいまいな的に向かって放たれた矢が当たるわけはない」とおっしゃっている。祈りも、挑戦も、具体性が重要なのです。

     

 ──「第1志望でない学校に入学することになり、少しゆううつだ」という声もありました。

 

名誉会長 たしかに、不本意かもしれない。悔しい思いをしたことでしょう。でも、長い人生から見れば、その悔しさが大きな成長と大きな勝利につながります。

 挑戦したけれども、不本意な結果で終わった。それでも、挑戦したという事実は、厳然と残っている。へこたれず、再び、新たな不屈の挑戦を開始する人が、黄金の青春を勝ち飾るのです。

 挑戦の人を育てたいと思ったからこそ、私は創価学園創価大学をつくりました。そして、挑戦の心で受験してくれた人は、全員が学園生・創大生です。わが息子、わが娘と思っています。創立者として、私は心からの拍手を送りたい。また、ずっと見守り、題目を送り続けていきます。

 だから、自分は「この学校に行ってよかった」と言える学校生活を送ってもらいたいんです。皆さんなら、必ずそうできます。最高の笑顔で、胸を張って卒業できる、充実の日々を送れます。

 「春」は英語で「spring(スプリング)」です。これは、「跳躍」「バネ」「源泉」「青春」「湧き出る」「はじける」などの意味もあります。

 勢いよく、明るく楽しく、勇気と希望を胸中の泉から湧き出して、思い切りはじけるように出発する──それが「春」です。

 春だ! さあ行こう!

 新たな自分を発見する冒険へ!

 君よ、あなたよ、朗らかな挑戦と努力の博士たれ!

 

 『ローザ・パークスの青春対話』(高橋朋子訳、潮出版社刊)、『ローザ・パークス自伝』(同)を参照した。

 

【第13回】 君よ輝け! 世界を照らせ (2013.5.1)

 

創価」は幸福者の合言葉

 

フランスの大文豪 ロマン・ロラン

たった一人の善人の善は人類を照らすのです。ですから、

人類が善くなるか悪くなるかは、私たちひとりひとりにかかっている。

 

 ──新緑が輝く季節になりました。5月3日の「創価学会の日」、おめでとうございます。

 

名誉会長 おめでとう! 栄光の「5・3」を全国、全世界未来部の皆さんと共に迎えることができて、本当にうれしい。

 5月の青葉のように、未来部の皆さんが、きらきらと光り、生き生きと成長してくれていることが、私の何よりの喜びです。

      

 ──5月3日は、学会の永遠の原点です。1951年(昭和26年)のこの日、戸田城聖先生が創価学会の第2代会長に就任され、「75万世帯の達成」を叫ばれました。

 

名誉会長 その通りです。当時、学会員は3000人ほどしかいなかったんだよ。「75万」という数字を聞いても、誰もが“夢物語”だと思っていました。

 しかし私は、戸田先生の誓いを、わが誓いとして走り抜きました。

 あの地この地で、悩み苦しむ友を励まし、一人また一人、一緒に立ち上がっていきました。その一波が万波となって、恩師の願業であった75万世帯を達成したのです。

 

 ──1960年(同35年)の5月3日、池田先生は、戸田先生の跡を継ぎ、第3代会長に就任されました。それから半世紀以上、広宣流布という人類の平和と幸福の実現を目指し、世界中を駆け巡ってこられました。

 

名誉会長 今や、創価の連帯は192カ国・地域に広がりました。24時間365日、たえまなく地球に題目の声が響いているのです。戸田先生は、どれほど喜んでくださることでしょう。

 この5月3日は「創価学会母の日」でもあります。一番苦労して広布に尽くしてくださる婦人部の皆さんに感謝の心を込めて、学会の大事な日を、「創価のお母さん」を讃える日にしたのです。

 ぜひ、未来部の皆さんも、お母さんに、日頃の感謝を伝える日にして下さい。

 私と妻が親しく語り合った友人に、アフリカの“環境の母”ワンガリ・マータイ博士(ノーベル平和賞を受賞)がいます。博士も生涯、お母さんへの感謝を忘れない人でした。「モッタイナイ」という言葉に象徴される、生命と環境を慈しむ「母の心」を世界に広めたことで有名だね。

 博士は生前、5月3日を祝して、ビデオメッセージを送ってくさいました。その中で、太陽のようなスマイルを浮かべながら、語ってくださった姿が忘れられません。

 「私が世界中を訪問する中で、確信を込めて言えることは、旅先で幸福な創価学会メンバーにお会いしなかった場所は一つもなかったということです」「お会いした学会の皆様は、本当に幸せそうでした。あまりに幸せそうなので、私は『幸福』といえば創価学会メンバーを思い描くようになりました」

 世界のどこに行っても、私たちの同志の笑顔が輝いているんです。すごい時代になりました。

      

 ──「なぜ、創価学会は、ここまで世界中に広がったのですか」と、高等部の部長から質問が寄せられました。

 

名誉会長 鋭い質問だね。それは、「一人一人を徹して励まし、大切にしたから」です。

 悩む友がいれば、一目散に飛んでいって励ましを送る。共に祈り、共に前を向き、共に立ち上がる。そうして蘇生した友が、今度は、勇んで友を励ましていく──。

 世界192カ国・地域といっても、その実像は、一人から一人への“励ましの連鎖”であり、“人間革命の連続ドラマ”で成り立っています。これを「広宣流布」と言うのです。

 創価学会ほど、「一人」を大事にしている団体はありません。

 その中心になって頑張ってくださっている、仏にも等しい宝の存在が、皆さんのお母さん、そして地域の婦人部の先輩方なのです。

 

 ──「学会の素晴らしさを友達に語りたいのですが、どう説明すればいいですか」という質問もありました。

 

名誉会長 偉い。友達に教えてあげたいという心が、本当に尊い

 仏法や学会の素晴らしさを伝えるのに、「こう語るべき」という形式的なものはありません。日頃、座談会や部員会に参加したり、唱題したりする中で感じていることを、率直に、ありのままに話していけばいいんです。

 「いい人がたくさんいる」「みんな元気で明るい」「祈ると勇気が湧いてくる」「哲学が深い」──何でもいい。難しく考えなくて大丈夫だよ。

 そして未来部のみんなにとって、一番、良い“説明”があります。それは、「君自身、あなた自身が輝いていくこと」です。

 今は「勉学第一」「友情第一」で前進することが何より大切です。無理に語ろうとしなくても、君の頑張る姿が、学会の偉大さの実証になる。友を思いやるあなたの優しい心が、学会の思想の表現になる。みんなの輝く笑顔、負けじ魂で挑戦する勇姿、友を励ます声が、周囲を太陽のように照らしていくのです。

 そこで、フランスの大文豪ロマン・ロランの次の言葉を贈ります。

 「たった一人の善人の善は人類を照らすのです。ですから、人類が善くなるか悪くなるかは、私たちひとりひとりにかかっている」

 この通り、善の光で人類を照らしているのが、創価学会です。

 

 ──ロマン・ロランの不朽の名作『ジャン・クリストフ』や伝記『ベートーヴェンの生涯』は、未来部の読書感想文コンクールでも、よく読まれる名著です。

 

名誉会長 ロマン・ロラン(1866~1944年)は、私たちの初代会長である牧口常三郎先生と同時代を生きた人物です。

 彼の少年時代、祖国フランスはドイツとの戦争の敗戦などで、暗く息の詰まるような社会でした。その中で、ロラン少年は読書に希望を見いだし、大いに学び、力をつけている。

 人類愛の思想を訴えて戦争に反対し、迫害を恐れずに平和を叫び抜いた“戦う文豪”です。

 私も、若き日にロランの作品をよく読んだ。私が青春時代を過ごした終戦後の日本も、光が見えず混沌としていました。その中で、彼の魂の傑作は輝きを放ち、平和と自由の夜明けを告げたのです。

 

 ──『ジャン・クリストフ』については、かつて池田先生が創価大学で、「ああ、友といっしょにいさえすれば、苦悶までが喜びである!」などの言葉を通して、「友情こそ生涯の宝である」と語ってくださいました。

 

名誉会長 この世で最も尊く、信じられるものは、友情です。私もこの一点で、世界に対話の橋を架け、友情を広げてきました。

 ロマン・ロランは、若き日にトルストイの作品に感銘し、このロシアの大文豪と文通を重ねました。

 さらに、非暴力の英雄マハトマ・ガンジーや魂の大詩人タゴール、平和の信念の大科学者アインシュタイン博士、アフリカで医療に尽くしたシュヴァイツァー博士といった、偉大な指導者や知性と交流しました。世界を友情で結び、偏見や憎悪を乗り越えて“善の連帯”を広げることを願いました。

 このロランの夢を、私たち「創価」の平和と文化と教育の連帯は、実現しているのです。

 

 ──すごいことですね。

 ちょうど、未来部員から「『創価学会って何をしているの?』と友達に聞かれたけれど、うまく答えられなかった」という声が届いていました。

 

名誉会長 友達から、そう聞かれるのは、信頼されている証拠だよ。学会は世界規模だし、幅広い活動をしているから、一言で表現するのは難しいかもしれない。

 人々の幸福を願って仏法を実践する団体──それが創価学会です。あえて一言で言うなら、世界を元気にしているのです。

 仏法は人の振る舞いに表れ、人と人の間に脈動します。その真髄が「励まし」です。

 東日本大震災で、自身も被災しながら、友のために動く学会員の姿に、皆が涙しました。ここにこそ学会魂は燦然と輝いています。

 悩む人、苦しむ人に寄り添い、「大丈夫! あなたならできる」と励ましを送って、共に幸福の道を歩んでいく。その振る舞いに真の人間性が光り、最高の正義の道があります。みんなのご家族や、地域の先輩方の姿を見れば、納得できるでしょう。

      

 ──なかには、「学会の悪口を言われて悔しい思いをした」というメンバーもいます。

 

名誉会長 正義だからこそ、悪口を言われるんです。

 日蓮大聖人は、「愚人にほめられたるは第一のはぢなり」 (御書237㌻)と仰せになられた。

 牧口先生は「愚人に僧まれたるは第一の光栄なり」と言われた。

 これは、関西創価学園で話したことがありますが、ロマン・ロランも高校時代“いじめ”にあっていた友人を守り抜きました。

 それゆえ悪口も浴びせられた。しかし、卑劣な人間たちなど逆に軽蔑しながら、正々堂々と前進していった。「まっしぐらにぼくたちの道を行こうではないか」と。

 ロランと、この友人は、互いに切磋琢磨して、共に歴史に名を残す文学者となっています。

 草創期、学会は「貧乏人と病人の集まり」とバカにされた。

 「病気が治ってから来い」「お前が貧乏でなくなったら信心してやる」などと、心ない言葉を浴びせられた。でも、何と言われようが、前進をやめなかった。

 勇敢に信心を貫く中で、病気を治し、生活を好転させ、幸福を勝ち取っていった。自分だけではない。友の幸せを祈り、地域に、社会に尽くし、勝利の境涯を開いていった。この「人間革命の歴史」が、学会の誉れです。

 学会員ほど偉大な人はいない。私は、こう断言できます。

 今や、多くの世界の識者も、社会に貢献する立派な青年を育てる学会に、最大に賞讃の声を寄せてくれています。

 世界の知性と良識が、創価学会の味方なんです。

 

 ──「部活や友達との約束と、会合の日程が重なってしまった時、どちらを優先すべきですか」という問いがありました。

 

名誉会長 全部、自由です。

 その時の自分にとって、どちらが価値的かを自分自身で決めていくのも、大事な訓練です。ご両親や担当のお兄さん・お姉さんに相談するのもよいでしょう。

 学会の会合は、参加すれば必ず得るものがある。帰る時には元気になっている。たとえ、その時は分からなくても、命の中に何かが残る。何年も後になってから、あの時、参加していて本当に良かったと思うものです。

 そのうえで、友達との大切な約束や、部活の練習・試合を優先することだって、あるでしょう。

 信心は一生涯ですから、窮屈に考える必要はありません。

 ともあれ、未来の主人公は君たちです。次の学会を創るのは、まぎれもなく未来部のみんなです。

 5月3日が学会の永遠の原点の日ならば、5月5日の「創価学会後継者の日」は永遠の希望の日です。私は、祈り信じています。君の勝利を! あなたの幸福を!

 

 

【第14回】 いつも本とともに  (2013.6.1)

 

読書で新たな自分を発見!

 

ロシアの文豪 チェーホフ

書物の新しいページを一ページ、一ページ読むごとに、わたしはより豊かに、よりつよく、より高くなっていく

 

 

 ──6月は衣替えを行う学校も多く、未来部のメンバーは新たな気持ちで前進しています。

 

名誉会長 梅雨の時期だし、みんな体調に気をつけてね。

 衣替えの季節は、古来、着る服を見直すとともに、生活全般を見直してきました。その意味で“心替え”の意義があるといいます。

 仏法では、「月月・日日につよ(強)り給へ」(御書1190㌻)と仰せです。

 私たちの信心は、水が流れるように、春夏秋冬たゆまずに、いよいよ強く、前へ前へと進んでいく心です。

 

 ──雨ふりが多くて、イヤだなと思うこともありますが……。

 

名誉会長 そうだね。でも、大地から伸びゆく草木にとっては、恵みの雨にもなります。

 雨に洗われたアジサイやザクロなどの花も美しいし、雨の晴れ間に吹くそよ風も、すがすがしい。心ひとつで、楽しく賢くリフレッシュできます。

 

 ──アジサイは、開花していく中で多彩に色が変わることから、「七変化」とも呼ばれます。

 

名誉会長 私も折々に写真に収めてきました。

 アジサイの七変化は、土壌から吸収する成分の違いなどによって起こるようだ。

 さまざまな滋養を吸収して、みずみずしく成長して、見る人を驚かせ喜ばせる──未来部の皆さんの生命とも、響き合う花です。

 みんなは、“心の栄養”を存分に吸収しながら、自分らしい“使命の花”を咲かせ、多くの友にも笑顔の花を咲かせていける人になってもらいたいね。

      

 ──青春時代の“心の栄養”は、やはり読書で得られるものが多いと思います。メンバーから寄せられる質問にも、読書に関するものが多数あります。

 

名誉会長 大事だ。読書は、青春勝利の飛躍台であり、人生の全ての土台です。知識を蓄え、知恵を湧かせる泉です。自分の世界を大きく広げ、心を豊かにし、頭脳を鍛える道場です。

 本は“世界旅行の切符”です。地球のどこにだって、瞬時に飛んでいける。アジア、ヨーロッパ、アフリカ、南北アメリカオセアニアの世界五大州、北極や南極、そして宇宙までも、冒険できる。

 また本は、ポケットに入る不思議な“タイムマシン”です。群雄割拠の三国志の時代やジャンヌ・ダルクの活躍の舞台へも行ける。未来社会を生きることもできる。

 さらに本は“偉人との対話の広場”です。ゲーテトルストイと友人になれる。ナイチンゲールキュリー夫人があなたの味方になる。ガンジーやキング博士が君の背中を押してくれる。

 時間や空間を超越し、未知の次元の世界を知ることができる。旅行の荷造りはいらないし(笑い)、お金がなくても大丈夫(爆笑)。

 いつでも、どこでも、本さえあれば、目の前にパッと新しい世界が広がる。こんなに便利な宝が、皆さんの手の届くところにある。

 

 ──読書が苦手なメンバーもいます。「親から『本を読みなさい』と言われるのですが、すぐに飽きてしまいます」と……。

 

名誉会長 苦手に挑戦していることが偉いじゃないか。それでいいんだ。いつか必ず、楽しく読めるようになるよ。

 途中でやめてもいい。読もうと思っだけど、気持ちが変わって読まずに積んでおいてもかまわない。これを“積ん読”と言うんだよ(笑い)。

 別の本が読みたくなったら、それを読めばいい。何年かたってからの方が、すっと読める場合もある。本との出合いも、つきあい方も、人それぞれです。堅苦しく考える必要はないんです。

 大切なのは、少しでも本に触れる習慣をつけることです。

 まだ読んでいないけれど、「読みたい本」がたくさんあるというのは、読んだのと同じくらい大切です。だから、図書館や本屋さんへ行って、手に取るだけでも、新聞やインターネットの本のページを見るだけでもいい。友達と本を話題にするのもいいね。「読んでいた本、面白かった?」と。

 本を目にしたり、本に触れたり、本の話を聞いたりすれば、興味が湧いてくる。読みたいと思える本にも、きっと出合えます。

 そして、いい本を読んだ人は、確実に向上していきます。

      

 ──受験勉強を優先させねばならなかったり、部活で疲れてしまったり、いろんな事情でなかなか本が読めない場合もあります。

 

名誉会長 読みたい本を増やして、一生かけて読んでいけばいい。本を読んだ分、何倍もの人生を生きられます。

 読むことは生きることであり、生きることは読むことなのです。

 今回は、私が青春時代に戸田先生と学んだ、ロシアの文豪チェーホフの言葉を贈りたい。

 「書物の新しいページを一ページ、一ページ読むごとに、わたしはより豊かに、よりつよく、より高くなっていく!」

 

 ──チェーホフは、ロシアを代表する作家で、『桜の園』 『かもめ』などの戯曲が有名です。青春時代は、家が破産し、一家を支えるために、大学に通いながら雑誌に寄稿を続けた苦労人でしたね。

 

名誉会長 その通りです。チェーホフは小さいころから、父が営む食料雑貨店を手伝いました。休みはなく、思うように勉強できず、たびたび病気にもかかっています。父の雑貨店が破産してからは、学びながら家庭教師として働いた。当時、16歳です。

 しかし、かけがえのない楽しみがあった。新しくできた図書館に通い、読書にふけることです。食事を取るのも忘れるほど、胸を高鳴らせて、ユゴーショーペンハウアーらの作品を読んでいったのです。苦難の中で読書を重ねたことで、心は大きく、強くなり、学力もついた。やがて、世界中を魅了する作品を、次々と生み出す作家になれたのです。

 

 ──池田先生も、青春時代、逆境の中で読書を重ねられました。

 

名誉会長 第2次世界大戦が終わったのは、私が17歳の時です。

 価値観が崩壊した時代でした。青年は皆、「正しい人生とは何か」「真の幸福とは何か」を探し求めていました。私も、その答えを求め、名著をむさぼり読んだ。病弱な体で働きながら、少しずつお金をため、古本屋へ飛んでいった。欲しかった本を買えた時のうれしさは、今も忘れられません。

 戸田先生の経営する会社で働き始めてからも、読書をやり抜いた。恩師の事業の苦境を一身で支えながら、日々、書物と格闘していった。疲れ果てて帰宅しても、必ず本を開きました。

 戸田先生は、私の顔を見るたび、「今、何を読んでいるか」と聞かれました。「あの本は読んだか」「この本はどうだ」と、内容や感想も鋭く尋ねられました。一つ一つが大切な訓練でした。あの日々があったからこそ、読書の真髄を知り、本当の力を養うことができたんです。

 牧口先生と戸田先生は、日本の軍国主義に反対し、投獄されました。

牢の中の環境は劣悪です。その牢獄でも、お二人は読書をやめなかったのです。牧口先生はこ高齢の身でありながら、向学の炎を燃やし続け、獄死の直前までカントの哲学を学ばれました。戸田先生も、多くの本の差し入れを頼まれています。

 どこでも学べる。みんなには、思いっきり勉強してもらいたい。読書にも、心ゆくまで励んでもらいたいんです。

 

 ──「忙しくて、なかなか本を読む時間がとれません」というメンバーもいます。

 

名誉会長 確かに、今の中高生は忙しいね。だけど、時間があれば読書ができるとも限りません。むしろ、読書家の多くは、多忙な人が多い。私が語り合ってきた世界の指導者や識者も、皆、激務の合間を縫って書物を読んでおられました。

 忙しいなら、「ほんのちょっと」の時間を、有効に活用していくことです。電車での移動中、朝の10分、待ち時間の5分……。

 私は墓地に行って読んだこともある。静かでいいんだよ(爆笑)。

 ともかく、「本を読もう」という小さな積み重ねが、やがて大きな財産になる。1ページでも、数行でもいいんだ。

 チェーホフの言う通り、そのたびに、君は強くなっている。あなたの心は豊かになる。

 カバンの中に、常に本を入れておくことも一つの方法だね。空いた時間は、パッと本を取り出す。そうすれば、時間もうまく活用できるようになります。

      

 ──読書の“質”に関する質問も寄せられています。「どのような本を読めばいいでしょうか」「たくさんの本を読みたいけど、読むのが遅くて、なかなか進みません」等です。

 

名誉会長 読書に慣れてきたら、ぜひ、世界の名著に挑戦してほしい。私も戸田先生から、常に「長編を読め」「古典を読め」と言われました。時代を超えて読み継がれている名著には、やはり、くめども尽きない哲学や知恵が輝いています。必ず、みんなの人生に大きな力を与えてくれる。

 何を読めばいいか、担当の方々や学校の先生に聞いてみるのもいいでしょう。

 たとえ一冊でもいい。偉大な作品を深く読んだ人は、人類の英知を自分のものにし、大いなる希望を見いだすことができる。一生涯の友人を得たようなものです。

 

 ──今はインターネットや携帯などが日常的に使われ、総体として“活字”に触れる機会は、むしろ増えているといわれます。「文字や情報に触れる機会は多いから、無理して本を読まなくてもいい」という意見もあります。

 

名誉会長 もちろん、新しい情報に触れることも必要でしょう。

 しかし一番、大切なことは、「考える力」を養っていくことです。それは、「言葉にする力」と言ってよい。情報に翻弄されるのではなく、逆に情報を生かしながら、自分の気持ちや考えを、自分の言葉にして練り上げていくことです。

 戸田先生は常々、「青年よ、心に読書と思索の暇《いとま》をつくれ」と語っておられました。

 名著は人類の共通の財産です。それを心に刻んでおくことは、どんな人とも自在に語り合える力になります。

      

 ──以前、池田先生が、難局に立ち向かうゴルバチョフソ連大統領に、チェーホフの『桜の園』の一節を贈って励まされたことを思い出します。

 青年主人公の言葉で──「人類は、至高の真理、至高の幸福をめざして進む。そして、我はその先頭に立つ!」と。

 大統領も、「胸に染みる言葉です」と心から喜ばれていました。

 

名誉会長 皆さんは、一人ももれなく21世紀を担い立つリーダーです。

 本を読み、本と語らい、本と格闘し、本と友情を結んでいく──その努力を続けながら、思う存分、世界に羽ばたいていってください。いつも本とともに!

 

 『チェーホフの言葉』(佐藤清郎訳編、彌生書房刊)、アンリ・トロワイヤ著『チェーホフ伝』(村上香住子訳、中央公論社刊)を参照した。

 

 

【第15回】「正義の走者」は進む!          (2013.7.1)

 

――7月21日から「未来部躍進月間」がスタートします。「読書感想文コンクール」や「英語スピーチコンテスト」の応募も始まり、皆、決意に燃えています。

池田名誉会長 10代の夏は、まさに生命が「躍進」するチャンスです。みんなが健康で、事故なく、 “挑戦の夏” “充実の夏” “成長の夏”

を送ってくれるように、私も祈っていきます。

 

──女子未来部のメンバーからこんな質問が届いていました。「学会員は、なぜ、あんなに 『人のため』

に頑張れるのですか?未来部担当のお姉さんは、仕事で疲れているにもかかわらず、私たちに会いに来て、笑顔で励ましてくれます」と。

 

名誉会長 うれしい質問だね。

担当のお姉さんに感謝し、体調まで気づかってくれる心が、優しくて美しい。

21世紀使命会をはじめ、未来部の成長に真剣に尽力してくださる方々がいるからこそ、学会は盤石です。

担当の皆さん方が、みんなに会いに来てくれる理由、それは「真心」です。

悩みを聞いて一緒に祈りたい。

目標を聞いて、共に勝利したい。

毎日、元気でいてほしい。

日々、前進できるように応援したい……。

みんなの頑張る姿が、末来部担当者の喜びです、みんなが成長してくれれば、それだけでうれしいんだ。ホントだよ。

こうした「人のために」という真心を、仏法では「菩薩界の生命」と言うんです。

 

──仏法では、私たちの中に10種類の生命が具わっていると説かれます(地獄界・餓鬼界・畜生界・修羅界・人界・天界・声聞界・縁覚界・菩薩界・仏界)。

その9番目が、正しい法を求め、人のために尽くそうとする「菩薩界」という生命ですね。

現代化学の父・ポーリング博士は、池田先生がアメリカのクレアモント・マッケナ大学で行った講演「新しき統合原理を求めて」に感銘を受け、アイ・ライク・ナンバー9(私は9番目の菩薩界が大好きで)と言われていました。

 

名誉会長 そうだったね。

この「菩薩界の生命」は、題目をあげると、ぐんぐんと湧き出してくる。

ゆえに学会員は、自分が大変でも、人のために行動できる。その清らかで力強い生命を発揮して、周りの人の心を励まし、元気づけることができるのです。

日蓮大聖人は、菩薩の心を、「自分のことは差し置いても、他人のことを大事にする」「まず、周りの人を幸福にして、その後に自らの幸福を願う」(御書433㌻、趣意、「十法界明因果抄」)と教えてくださっています。

まさしく、担当者の方々の実践であると、私は讃えたい。

これは、皆さんのお父さんやお母さんも同じです。自分の時間や体を使って、人の幸福のために、祈り、語り、行動している。

時に、無理解な批判があろうとも、勇気を奮い起こして前進する。菩薩の信念が、生き方そのものになっているのです。

「自分さえよければいい」という風潮の社会にあって、これは、奇跡とも言うべき尊い姿です。

学会員こそ、「真心の勇者」なんです。

私が青春時代から愛読してきたロシアの大文豪トルストイは、自らの哲学をこう記しています。

「この人生における疑う余地のないただひとつの幸福は、他人のために生きることである」「われわれは他人のために生きたとき、はじめて真に自分のために生きるのである」

人生の真髄を表現した叫びです。今回は、この言葉を皆さんに贈りたい。

もしも、トルストイが、菩薩の道を進む創価の未来部の友と会ったならば、どれほど喜ぶことか。

 

──池田先生には、トルストイの玄孫(ひ孫の子)に当たるウラジーミル氏から、第1号の「トルストイの時代」賞が授与されています。

トルストイは、恵まれない人々に手を差し伸べた “人間愛のペンの勇者” です。 『戦争と平和』 は、世界最高峰の文学作品として有名です。

 

名誉会長 トルストイは、当時、奴隷のような扱いを受けていた農民の子どもからのために学校を創ったり、飢饉で苦しむ人々に、食糧を配るために被害地を回り、多くの給食所を設けたりするなど、民衆のために菩薩の行動を続けました。

その原点は、少年時代にあります。2歳になる前に母が亡くなり、9歳の年には父も他界しました。父母を失った彼に愛情を注いでくれたのは、遠い親せきのタチヤーナ・ヨールゴリスカヤ小母さんでした。

実の母のように深い愛情で接してくれる小母さんに、トルストイ少年は、感謝の詩をささげます。

「あなたがしてくれたことのすべてを わたしは知っています」

小母さんの「人のために」生きる心が、トルストイの一生涯の行動の力になったと、私は思う。

 

──「恩を忘れない」ということですね。ただ、「人のために行動するということは、自分を犠牲にすることなんでしょうか?」という質問もありました。

 

名誉会長 大事な問いだね。

「自分だけ」では、利己主義です。逆に「相手だけ」では、自己犠牲になる。そうではなく、自分も、相手も、一緒に喜び、成長し、幸福になっていく。これが、本当の喜びではないだろうか。

日蓮大聖人は、「喜とは自他共に喜ぶ事なり」(同761㌻、「御義口伝」)と仰せです。

「人のため」とは、相手を喜ばせてあげることです。相手が喜べば、自分も楽しい。充実がある。張り合いがある。生きがいがある。それは、自分のことしか考えてない時の喜びとは、比べものにならないほど、大きくて深い喜びなのです。

「他人の不幸のうえに自分の幸福を築くことはしない」──これは、私が関西創価学園生に贈った指針です。

互いに喜び、自分も他人も、大歓喜に包まれて幸福に生きる──そのために、人生はあるんです。

御書には、こうも説かれている。「人のために灯をともせば、自分の前も明るくなる」(1598㌻、通解、「食物三徳御書」)

人のためにする行動は必ず。自分のためにもなる。何よりも、自分の生命が明るく光り輝きます。

真に「人のために」生きることは、強く賢く、自分も他人も大切にしていく生き方なんです。

こうした幸福観を社会に広げているのが、私たち創価学会です。

 

──「今は、自分のことだけで精いっぱいなのに、友達のことを思えるような人になれるのでしょうか」という声もありました。

 

名誉会長 もちろん、今、皆さんにとって大切なことは、自分自身を鍛えることです。背伸びをする必要は、まったくありません。

その上で、身近なところから、自分が今できることを、無理せず行っていけばいいんです。

誰の生命にも、菩薩界があります。それが縁にふれて現れる。例えば、重い荷物を抱えているおばあちゃんを見たり、困っている友達がいたりすると、

何とか助けてあげたいな” と思う。

そこには「菩薩界の生命」が輝いている。ふだんよりも、もう少しだけ勇気を出せば、慈悲(思いやり)の心は出てくるのです。

戸田先生は「慈悲といっても、なかなか出ない。慈悲に代わるものは勇気である」と言われました。

この勇気の扉を開く鍵が、妙法の題目です。「菩薩界の生命」を、いつでも、どこでも、どんな時でも、みんなの胸中から引き出してくれるのです。

 

──過日、福島県の男子高等部員が、友人と共にロボット開発のコンテストに挑みました。このチームは国内予選で1位、日本代表として6月の世界大会に出場し、各国の大学生らと競って堂々の第2位に輝きました!

彼らが考えたのは「遠隔操作のできる探査ロボット」です。原発事故を収束させるために役立つロボットを作りたい、という思いだったと伺いました。

 

名誉会長 すごいね。おめでとう! 本当にうれしい!

人の役に立とうと真剣に立ち上がる時、人間は生き生きと輝く。その「勇気」が「慈悲」となる。その「慈悲」から「智慧」が湧く。

私が対談を重ねたアメリカの大経済学者ガルブレイス博士も、「他者への思いやりこそ、人間を動かす最も大切な原動力である」と結論されています。

人のために生きる人は、その時は、苦労が多くて損をしたように見えることがあるかもしれない。

しかし、間違いなく「心の財(たから)」を積んでいるんです。絶対に幸福勝利の人生を飾ることができる。

東日本大震災で、「人のために」という生き方の尊さと誇りを、わが東北の友は厳然と示してくださった。私たちは断じて忘れません。

 

──「将来、人類に貢献する仕事をしたい」「悩んでいる友達の力になりたい」というメンバーもたくさんいます。とともに、「 『人のため』

という言葉はスケールが大きくて、具体的にどうすればいいのか、よく分かりません」との相談が寄せられています。

 

名誉会長 「どうすれば人のためになるのか」と考えること自体、偉大な人生の具体的な一歩です。

結論から言えば、仏法者である私たちは、まず、友の幸せを祈って題目をあげることができる。そこから湧きあがる勇気と思いやりの心で、友に接していくことです。

日々の生活に当てはめれば──

教室に一人でいる友達がいれば、一言。声をかけてみる。下を向いている人がいれば、笑顔で明るくあいさつしてみる。

落ち込んでいる友を励ます方法だってさまざまです。「大丈夫だよ」と言ってあげる。側にいてあげることだって、すごい支えになる。小さいことのように思えるけど、そうした真心が、実は一番、大きな力になるんだよ。

 

──この7月で「正義の走者」(現・未来部歌)が誕生して35周年を迎えます。世界のため、人類のため、青年のために行勤し抜いてこられた池田先生の後継として、未来部はこれからも、正義の道を走り抜いてまいります。

 

名誉会長 「正義の走者」が発表された時の未来部は、みんなのお父さん、お母さんたちの世代です。私は3番の歌詞に──

「花の輪広げん 走者なり

ああ柱たれ 我らの時代の」

と記しました。

末来部のみんなにも、家庭で、学校で、地威で、そして世界で、笑顔の花、対話の花、喜びの花を大きく広げていって欲しい。

そして、皆から頼りにされる、時代の柱になってほしい。これがが永遠に変わらない、私の祈りです。

 

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トルストイの言葉』 (小沼文彦訳、彌生書房刊)、トルストイ 『文読む月日(上)』 (北御門二郎訳、筑摩書房刊)、 『トルストイの生涯』

(人見楠郎、小波宏全、油屋みゆき編)、 『トルストイ研究』 (法橋和彦編、河出書房新社刊)を参照した。

 

 

【第16回】 「平和の種」を蒔く人に(上) 2013-8-1

 

――この夏、全国で「創価ファミリー大会」が開催されます。未来部メンバーが中心となって、企画も運営も担っていきます。

 

池田名誉会長 頼もしいね。

私も心を躍らせて見守っています。暑い中、本当にご苦労さま!

熱中症や交通事故などに気をつけて、楽しく有意義に行ってください。担当者、また役員の皆様も、大変にお世話になります。

 

──ファミリー大会では、「平和」について学ぶコーナーを設けるところもあります。

 

名誉会長 大事だね。「平和のバトン」が、しっかりと未来へ受け継がれていく。これ以上の希望はありません。

戦争を推し進めた軍部政府と戦って獄死された牧口先生、共に獄に入られた戸田先生も、どれほど喜ばれることか。

 

──池田先生は小説 『人間革命』 を、こう書き始められました。

 

戦争ほど、残酷なものはない。

戦争ほど、悲惨なものはない。

この一節を学んだメンバーから、「池田先生の戦争体験を教えてください」というお願いがありました。

 

名誉会長 若い読者からの一番大事な質問です。著者として真剣に答えないといけません。

1945年(昭和20年)の8月15日、日本が終戦を迎えた日、私は17歳でした。まさに高等部の皆さんの年代です。

戦争は、私たちの青春をめちゃくちゃにしました。

わが家は、今の東京・大田区で海苔の養殖・製造をしていましたが、働き盛りの4人の兄が次々に軍隊にとられ、一家の柱である父はリウマチを患(わずら)い、家業は傾いてしまいました。母はグチ一つこぼしませんでしたが、その苦労は並大抵ではなかったと思います。

幼い弟や妹もいるので、私は家計を助けるため、海苔作りの手伝いをし、新聞配達もしました。

当時の国民学校を卒業すると、近くの鉄工所で働き始めました。14歳だから、今の中等部の皆さんの年代だね。進学したかったのですが、かないませんでした。戦争の悪は、若い人から学ぶ機会を奪うことにもあります。

その上、私は結核にかかり、戦時中なので、十分な治療が受けられず、ずいぶんと苦しみました。

父母が苦労してつくった立派な家は、戦争が近づくと人手に渡り、やがて軍需工場になりました。引っ越した家も、空襲が激しくなると、強制疎開といって、また明け渡さなければなりませんでした。

ようやく、おばの家の敷地に建て増しをして、いよいよ明日から、そこで暮らせるという夜、突然の空襲で焼夷弾が直撃して全焼してしまったのです。すべてを失いました。辛うじて運び出した荷物箱から出てきたのは、妹のひな人形でした。

家族が意気消沈したその時、母が明るい声で言いました。「このおひなさまが飾れるような家に、きっと住めるようになるよ!」

母は偉大です。その一言で、皆の心に希望の光がともりました。

 

──戦争が終わった時は、どういう実感があったのでしょうか。

 

名誉会長 平和とは「こんなに静かなものなのか」と思いました。突然の空襲警報のサイレンも、爆撃機の爆音も、気に病む必要がなくなったからです。

そして、「こんなに明るいものか」と思いました。戦争中は夜でも灯火管制といって、家も街も暗かった。母は「明るいねえ。電気がついたよ。明るいね」と声をはずませて夕食の支度をしてくれました。

父も母も、軍隊に行った兄たちを待ちわびていました。三男、四男、次男と、命からがらの姿で帰ってきたのは、その翌年です。

しかし、終戦から2年がたとうとしていた5月、ただ一人、消息不明だった一番上の兄の戦死の報せが届きました。私の大好きな兄でした。背中を震わせて悲しみをこらえていた母の姿を、私は忘れることができません。

戦争は、始まってしまえば、悲劇しかありません。「平和を築くための戦争」なんて、私は信じない。戦争が終わっても、地獄の苦しみは、ずっと続きます。わが家だけでなく日本中の多くの家族が、その苦しみを味わいました。それは、アジアでも、世界でも。

ゆえに、戦争は絶対悪なのです。私は戦争を心から憎みます。

戦争を引き起こす魔性を断じて許さない──私はこう誓ったのです。

 

──そんな折、人生の師となる戸田先生と会われたのですね。

 

名誉会長 そうです。兄の戦死の報が届いてから3カ月後の8月14日、暑い夏の夜でした。

社会は混乱を極めていよした。正しく生きゆく「青春の道」を必死で求めていた19歳の時です。

友人と共に参加した学会の座談会の会場に入ると、度の強いメガネをかけた壮年が、20人ほどの人に囲まれて話をしていました。

「私はこの世から一切の不幸と悲惨をなくしたい」──情熱に満ちた戸田先生の声が、会場に響いていました。

先生が、その時、講義されていたのは、日蓮大聖人の「立正安国論」でした。世の中を平和にするには、一人一人の心に、正しい哲学を打ち立てねばならない、という内容の御書です。

講義が一段落した時、私は先生に、「正しい人生とは、いったい、どういう人生を言うのでしょうか」と質問しました。

戸田先生は、まるで昔から私のことをご存じのように、温かく包みながら、答えてくださった。

そして、「大聖人の仏法を実践してごらんなさい。青年じゃありませんか。必ずいつか、自然に、自分が正しい人生を歩んでいることを、いやでも発見するでしょう」と語られたのです。

難しい宗教のことは分かりませんでしたが、 “この人なら信じられる” と思い、10日後の8月24日に入信して、師弟の道を歩み始めました。暑い暑い日曜日でした。

以来、66年──。戸田先生の教えのままに、私は対話を武器に、世界中に「平和の種」を蒔(ま)き続けてきました。

 

──あるメンバーから、「平和というとスケールが大きくて、何をすればいいのか分かりません」という質問が寄せられています。

 

名誉会長 「平和」とは、何なのか──そうやって考えていく、若き誠実なら心こそ、平和の源泉です。今は、はっきりと分からなくとも、粘り強く求め続けていくことが、平和の波を起こすんです。

戦争の本質は「暴力」です。国や民族の間の大きな争いから、「いじめ」にいたるまで、現実には有形無形の暴力がある。ゆえに、「いじめ」をなくそうと祈り、努力する君は、すでに平和の創造者です。平和は、自分の勇気から始められるのです。

政治や外交、経済の次元などで平和を考えるのも、もちろん大事でしょう。しかし、それを動かしているのは、人間です。「平和」をつくるのは「人間」です。

結局は、一人一人の「平和の心」を育む以外に、平和への確かな道はありません。

 

──「なぜ戦争は起きるのか」という率直な疑問がありました。

 

名誉会長 日蓮大聖人は、「瞋恚(しんに=怒り)が激しくなれば、その国土に戦争が起きる」(御書718㌻、通解、「御義口伝」)と仰せです。

自己中心的な「怒りの心」が戦争を引き起こす元凶であると、見抜いておられるのです。

怒りは、「貪・瞋・癡」(とん・じん・ち=むさぼり・いかり・おろか)という生命の「三毒」の一つです。そうした “毒”

はびこってしまえば、社会は乱れ、争いが絶えなくなります。

それに振り回されず、幸福と平和の方向ヘリードしていく、強く正しく賢い生命が「仏界」です。

人間の尊い心を信じ、全てから希望を創造していこうとする仏の生命です。それは「絶対にあきらめない生命」ともいえましょう。

この生命が、一切の人に具わっていると説くのが、私たちが実践する仏法です。

自分には、何より尊い生命がある。目の前の人にも、自分と同じ尊極の生命がある。だから、自分の生命も、他者の生命も絶対に大切にしよう──これこそ、戦争を食い止める思想です。どこの国の人であれ、どの民族の命であれ。

この「生命尊厳の思想」を、世界精神に高めていくことが、現代の「立正安国」です。

仏界は、題目を唱えていくことで、わが生命からこんこんと湧いてきます。

そうして湧き出(いだ)した勇気と希望と智慧を武器に、皆の心に励ましの光を送っていく。尊極の生命があることに共に目覚めていく。友のため、地域のため、社会のため、平和のために、わが学会員は、最も尊い地涌の菩薩として、立正安国の対話をしているのです。

「平和」とは──

絶望を希望に変える、間断なき闘争です。

人間への信頼を断じて手放さない、不屈の根性です。

自他共の生命を最大に尊重する、人間の讃歌です。

今回は、私の友人である現代化学の父ライナス・ポーリング博士の、信念の言葉を贈りたい。

「世界には軍車力や核爆弾という悪の力よりも更に偉大な力がある。善の力、道徳や、ヒューマニズムの力である。私は人間の精神の力を信じる」

 

──博士は、ニュートンダーウィンアインシュタインと並び、最も偉大な科学者の一人として讃えられています。平和運動家としても活躍され、池田先生と対談集を発刊されました。

先生の講演に参加された際には、なみいる一流の識者を前に「私たちには、創価学会があります!

そして宗教の本来の使命である平和の建設に献身される池田SGI会長がおります!」と宣言されていました。

 

名誉会長 博士は、私たちを信頼し、平和の闘争を託してくださった。4回にわたってお会いし、人類の未来について語り合ったことは、忘れ得ぬ歴史です。

博士は一貫して核兵器に反対し、核実験を推進する政府から迫害を受けた。それでも、 “人間を苦しめるものは、断じて許さない!”

と、多くの論文を書き、講演を重ね、平和への方途を示し続けました。

なぜ博士が、苦難に負けず、行勤し続けることができたのか。

幼少期は病気がちで、家計も苦しかった。9歳の時には父が亡くなりました。博士は、学校に通いながらアルバイトに励み、一家を支えていきます。大学進学後も、仕送りを続けながら、執念で勉学の日々を重ねていったのです。

「人間はやればできる」──若き日の奮闘の中で、博士はこの確信をつかみとったんだね。

博士は、弾圧にも屈しないで、勇敢に堂々と、平和の信念を叫び抜きました。その博士を陰に陽に支えたのは、奥さまの存在です。奥さまは “平和の同志” でありました。

心から信頼し、共に行動する同志がいる。仲間がいる──これもまた、平和の源泉なのです。

私には、平和のために戦う同志が世界中にいる。

そして何より、「平和のバトン」を託す未来部の君たち、あなたたちがいる──これが、何よりの誇りであり、喜びなのです。

 

ポーリング著 『ノー モア ウォー』 (丹羽弥太訳、講談社刊)

 

 【第17回】 「平和の種」を蒔く人に(下)(2013.9.1)

 

「勇気の一歩」で世界は変わる

 

平和の文化の母 エリース・ボールディング博士

平和は、お互いが日常的に助け合うなかにあります。家庭、そして地域社会こそが、きわめて重要な平和の出発点なのです

 

 ──前回の「未来対話」を読んだ未来部員から、決意の声がたくさん寄せられています。

 「戦争で、不幸になる人はいても、幸せになる人は1人もいないことを、あらためて学びました。

 自分の生命も、他者の生命も大切にするという、当たり前だけど一番重要なことから、行動していきます」ともありました。

 

名誉会長 うれしいね。みんながいるから、世界は絶対に良くなる。これが私の確信です。

 君の誠実な決意の中に、平和の炎が燃えている。あなたの真剣な祈りに、人類の未来が輝いている。若くして生命尊厳の仏法を持《たも》ち、平和を目指して学び続ける、みなさんこそ、何よりも尊い世界の希望です。

      

 ──「ポーリング博士(ノーベル化学賞・平和賞を受けた科学者)」の姿を知り、平和のために戦う人が迫害されることに、憤りを感じました。池田先生も同じです。先生は、なぜ、迫害の連続の中、世界平和の闘争を続けることができたのでしょうか」という質問がありました。

 

名誉会長 君の憤りは、まさに「正義の怒り」です。

 日蓮大聖人は「瞋恚《しんに》(怒り)は善にも悪にも通ずる」(御書584㌻、通解)とご指南されています。

 前回、自己中心的な「怒り」が戦争の原因であることを、御書を拝して学びました。こうした悪に通ずる「怒り」がある一方、「怒り」は善にも通ずると仰せです。

 それは、生命という最も尊厳な「宝」を傷つける魔性への「正義の怒り」です。これこそ、平和の出発点と言えるでしょう。

 私の恩師・戸田城聖先生は、悪に対しては、それはそれは激しく憤怒された。なかんずく、最も正しく、最も偉大な師匠・牧口常三郎先生を獄死させた軍国主義への怒りは、烈々たるものでした。

 この正義の怒りに貫かれた「原水爆禁止宣言」が、私たちの平和運動の大いなる原点です。

 1957年(昭和32年)9月8日、神奈川で開催された青年部の体育大会で、戸田先生は不滅の宣言を発表されたのです。

 先生は断言されました。「われわれ世界の民衆は、生存の権利をもっております。その権利をおびやかすものは、これ魔ものであり、サタンであり、怪物であります」

 あらゆる戦争や核兵器は、人間の心の中に潜む魔性の現れであると、先生は見抜いておられました。その魔性を打ち砕いて、民衆の生命を守り抜くために、ご自身の命をかけて師子吼されたのです。

 そして、この「核兵器を使用した者は魔物である」という思想を世界に広めゆく大使命を、青年に託されました。

      

 ──核兵器廃絶を目指す科学者の連帯「パグウォッシュ会議」の創設者・ロートブラット博士は、戸田先生を「平和の英雄」「平和の殉教者」と讃えておられました。そして池田先生に、「今、私たちは、非常に厳しい状況にあります。この状況をなんとか抜け出さなければなりません。池田先生に、そのためのリーダーシップをとってもらいたいのです」と語られました。

 

名誉会長 ロートブラット博士は、世界的に有名な「ラッセル=アインシュタイン宣言」(核兵器と戦争の廃絶を訴える世界的科学者たちの共同宣言)に、ポーリング博士たちと一緒に署名した偉大な科学者でした。宣言には、こうあります。「私たちは、人類として、人類に向かって訴える──あなたがたの人間性を心に止め、そしてその他のことを忘れよ、と」

 人間性に焦点を当てた宣言は、戸田先生の「原水爆禁止宣言」の精神と深く響き合うものです。

 恒久平和は、制度や法の整備だけでは築けない。どこまでも、人間自身の心に「平和の砦」を築き上げることが、一切の根本です。

 戸田先生は、民衆をこよなく愛した偉大な指導者でした。地上から「悲惨」の二字をなくすために立ち上がった平和の師子王でした。邪悪を断じて許さない正義の大英雄でした。ゆえに、一人を徹して励まし、尊い使命を教えていかれたのです。

 「原水爆禁止宣言」を聞いたあの日、私の心は燃えました。先生の弟子として、師の信念を一生涯、世界中に広め抜いていくのだ、と。

 以来、私は世界中を駆け巡り、人類を結ぶ対話を繰り広げてきました。各国の指導者と語り合い、核兵器の悲惨さを訴える展示も行っています。平和と幸福の社会を築くため、恩師の精神を広めるため、無理解の中傷を浴びようが、行動し続けてきました。

 海も前に進めば、荒波が立つ。山も高く登れば、烈風が吹く。

 「正しいこと」をしようとすれば、反対や圧迫があるのは、当然です。全部、分かっていました。しかし、恩師との誓いを断固と果たす。これが私の人生ですから。

      

 ──1975年(昭和50年)1月26曰、SGI(創価学会インタナショナル)が発足しました。その際、池田先生は、51カ国・地域の代表に「皆さん方は、どうか、自分自身が花を咲かせようという気持でなくして、全世界に妙法という平和の種を蒔いて、その尊い一生を終わってください。私もそうします」と述べられました。

 

名誉会長 今、その「平和の種」は、世界192カ国・地域で、花となって開き始めました。

 いよいよ爛漫と咲き薫らせていくのが、未来部のみなさんです。

 種は小さい。華やかさはない。誰も見向きもしないかもしれない。でも、夏の暑さや冬の寒さにも、じっと耐え、時を待って、芽を出し、大輪を咲かせる。平和の行動だって、同じです。

 その意味から、私の大切な友人で、「“平和の文化”の母」と讃えられたエリース・ボールディング博士の言葉を贈りたい。

 「平和は、たんに危機に対処するだけではなく、お互いが日常的に助け合うなかにあります。家庭、そして地域社会こそが、きわめて重要な平和の出発点なのです」

 

 ──博士は、国際平和研究学会事務局長、国連大学理事などを務め、第2次世界大戦の中でも、平和の闘争に走り抜かれました。5人のお子さんを立派に育てられながら、平和運動の推進に尽力された“平和の母”です。

 先生と対談集『平和の文化」の輝く世紀へ!』を残されました。

 

名誉会長 この偉大な博士が手本とされたのも、ご自身のお母さんでした。

 博上が幼いころ、近所に老人ホームがあり、博士のお母さんは、そこの方々をいつも気遣っていた。時には、幼い博士を連れて行き、皆の前で歌を歌わせたり、ダンスを踊らせたりしました。

 そうした母の振る舞いから、“人々に尽くし、幸せにすることが、私の使命だ”と、博士は心に刻んだのです。

 平和の舞台は、何か特別な場所にあるのではない。家庭や学校、地域社会のどこにだってある。

 そう、みんながいる場所が、即、平和の本舞台です。日々の生活の中にこそ、平和の種が芽を吹き、花開く土壌があるのです。

      

 ──未来部のメンバーからも、「平和を求めることは、世界中の誰でもできることだと思います。私もその一人として、平和を願い、少しでも、できることから行動したい」「今、私にできることは少ないけど、題目をいっぱいあげて、世界平和を祈り、元気なあいさつで、みんなを笑顔にしたいです」等々、“今いる場所で頑張る”という決意が届いています。

 

名誉会長 素晴らしいね。

 みんなが今、できることは、決して「少し」なんかじゃありません。むしろ、貴重な青春時代だからこそ、直接、たくさんの平和を築くことができる。

 それは、、なぜか──。

 「友情」が平和の力だからです。

 「親孝行」が平和の源だからです。

 「勉学」が平和の光だからです。

 君が友達と励まし合い、良い友情を築いた分、平和は前進します。

 あなたが成長しご両親に喜んでもらった分、平和は広がります。

 みんなが徹して学び、民衆を守る力をつけていった分、世界を平和で照らしていけるのです。

 何より、みなさんは、題目を唱えて、白身に秘められた生命の無限のエネルギーを取り出せる。

 「『魂の力』は原子爆弾よりも強い」とは、インド独立の父・ガンジーの信念でした。みなさんの生命の力は、核爆発の巨大なエネルギーを表した方程式「E=mc2」(Hはエネルギー、mは質量、cは光速)でも測れないくらい、はるかに大きいのです。

 だから、今は一生懸命、題目を唱え、みんなの周りにいる人を大切にしてほしい。学びに学び、心身を鍛え、大きく成長してほしい。それが、全部、「平和の種」となっていくんです。

      

 ──空襲で家が焼かれても、家族のために明るく振る舞われた池田先生のお母さまのエピソードに感動した未来部員が数多くいました。「どんな時でも明るく周囲を照らせるお母さんに尊敬の心が湧きました。私も、支えて励ますことができるよう、努力します」と語っていました。

 

名誉会長 あなたが、お母さんを尊敬する美しい心こそ、平和の原点です。

 大聖人は、「悲母の恩を報ぜんために」(御書1312㌻)、すなわち “母への恩返しのために”と述べられて、民衆救済の大闘争を起こされました。

 ボールディング博士も、学会の婦人部の座談会に出席されて、「本当の人間の精神を感じたように思いました。家族と過ごしているような温かさを感じたのです」と感動を語っておられました。

 母は偉大です。母は強く、たくましく、優しい。人を慈しむ「母の心」を人類が忘れなければ、戦争は決して起こりません。母を大切にする時、みなさんの平和の心は大きく育まれていくんです。

 みんなも、お母さんのために、成長の日々を送っていこう。

 たまには家事も手伝って差し上げてください。急にお手伝いを始めたら「何かあったの?」と心配されるかもしれないけど、そうしたら「これが私の平和の第一歩です」と答えてごらん(笑い)。「うちの子は平和の天使かしら」と、きっと喜んでくれるよ。もちろん、少しは「お父さんのため」にも頑張ってね(大笑い)!

      

 ──池田先生は、今からちょうど20年前の8月6日、小説『新・人間革命』の執筆を開始されました。この日は1945年(昭和20年)、広島に原子爆弾が投下された日です。

 

 平和ほど、尊きものはない。

 平和ほど、幸福なものはない。

 平和こそ、人類の進むべき、根本の第一歩であらねばならない。

 

 この冒頭の一節が刻まれた碑が、戸田先生の故郷である北海道の厚田や、池日先生が平和旅の第一歩をしるされたハワイ、SGI発足の地・グアム、モンゴルなどに建立されています。

 

名誉会長 20世紀は「戦争の世紀」でした。21世紀は、断じて「平和の世紀」「生命尊厳の世紀」にしなければならない。ゆえに、私は戦い、語り、書き続けます。

 何より、私には、21世紀の本命中の本命である、後継の末来部がいます。

 さあ、君の「勇気の一歩」で、世界を変えていこう!

 あなたが「正義の走者」となって、平和を創り、広げていこう!

 きょうも、何ものにも負けない若き生命のエネルギーを、満々と発揮しながら!

 

 ボールディング博士の言葉は池田先生との対談集『「平和の文化」の輝く世紀へ!』(潮出版社

 

 

【第18回】 感動とともに心は豊かに  (2013.10.1)

 

みんなは「幸福を創る大芸術家」

 

 ──2020年、東京でのオリンピックとパラリンピックの開催が決定しました。7年後ですので、まさしく今の未来部員の世代が主役となる祭典です。

 

名誉会長 夢が広がるね。

 先月、60カ国・地域から来日した、海外の広宣流布の青年リーダーたちも、未来部の皆さんとの出会いを心から喜んでいました。

 わが未来部の凜々しき成長こそ、世界の大いなる希望なのです。

 

 ──未来部員も、それぞれの「秋」に挑戦しています。「勉学の秋」「読書の秋」、そして「スポーツの秋」「親孝行の秋」「芸術の秋」……。

 

名誉会長 秋は、稲穂も黄金に輝く、一年の実りの季節です。

 近代オリンピックを提唱した、クーベルタン男爵は言いました。

 「努力は最上の喜びである」と。

 皆さんも、自分らしく努力を積み重ね、すがすがしい「実りの秋」としていってください。

 高き天空を仰いで、のびのびと大きく深呼吸しながら!

    

 ──未来部員と語り合って思うのは、「忙しい」と感じているメンバーが多いということです。

 「やることがありすぎて、目が回りそうです」という声も寄せられています。

 

名誉会長 そうか、今はみんな大変なんだね。たしかに、学校に行って、部活をして、勉強をして……。塾や習い事に通う人もいる。そして、未来部の活動への挑戦──。

 みんな、よく頑張っているね。本当に偉い。誰がほめなくても、私は最大にほめ讃えたい。

 忙しくて忙しくて、大変だろうけれども、青年がたくましく成長するのは、そういう時です。

 何にもすることがなくて、ただ、のんきにだらだらと過ごす。たまにはいいかもしれないけど、そういう日ばっかりだと、退屈で、あきてしまうし、充実もない。

 人間だけじゃない、すべての生命は常に成長する。命あるものは一瞬たりとも立ち止まらない。

 だから「忙しい」ということは「生きている」ということなんだ。その「忙しい」中で、どうやって、自分自身を励まし、元気づけながら、日々、新たに前進していくか。

 ここに人生の勝負がある。

 忙しいからこそ、賢く、ムダな時間をなくして、特に睡眠は十分にとるように心がけよう!

 睡眠不足では長続きしません。

 無理をしないで、あくまでも

 「健康第一」で!

     

フランスの大文豪 ビクトル・ユゴー

海洋よりも壮大なる光景、それは天空である。

天空よりも壮大なる光景、それは実に人の魂の内奥である。

 

 ──「時間を使え、時間に使われるな」と言われますが、心に余裕がないと、どんどん時間に追い込まれた感じになります。

 

名誉会長 そうだね。だからこそ、生命力が大事なんだ。

 その源泉が、勤行・唱題です。

 御書には、「日月天の四天下をめぐり給うは仏法の力なり」(1146㌻)とあります。

 大宇宙がたゆまずに運行する究極の力も妙法です。題目を唱える人は、その限りない力を、わが生命に漲らせていけるのです。

 忙しい朝は、三唱だけでもいい。心をこめて朗々と題目を唱えれば必ず通じます。

 みんなは、題目という最強無敵の武器を持っている。忙しい時こそ、題目を忘れず、太陽が昇るような満々たる生命力で、一日を出発してください。

 

 ──メンバーから、「忙しい中で、豊かな心を持つには、どうすればいいですか」という質問がありました。

 

名誉会長 向上しようと頑張っている生命には、あらゆるものを吸収していく力がある。縁するものから、より深い価値をつかむことができます。

 ゆえに、忙しいからこそ、良いものにふれる機会、美しいものを見るチャンスを大切にしてほしいんです。そこから、感動が生まれます。その感動が“心の栄養”になる。そうすれば、心がどんどん大きく豊かになります。

 私が、30年前、創価大学の隣に東京富士美術館をつくったのも、創大生をはじめ多くの若い人たちに、一流の芸術品を鑑賞してもらいたいという願いをこめてです。

 戸田先生は、よく「文学も、音楽も、絵画も、求めて一流にふれよ!」と言われました。

 先生は、私たち青年を、あらゆる角度から、「第一級の社会人」へ、「心豊かな民衆指導者」へと薫陶してくださったのです。

 時には、レストランで食事のマナーを教えてくださることもありました。

 「水滸会」や「華陽会」という人材グループでは、戸田先生のもとで、世界の名著を掘り下げて学び、指導者論や哲学論、歴史観などを教わりました。

 フランスの大文豪ビクトル・ユゴーの作品も、その教材の一つです。先生は常々、「ユゴーを読め」とおっしゃっていたんです。

     

 ──ユゴーと言えば、歴史的名作『レ・ミゼラブル』が有名ですミュージカルや映画にもなり、その歌は未来部の合唱団のメンバーも力強く歌っています。

 

名誉会長 私が初めて『レ・ミゼラブル』を読んだのは、たしか14歳か15歳の時、未来部の皆さんの年代でした。何度も読み返してきた一書です。

 創価大学には、ユゴーが闊歩しゆく姿のブロンズ像があります。その台座には、『レ・ミゼラブル』の有名な一節が刻まれている。

 すなわち、「海洋よりも壮大なる光景、それは天空である。天空よりも壮大なる光景、それは実に人の魂の内奥である」と。

 今回は、この言葉を皆さんに贈ります。

 自分自身の心こそ、大海よりも、大空よりも壮大な可能性を発揮していく原動力なのです。

 

 ──ユゴーは、激動の19世紀に、民衆へ魂の光を送り続けた偉大な闘士です。権力の迫害に屈せず、勇敢な闘争を貫きました。

 

名誉会長 そのユゴーも、幼少のころは体が弱かった。また何度も引っ越しせねばならない、なかなか落ち着かない暮らしでした。

 その中で、母はユゴー兄弟ににたくさんの本を読ませました。この読書が大きな力になったのです。

 私塾を開いていた老人からも、、多くのことを学びました。ラテン語ギリシャ語も教えてくれました。ユゴーは、後に、「幼年時代の三人の教師」として、母とこの老人と、そして美しい庭(自然)をあげています。

 また9歳の時、スペインを旅行して、そこで見た建築物や彫刻に感勤し、芸術の心が目覚めました。

 さまざまな良き人との出会いや書物との格闘、美しい自然や芸術との語らいが、ユゴーの心を深く、大きく、豊かに育んでいった。その心が、ペンからほとばしり、民衆への愛情あふれる世界文学へと結晶していったのです。

 ユゴーのように、青春時代に、素晴らしいものや、優れた人物にふれておくことが、どれほど大事か。自分自身の感動の体験が、やがて、多くの人を感動させ、喜ばせていく力をつけることにも、つながるのです。

     

 ──池田先生の『若き日の日記』を拝読すると、多忙を極める激闘の中で、心豊かに芸術にふれておられたことが記されています。

 

名誉会長 「一流にふれよ!」との戸田先生の教えの通り、努力しました。先生の事業を必死に支える一日一日だったから、それも真剣勝負の戦いでした。

 小さなアパートの一室では、よくレコードを聴いたものです。ベートーベンの交響曲第五番「運命」や第九番が流れると、その時だけは、狭い部屋が、荘厳な大殿堂に変わった(笑い)。後輩たちが来た時には、スッペの「軽騎兵」序曲などを一緒に聴いて、共に胸を高鳴らせた。

 時間のない中だからこそ、一曲の名曲も、一冊の名著も、一枚の名画も、若き生命に鮮烈に刻みこまれたのです。

 しかし、何と言ってもいって最高の「一流」とのふれあいは、戸田先生との対話でした。

 戸田先生は、天才的な大学者であり、青年をこよなく愛する大教育者でした。何ものも恐れない信念の師子王であり、庶民の母たちをこよなく大切にされる慈愛の人間指導者でした。その恩師に徹底して薫陶していただいたことが、私の最大の誉れです。

      

 ──「大きな心を持ちたいのですが、結局、自分のことばかり考えてしまって、親や友達に優しくすることができません。そんな自分が嫌になります」という悩みを語ってくれたメンバーがいます。

 

名誉会長 心配ないよ。誰だって、そうです。だからこそ、祈って、人間革命するんです。

 題目をあげて、祈れるということは、本当にすごいことなんだ。みんなは、自分の幸福を祈れる。と同時に、ご両親や兄弟、友達をはじめ、周囲の人々の幸せも、みな祈っていけるんだよ。

 心の大きさとは、何だろうか。

 それは、「一人の人のことを、どれだけ思いやれるか」、そのように思いやれる相手が「どれだけいるか」と言っでも良いでしょう。

 友のこと、みんなのことを深く広く祈っていけばいくほど、心は、どんどん広がっていくのです。

 私が出会った世界の一流の識者からは、必ずと言っていいほど、こうした心の大きさを感じました。世界平和を願い、人類のために行動する人は、その心もまた、世界を包み、人類を友とする広がりを持つのです。

 仏法では、「心は工《たくみ》なる画師《えし》の如し」と説かれます。心は素晴らしい画家のように、自在にあらゆるものを描き出すことができる、という意味です。

 若くして妙法を持《たも》った皆さんは、「希望の天才画家」であり、「幸福を創る大芸術家」です。思い描いた通りの自分になれないわけがありません。この心の力を自覚すれば、同じ一日であっても、計り知れない価値を創造し、偉大な未来を創造していけるんです。

     

 ──世界の識者が異口同音に感動されているのは、池田先生のもと、使命に目覚めた創価の友が、自身の力を最大限に発揮して、それぞれの地で“良き市民”として活躍していることです。

 

名誉会長 みんなのご家族の人間革命の姿は、世界の模範です。

 皆さんも、自身の大いなる夢に向かって思い切り挑戦してほしい。挑戦してみて初めて、自分の心の大きさも、偉大さも分かる。

 日蓮大聖人は、「心」の不思議さを“ケシ粒のような小さな中に入っても縮まることもなければ、虚空(大宇宙)の中に満たしても心が狭すぎるということもない”と御書に仰せです(563㌻)

 どんなに窮屈な環境にいても、わが心は広々として縮こまることはない。反対に、見知らぬ広大な世界に飛び込んでも、心は自由に駆け巡ることができる。

 「心」は自由自在であいり、無限の力がある。その偉大な力を引き出すのが「信心」です。最高の自分自身を引き出す挑戦が「祈り」です。海洋よりも、天空よりも壮大な、無限の力と可能性を開きゆくために、仏法があるんです。

 君よ、大きな心を持つ、世界の指導者たれ!

 あなたよ、豊かな心で友を包む、幸福博土たれ!

 

 クーベルタンの言葉は鈴木良徳著『続・オリンピック外史』(ベースボール・マガジン社刊)。ユゴーの言葉は『レ・ミゼラブル(1)』 (豊島与志雄訳、岩波文庫刊)。辻昶著『ヴィクトル・ユゴーの生涯』(潮出版社刊)を参考にした。

 

【第19回】 希望の未来を描こう!(2013.11.1)

 

毎日が君と私の「夢の出発点」

 

アフリカの環境の母 ワンガリ・マータイ博士

「未来」は、「今」にあるのです。将来、実現したい何かがあるなら、今、そのために行動しなければなりません

 

 ──いよいよ全世界の同志が待ち望んでいた総本部が完成し「世界広宣流布」の新時代が開幕しました。おめでとうございます!

 

名誉会長 おめでとう! ありがとう! この新時代の主役こそ、未来部の皆さんです。

 総本部も、未来部の皆さんに贈りゆく宝の城です。これから、創価の城を担い立って、人類を希望の光で照らしゆくのは、まぎれもなく、皆さんだからです。

      □■□

 ──総本部が竣工し、引き渡しの式典が行われたのは、10月2日「世界平和の日」でした。

 池田先生が53年前(1960年10月2日)に、世界平和の旅に出発された記念日です。

 天空には、大きな大きな美しい虹が出ました。

 

名誉会長 諸天も喜んでいるようだったね。

 私の心には、みんなの未来を象徴する虹と映りました。世界中に平和と希望の「虹の橋」をかけゆく、君たちの晴れの姿です。

 学会が創立100周年を迎える2030年──。その時、みんなは、どんなに立派な広宣流布の指導者に育っているだろうか。

 世界を飛び回る仕事で奮闘している人もいるでしょう。未知の研究分野に挑む博士かもしれない。人材を育む教育者も、経済をリードする実業家も、生命を守る医師や看護師も、躍り出ているに違いない。偉大な芸術家もいれば、皆に勇気を送るアスリートもいる。

 地域に社会に貢献する民衆リーダーも光っているでしょう。

 私は、ただただ楽しみなんです。

 私は、君たちの未来を信じています。信じ抜いています。どうか皆さんも、自分の力、自分の未来を信じて夢に挑戦してください。

 皆さんの未来が限りなく開かれ、輝いていくよう、私も懸命に題目を送ります。

      □■□

 ──1969年(昭和44年)の聖教新聞の新年号に、50年後を想像する紙面が掲載されました。

 火星に創価学園の建設予定地があったり、「創価海底大学」があったり……夢は大きいです(笑い)。

 その一方で、「本部幹部会のテレビ中継」 「外国人が仏法を語るために来日」 「翻訳機器を使いながらの国際座談会」など、今では実現しているものも多くあります。当時は夢物語だった未来構想を、池田先生が一つ一つ現実にしてくださったのだと感動します。

 

名誉会長 社会は、どんどんスピードを増して発展している。今は「おとぎ話」であっても、50年後には、当たり前のように現実となっていることもあるでしょう。

 むしろ、今、みんなが心に描く“想像図”が、将来の現実になるのです。広布の未来になるのです。

 日蓮大聖人は、「未来の果を知らんと欲せば其の現在の因を見よ」(御書231㌻)と教えてくださいました。

 これまでがどうであっても、「今」から変えられる。「今」から未来へ、いくらでも新しい波を起こしていくことができる。

 どんな困難も悠々と乗り越えていく力は、もともと、みんなの生命の中にある。湧き立たせることができるんです。

 だからこそ、たとえ落胆することがあっても、不屈の勇気を燃やして、未来を思い描いてほしい。未来を見つめれば、視界が広がる。希望の未来を見つめれば、今やるべきことも見えでくるのです。

 アフリカの“緑の大地の母”ワンガリ・マータイ博士は、8年前に詰り合った際、青年へのメッセージとして、こう言われました。

 「未来は、ずっと先にあるわけではありません。『未来』は『今』にあるのです。将来、実現したい何かがあるなら、今、そのために行動しなければなりません」

 今回は、博士の人生を貫いたこの言葉を、皆さんに贈ります。

      □■□

 ──マータイ博士は、ケニア共和国出身の環境学者です。祖国の森林破壊に胸を痛め、NGO(非政府組織)「グリーンベルト運動」を創設しました。アフリカ各地に植えた苗木は実に4000万本に及びます。2004年には、ノーベル平和賞を受賞されました。

 

名誉会長 創価大学にもお迎えしました。創価の青年に限りない期待を寄せておられた一人です。

 博士は、ケニア山を望む大自然の中で育ちました。アフリカ最高峰のナイロビ大学に学んで博士号を取得し、大学で女性初の教授職となった努力の人です。

 

 ──博士の環境保護の行動は、無理解からの偏見、中傷を浴び、何度も逮捕され、投獄されました。意識不明になるまでこん棒で殴られた経験もされています。

 

名誉会長 正義であるからこそ、偉大であるからこそ、迫害される。いかなる迫害にも屈せず、博士は戦い抜かれました。

 どんなにつらくでも、何があっても、「未来」を見つめ、「希望」を手放さなかったのです。

 博士は高校生の時、素晴らしい先生方と出会いました。いろんなことを話し合い、若き博士を応援してくれた。心の交流は、卒業後も続いたそうです。

 そしてこの人間教育を通し、「どんな状況でも、他人を信頼すること、人生や他人に対して肯定的であること」という信念を持って成長できたと、振り返っておられます。博士は、未来に対して、人間に対して、社会に対して、希望なきところにも希望を見いだしていくことを心に刻みました。

 みんなも、後ろを振り向いてクヨクヨしたり、人と比べて焦ったり、できないことばかり考えて悲観したりすることはないんです。

 後ろではなく「前」を向き、人をうらやまずに「自分らしく」、できないことではなく「今できること」から始めればいい。

 持てる力を全部、出し切る人が真の勝利者です。もうダメだと思うような時でもベストは尽くせる。誰にでも努力はできる。

 「未来」には、必ず希望がある。

 「中等部」「高等部」も、学会の洋々たる未来を思い描きながら、私が結成したんだよ。

 

 ──高等部を結成していただいたのは1964年6月、中等部は翌65年の1月でした。

 

名誉会長 来年、再来年は、それぞれ50周年を迎えるね。

 64年と言えば、東京オリンピックが開催された年です。この年の12月、私は沖縄の地で小説『人間革命』の執筆を開始しました。

 高等部を結成する際には、さまざまな意見があった。「未来のための布石も大切ですが、もっと優先すべきことがたくさんあるのではないか」と言う幹部もいた。

 しかし、私は断言しました。

 「30年後、40年後の学会をどうするのか。その時、学会の中核になっているのが、今の高校生です」

 未来部メンバーを育てない限り、広宣流布の未来はない──これは、ずっと変わらない私の信念です。

 うれしいことに、未来部メンバーは、広布と社会をリードする大人材に成長してくれた。そして、私と共に学会を盤石につくりあげてくれました。

 今も、未来部への私の思いは全く変わりません。

 いわば総本部の完成は、君と私の夢の出発点です。これからの毎日が、あなたと私の勝利のスタートラインです。

 みんなと未来を見つめ、共に夢を描いていきたい。総本部からみんなが世界へ羽ばたいていく晴れ姿を見っていきたい──それが私の“未来像”なのです。

 そのために、さらに道を開き、さらに手を打っていく決心です。

      □■□

 ──「11月は、学会の創立の月です。どのような意義があるのでしょうか」と質問を寄せてくれた高等部の部長がいます。

 

名誉会長 真剣な求道の心がうれしいね。

 1930年(昭和5年)のこの日、偉大な教育者であられた創価の父・牧口常三郎先生は、ご自身の教育理念をまとめた『創価教育学体系』の第1巻を発刊されました。軍国主義の時代に、教育の目的は国家ではなく「子どもの幸福」にあると宣言したのです。

 そして、この日が、学会の創立の日となりました。

 牧口先生を陰で支えて発刊に力を尽くしたのが、わが恩師・戸田城聖先生です。戸田先生は、牧口先生の原稿の整理から、出版に必要な多額の費用まで工面し、師匠のために全てを注いだのです。

 第2次世界大戦の真っただ中、牧口先生は信念を貫き、国家神道を強要する軍部政府に不当逮捕されました。

 獄中でも正義を叫び抜き、44年(同19年)の11月18日、獄死されました。法のため、人のために尽くし抜かれた、あまりにも尊い生涯でした。

 牧口先生と共に投獄された戸田先生は、終戦の直前である45年(同20年)7月3日に出獄しました。そして、牧口先生の思いを継いで、学会の再建に着手されたのです。

 牧口先生が牢に入ると、それまで慕っていた弟子たちが、悪口を言って次々と去っていきました。

 しかし、真の弟子である戸田先生だけは、「あなたの慈悲の広大無辺は、私を牢獄まで連れていってくださいました」と感謝したんです。

 この、あまりにも崇高にして峻厳な不惜身命の師弟の大道を、私もまた、断固として走り抜いてきました。

 日蓮大聖人は、「師子王は百獣にをぢず・師子の子・又かくのごとし」(御書1190㌻)仰せです。

 何があっても恐れず、惑わず、師匠と共に戦い抜いていく──これが創価の師弟の魂であり、根本です。

 この「師弟の魂」で、学会は発展してきました。これからも、永遠に変わりません。

 総本部は、「師弟の魂」を受け継ぎ、世界広宣流布を誓う“大城”です。

 未来部の皆さんが、ここから出発する英姿を、牧口先生、戸田先生も、会心の笑顔で見守ってくださることでしょう。

      □■□

 ──創立の月、未来部担当者として、「師弟の魂」を、さらにメンバーに伝えていきたいと決意しています。

 

名誉会長 担当者の皆さんには、本当に、いつもいつも、お世話になっています。感謝してもしきれません。

 皆さんの心の中に燃えている「師弟の魂」が、そのまま末来部の友に自然と伝わっていきます。

 心から心に通じていくのです。魂が魂と共鳴するのです。

 仕事で忙しい中でも、疲れている時にも、学会精神を燃やして、メンバーを激励するために足を運ぶ。自分が悩みを乗り越えながら、メンバーの相談にのり、共に祈る。これ以上、尊い人材育成の実践が、どこにあるだろうか。

 その行動が、その祈りが、「師弟の魂」あふれる戦いです。若き生命に伝わらないわけがない。

 創価学会の未来を、私と共に、常に私と同じ心で見つめてくれているのが、未来部の担当者の皆様方です。

 さあ、栄光の「11・18」です。

 創立の“魂のバトン”を受け継ぐのは、他の誰でもない。私が最も期待する、「世界広布の新時代」の主役である、わが未来部の皆さんです。

 皆さん一人一人が、創価の明るい未来そのものなのです。

 

 『INBOWED へこたれない ワンガリ・マータイ自伝』(小池百合子訳、小学館刊)を参照した。

 

【第20回】 御書があれば負けない   (2013.12.1)

 

「心に刻む御文」を持とう!

 

20世紀ロシアを代表する文豪 ショーロフ氏

大事なのは、その人の信念です。ある目的へ向かって、その人が目指していく力です。信念のない人は、何もできやしません。

 

 ──11月24日に「教学部任用試験」が行われました。多くの高等部員も真剣に挑みました。

 

名誉会長 ご苦労さま! 勉強やクラブ活動など、忙しい中、本当によく頑張ったね。何よりも尊く、誇り高い挑戦です。

 世界第一の生命哲学を学んだこと、それ自体が、自身の光り輝く歴史です。

 これからも、「行学の二道をはげみ候べし」 (御書1361㌻)の仰せを胸に、共々に、祈り、学び、実践していこう。全員が「信心の勝利者」になり、「幸福と平和の博士」になっていこうよ!

 受験者を励まし、応援し、教学を教えてくれた担当者の皆さん、本当にありがとうございました。

      

 ──未来部には、地域の座談会などで、「大白蓮華」の「巻頭言」や、「少年少女きぼう新聞」の「師子王《ライオンキング》御書」を拝読してくれるメンバーが多くいます。ある友からは、「学会の会合では、なぜ、いつも御書を学ぶのですか」という質問が届きました。

 

名誉会長 よく気がついたね!

 学会は常に「御書根本」で前進しています。御書には、人生を切り開く勝利の哲学があります。最高の智慧の泉があり、不屈の勇気を呼び覚ます力があるんです。

 私の恩師・戸田城聖先生は、数学の天才でした。その先生がよく"「信」は「理」を求め、「理」は「信」を深める"と指導されていました。

 「信心」に励んでいくと、「なぜ願いはかなうのか」「どうして題目を唱えるのか」という疑問がわき、「理論」が知りたくなる。その時に御書を学べば、「なるほど、そういうことか」と納得が生まれる。その「理論」が、「信心」をさらに深めてくれるんです。

 日蓮大聖人は、「法華経の文字は一字一字が全て仏です。しかし、私たちの肉眼には、ただの文字と見えるのです」(同1025㌻、趣意)と教えてくださっています。

 題目を唱えつつ御書を拝していけば、全ての文字が「仏の力用《りきゆう》」となって、皆さんの若き生命にグングンと吸収されていくんです。

 御書には、断固として正義を貫き通す「信念」が光っています。どんな苦難も必ず乗り越えられるとの「確信」が満ちています。そして、生きていること自体が楽しいと感じられる「絶対的幸福」の道が示されています。

 ゆえに、御書を学べば、断じて負けない師子王になれる。友に希望を贈る太陽になれる。世界平和を創る賢者になれるのです。

      

 ──「御書は古文だし、内容も難しい」という声もあります。

 

名誉会長 そうだね。私も、若き日の日記に「御書を拝読。全く難しい」「教学の度に思うことは、勉強不足である。勉学の必要を、深く深く感ずる」と書いた思い出があります。

 それでも、戸田先生のもとで、必死に学んだ。先生の名代として、御書講義を何度も行いました。疲れ切った体で家に帰った後も、必ず御書を開き、心に残った一節を、日記に認《したた》める習慣も身につけました。

 不思議なもので、若い時に生命に刻みつけた御書は、生涯、忘れません。最初は意味が分からなくても、だんだん分かってきます。

 今、世界中の友が求道心に燃えて教学に挑戦しています。

 たしかに古文は難しいけれど、海外のメンバーから見ると、御書を日本語で声に出して拝読できる皆さんは恵まれているのです。

 みんなは、学校でも古文に触れる機会があるからね。それは、御書を学ぶ力にもなる。また御書を学ぶことが、古文を勉強する際の力にもなる。

 そのうえで、大切なことがあります。頭で法理を理解し、納得することは、もちろん大事です。それ以上に重要なこと──それは、御書を「心に刻む」「身で拝する」ことです。

 

 ──これは、メンバーのご家族や、地域の創価家族の方々が実践していることですね。

 

名誉会長 その通りだね。みんなのお父さん、お母さん方は、御書の通りに実践し、大聖人の御精神を現代によみがえらせているんです。

 試練にぶつかった時には、「なにの兵法よりも法華経の兵法をもちひ給うべし」(同1192㌻)との一節を思い出し、"そうだ、策ではない。今こそ唱題だ!"と勇気を奮い起こして、勝ち越えてきた同志の方々がたくさんいる。

 "自分なんて"と弱気になっていた時に、「成仏の『成』とは開く義である」(同㌻、通解)という一節を教わり、自身の無限の可能性を開き、成長していった人も、いっぱいいる。

 一節でもいい。その一節を抱きしめながら、必死に祈り、努力を重ねていけば、青春も人生も、絶対に開ける。

 そして、「御書の通りにすれば、必ず勝てる」「この信心は、すごい」と心から確信できる。それが「心に刻む」「身で拝する」ということです。

 その一節が、君の信念になる。

 その一節が、あなたの生き方になる。

 「大好きな御書の一節」を持つ人は強いんです。苦難にあっても、無敵になるんです。

 いい機会だから、家族や先輩に、「好きな一節は何?」と質問してみてはどうかな。きっと、体験をまじえて、教えてくれるよ。

      

 ──それは、一人一人の人生の誉れある信念の御聖訓ですね。

 

名誉会長 私が初めてロシアを訪問した折(1974年)、作家のミハイル・ショーロホフ氏(1905~84年)と語り合いました。その折の氏の言葉が忘れられない。

 「大事なのは、その人の信念です。ある目的へ向かって、その人が目指していく力です。信念のない人は、何もできやしません」

 今回は、この言葉を贈ります。

 人は名誉や地位で偉いのではない。偉大な信念を持った人が、真に偉大な人です。妙法の信仰は「究極の信念」の道なんです。

 

 ──ショーロホフ氏は、ノーベル文学賞を受賞した、20世紀ロシアを代表する文豪です。代表作は『静かなドン』『人間の運命』。

 池田先生は、お孫さんとも麗しい交流を結ばれ、氏の生誕100周年を慶祝する「記念メダル」が贈られています。

 

名誉会長 庶民の中に入り、歴史の大河を描き続けた偉大な文豪でした。いかなる中傷も、苦難も、信念で乗り越えてこられた獅子です。

 ロシア南部のドン地方のさびれた村で生まれ育ち、激しい戦争のゆえに中学を卒業できませんでした。戦争が終わり、17歳になった氏は、勉強するためにモスクワに行きます。ところが、学校に入ることができず、厳しい労働で生活費を工面しました。

 それでも、氏は負けませんでした。独学で学び、作品を書き、同じ夢を持つ友と語り合いました。そして、18歳で、自分の書いた作品が初めて活字になり、世に出たのです。

 氏の向学心や創作意欲を高めてくれたのは、偉大な作家の作品でした。トルストイチェーホフプーシキンゴーリキーゴーゴリなど、先人の言葉が逆境の氏を励まし、燃え上がらせたのです。

 いかにつらい環境でも、学び抜き、希望の光を見いだし、成長の活力に変えていく──まさに、「学は光」です。

      

 ──ある男子部のリーダーは、幼いころから両親のけんかが絶えず、生活も苦しかったといいます。高校生のころから荒れて、遊び回る毎日を送るようになりました。

 高校3年生の時、未来部の担当者が家にやってきます。彼は拒否しますが、何度も何度もやってくる(笑い)。

 その時に教わったのが、「冬は必ず春となる」(同1253㌻)の一節でした。心に希望の火がともりました。

 その後、真剣に信心に取り組んでいきます。そして、自分の宿命を、友を励ます使命に変えながら、社会で実証を示してきました。今は一家の和楽も勝ち取り、喜びの「春」を実感しています。

 

名誉会長 うれしいね。担当者の方の決してあきらめない真心の激励も、本当にありがたい。

 いかなる不幸の闇も照らす希望の光こそ、御書です。全国の学会員、そして全世界のSGI(創価学会インタナショナル)メンバーの躍動する姿が、それを証明しています。

 みんなも、これから先、さまざまな悩みの壁に突き当たることでしょう。「祈っているのに、なぜ?」「どうして願いがかなわないの?」と、疑問に思ってしまうことも、あるかもしれない。

 その時こそ、御書を開くんです。御書を拝し、学ぶことは、日運大聖人の大生命に触れることです。勇気がわかないはずがない。無限に智慧がわき、大いなる希望がわく。

 そして、誓いも新たに、題目を唱え、現実に立ち向かっていくんです。

      

 ──「池田先生の好きな御書は何ですか」という質問も寄せられています。

 

名誉会長 たくさん、あります。「座右の御書」の一つに、戸田先生から、「この御書は、絶対に命に刻んでおけ。学会の闘士は、この一節を忘れるな!」と教わった「御義口伝」の一節があります。

 「一念に億劫の辛労を尽せば本来無作の三身念念に起るなり所謂南無妙法蓮華経は精進行なり」(同790㌻)

 「本来無作の三身」とは、自身にもともと具わっている仏の生命です。その生命を、瞬間、瞬間、開き現していくためには、一念に「億劫の辛労」(無限ともいうべき長い間にわたる辛労)を尽くすしかない。私たちが題目を唱えて戦うことは、その「億劫の辛労」に匹敵する勇気と智慧を尽くしていることになるのです。

 私は、どんな戦いであっても、この御文を支えにしてきました。一瞬に永遠を凝縮するような思いで唱題し、全てを乗り越え、勝ち越えてきました。

 また、あの地、この地で、皆さんのご家族と共に拝してきた、「開目抄」の一節も大好きです。

 「我並びに我が弟子・諸難ありとも疑う心なくば自然《じねん》に仏界にいたるべし」(同234㌻)

 正しいからこそ難にあう。ゆえに何があっても疑わず、いよいよ信心を燃え上がらせて、前進し抜いていけば、必ず変毒為薬できる。

 我並びに我が弟子──師弟です。師弟が同じ誓いに立てば、突き抜けられない悩みなどない。確実に栄光のゴールにたどり着くことができる。

 この御文を根本に、学会は大発展してきました。創価の師弟は、一切に勝利しました。

 これからも、ますます大勝利していくんです。

 さあ、世界広布の新時代がやってきました。

 次代を開く、未来の主役であるみんなが、御書という最強の哲学を携えて、世界平和の舞台へ躍り出て大活躍することを、私は祈り、待っています!

 

 『ショーロホフ短編集』(小野理子訳、光和堂刊)、『筑摩世界文學大系76 ショーロホフ1』(江川卓訳、筑摩書房刊)、『ショーロホフと現代』(F・ビリュコーフ編、秋山勝弘訳、横田瑞穂監修、プログレス出版所刊)を参照した。

 

 

【第21回】 勇気の一歩で世界へ!(2014.1.1)

 

新時代はみんなから開幕!

 

名誉会長 希望あふれる新年の太陽が昇りました。

 未来部の皆さん! あけましておめでとう!

 世界の、あの地この地のSGI(創価学会インタナショナル)の未来部からも、「元気に新年をタートします」との連絡が、どんどん入ってきています。

 

 ──「世界広布新時代 開幕の年」である本年は、未来部結成50周年の佳節でもあります(1964年6月7日、高等部が結成)。新時代の主役である未来部のメンバーは、はりきっています。

 

名誉会長 うれしいね。ぜひ、「未来部新時代 開幕の年」にも、していこうよ!

 私の恩師・戸田城聖先生は、未来の宝である学会っ子たちに、期待を込めて語りかけてくださいました。

 「将来、誰もが幸せをかみしめることができて、国境や民族の壁のない地球民族主義の平和な世界を築かねばならない。みんなは、きょうのこのおじさんの話を忘れないで、少しでも、この夢を実現してほしい」

 戸田先生は、目の前の子どもたちと、一人の大人として向き合い、心から大事にされた。「地球民族主義」という壮大な構想を、真剣に語られました。

 先生には、一つの絶対の確信がありました。「世界最高の仏法を持った青年は、すでに世界的指導者である」という一点です。

 戸田先生は、未来ある若い人材を信頼し、世界広布の偉大な使命を教えてくださったのです。

 仏法では、末法広宣流布を担う存在を、「地涌の菩薩」と説いています。

 みんなは、この「地涌の菩薩」という言葉を知っているかな? 座談会で耳にしたり、任用試験で学んだりしたメンバーもいるでしょう。

      

 ──世の中が乱れる時代に、師匠である釈尊に代わって仏法を弘め、人類を救うことを誓ったのが、法華経に登場する「地涌の菩薩」です。大地から涌いて出てきた菩薩なので、こう呼ばれています。

 

名誉会長 「地涌の菩薩」は、一人一人が黄金の輝きを放ち、まるで仏のような姿をしている。あまりにも荘厳なので、それまで仏の説法を聞いていた優秀な人々ですら、驚きを隠せないほどでした。

 智慧は豊かで、志が固く、求道の心にあふれている。対話も上手で、見た目も端正で頼もしい。

 皆が、民衆を幸福へと導くリーダーで、それぞれが数え切れないほどの友を引き連れていると、法華経には説かれています。

 その行動の舞台は、現実の世界です。悩める民衆、苦しむ友の心の闇を、勇気と希望と智慧の光で明るく照らしていく──それが、「地涌の菩薩」です。

 そして、「地涌の菩薩」は、正しい仏法を世界中に弘めていくことを、師匠に誓うのです。

 これほどまでに尊貴な「地涌の菩薩」とは、一体、誰のことでしょうか。

 それは、まぎれもなく、皆さんのお父さん、お母さんをはじめ、わが学会の同志の方々です。

 乱れた世には、正しいことをする人に対し、意地悪をする人がいる。そのなかで、難を受けながら仏法を弘め、現実に人を救い、広宣流布しているのは、わが創価学会しかありません。

 実は、皆さんも、この「地涌の菩薩」の誓いを持って生まれてきた一人一人なんだよ。

      

 ──なかには、「僕なんて、成績だって良くないし、違います」「私はそんなに立派じゃありません」というメンバーもいるかもしれません(笑い)。

 

名誉会長 今は、そう思うかもしれないね。でも、仏法を持《たも》った皆さんは限りなく尊く、偉大な人なのです。

 日蓮大聖人は、「今、日蓮およびその門下が、南無妙法蓮華経と唱えるのは、すべて地涌の菩薩の流類《るるい》(仲間)なのである」(御書751㌻、通解)、「皆、地涌の菩薩の出現でなければ、唱えることのできない題目なのである」(同1360㌻、通解)と仰せです。

 大聖人の御遺命である世界広宣流布を進める創価学会の中で、みんなは題目を唱えながら、自分らしく努力を重ねている。その姿は、みんなが「地涌の菩薩」である何よりの証拠なんです。

 題目を唱える人は──

 無限の可能性を開いていける。

 泉の如き智慧を湧かせられる。

 輝く英姿で友に希望を贈れる。

 若くして妙法を持《たも》ち、勉学に挑戦する君の眼前には、すでに世界への扉が開かれているんです。

 真剣に唱題に励み、友のために行動するあなたの行くところは、世界のいずこの地も、そこが自分を輝かせる最高の天地なんです。

 新時代を迎えたこの時に、未来部として学んでいるみんなには、世界の指導者として羽ばたきゆく大使命が厳然とあるんだ。

      

南アフリカネルソン・マンデラ元大統領

「大きな山に登ってみると人はただ さらに登るべきたくさんの山があることを見出す」

 

 ──女子未来部のメンバーから、「世界のいろんな場所で、人々に会って、夢や希望について話がしたいです。そのために今、私は何をすればいいですか」という質問が寄せられています。

 

名誉会長 素晴らしい! 世界が、みんなを待っている。

 みんなは、人類の希望です。

 勉強、語学の習得、読書、心身の錬磨──世界に雄飛しゆく皆さんにとって、今すべきことは、たくさんあるでしょう。

 しかし、決して焦る必要はありません。「千里の道も一歩から」です。地道な一歩一歩がこ来の大成につなかっていきます。

 私は皆さんに、昨年12月、95歳で亡くなられた南アフリカの元大統領、ネルソン・マンデラさんの自伝の言葉を贈りたい。

 「わたしは、ひとつの大きな山を越えてわかるのは、行く手にもっともっとたくさんの越えるべき山があることだけだという真理を発見した」

 目の前の山を登れば、さらに雄大な景色が広がる。いくつも山が連なっているのが見える。その山々は、君にしか越えられない“使命の山”です。

 ならば、また一つ、山を登ればいい。全力で登り切れば、そこにはまた雄大にして新たな景色が広がっているのです。

 青春は、挑戦また挑戦です。この不屈の連続闘争の人が、真の勝利者なのです。

      

 ──マンデラ元大統領は、南アフリカアパルトヘイト(人種隔離)政策と闘い抜いた偉人です。

 27年半に及ぶ投獄を経て、南ア初の黒人大統領に選ばれると、異なる人種が融和する「虹の国」づくりを進めました。

 池田先生とは、2度、会見されていますね(1990年と95年)。

 

名誉会長 何があっても屈しない「正義の巌窟王」でした。その実像は、誰をも慈愛で包み込む「人道の闘士」でした。

 マンデラさんが、1万日に及ぶ獄中闘争を勝ち越えて、出獄した8カ月後(1990年10月)、東京・信濃町聖教新聞社で、多くの青年たちと共に、盛大にお迎えしました。お会いした時の、あの「マンデラ・スマイル」を忘れることができません。

 マンデラさんは、出獄の日から、すぐに行動を開始しました。各地を飛び回り、“すべての人々が仲良く暮らせる社会を創ろう”と、民衆に訴えていきました。

 「のんびりしてはいられない。わたしの長い道のりは、まだ終わっていないのだから」と、休むことなく、自由を勝ち取る道を歩み抜きました。まさに、目の前に次々と現れる“使命の山”を踏破し続けたのです。

 マンデラさんのように、みんなも目の前の山を、忍耐と負けじ魂で登り切ってほしい。そうすれば必ず、素晴らしい理想の峰が見えてきます。

      

 ──青春時代は、さまざまな苦難の山、悩みの山、課題の山との戦いの連続かもしれません。

 

名誉会長 そうだね。だからこそ、「勇気の一歩」が大切です。

 マンデラさんが、皆さんと同じ10代の日に、心に刻まれた指針は、「勇気をもって立ち向かえ」というものでした。

 つまり、何か問題が起きた時に、臆病になって逃げ出してしまえば、いつまでも問題は、とどまってしまう。そうではなく、勇気を持って、その問題に取り組むのだ。立ち向かうのだ──と。

 マンデラさんは、この教訓を決して忘れなかったといいます。

 自分の弱い心を一つ一つ制覇して、「勇気の心」を強く大きくしていったからこそ、差別や迫害、壮絶な獄中生活といった、あらゆる苦難を勝ち越えることができたのです。

 その挑戦の日々が、世界中が讃えてやまない「マンデラ」という偉人をつくりあげていったに違いない。

 恐れを知らないことが「勇気」ではありません。恐れを感じても、それに負けないでチャレンジし続けることが、真の「勇気」なんです。その人が、世界を変えてゆくのです。

      

──「いつの日か、池田先生のように、世界平和のため、民衆の幸福のために行動していきたいと思っています。そのためには、世界を舞台に働く職業に就くべきでしょうか」という具体的な質問もありました。

 

名誉会長 もちろん、私は、みんなに世界で活躍する人材に成長してほしい。しかし、それは単に、「海外に行く」「世界を相手に仕事をする」というかたちだけを指しているのではない。

 自分が今いる場所で、堂々と生き抜くことが、世界広布の根本です。「ずっと国内にいるから、私は世界広布に貢献していない」などと思う必要は全くありません。

 先日、未来部と交流したSGIメンバーから、感動の声が届いていたよ。未来部が御書を学んでいることに驚き、「早速、国に帰ったら、未来部メンバーと実践します」と言っていました。

 みんなの頑張る姿が、世界中に大きな影響を与えていく。

 今、情報化も急速に進み、どんどん世界は近くなり、結ばれています。どこにいても、どんな立場であろうと、皆さんの時代は、世界が相手です。

 だからこそ、どこまでも理想を高く掲げることです。「私は世界広布をする」と決めることだ。その祈りが、かなわないわけがない。

 みんなは、人々に笑顔を贈り、幸福を贈るために生まれてきたのだから──。

 みんなには未来がある。無限の可能性がある。みんなのために、私は道を開き続けてきました。

 日本の、そして、世界の広宣流布を、よろしくお願いします。

 「世界広布新時代」とは、みんなが、地涌の使命を自覚して、世界中に、希望と勇気を贈りゆく人へと大成長していく、創価後継の晴れの舞台なのです。

 

 マンデラの言葉は『自由への長い道──ネルソン・マンデラ自伝(下)』 (東江一紀訳、日本放送出版協会刊)。『ネルソン・マンデラ 私自身との対話』 (長田雅子訳、明石書店刊)等を参照した。

 

【第23回】 師弟に勝るものはなし!(下) (2014.3.1付)

 

どこまでも「共に」進もう!

 

アメリカの教育哲学者 デューイ博士 

私たちには、先人から受け継いだ遺産を、よりよく、大きくする責任がある。そして、後に続く人たちが、豊かに分かち合えるようにするのだ

 

 ──万物が躍動する春3月が到来しました。未来部員も元気に新たなステージヘ進んでいきます。

 

名誉会長 卒業生の皆さん、晴れの門出、おめでとう!

 みんな、よく頑張ったね。一緒に、自分自身の万歳をして、希望あふれる未来を見つめていこう!

 進級する皆さんも、新しい決意に燃えて、模範の先輩と光っていってください。

 日蓮大聖人は、苦難にも負けず心も新たに前進を開始した門下の知らせを聞いて、「春の初めの喜びは、花のように開き、月のように満ちている」(御書1575㌻、趣意)と讃えてくださっています。年の初めに送られたお手紙ですが、新出発をする門下への励ましに満ちています。

 受験で思うような結果が出ず、悔しい思いをしている友もいるでしょう。でも、一生懸命に学んだという“努力の歴史”は誇り高く残ります。“挑戦王の宝冠”として、わが生命に輝きます。

 頑張ったけれども、思うようにいかないことがある。それでも、くよくよしないで、次の戦いを目指して挑んでいく。その人が真の勝利者です。最後に勝つのです。

 悲しいことや苦しいことを経て、人間は鍛えられる。偉大になれる。いつまでも、落ち込んでいてはいけない。

 さあ、胸を張って、明るく前向きに、勇気の一歩を踏みだそう!

 

 ──前回の「未来対話」では、「師弟」について語っていただきました。全国のメンバーから感想や決意が続々と寄せられています。

 「今まで、『師弟』は難しいものだと思っていました。しかし、『師弟』は身近にあるのだと感じました」

 「池田先生は、私たちのことを『愛弟子』とおっしゃってくださ

っています。私は、ここまで信じてくださるのかと思い、とても感動しました」

 「つらい時でも、池田先生を思えば挑戦できるのは、先生と自分の間に『師弟の絆』が存在するからなのだと気づきました。何もこわくはありません。どんな困難にも打ち勝ってみせます」

 

名誉会長 うれしい。本当にうれしい。

 私も毎日、皆さんと心で語り合っています。皆さんのことを思い浮かべて題目を送っています。

 未来部は私の命だもの。離れていても、会わなくても、生命と生命は、強く固く、結ばれています。

 法華経には、「在在諸仏土 常与師倶生(在在《いたるところ》の諸仏の土に常に師と倶に生ず)」──至るところの諸仏の国土に常に師と共に生まれる──と説かれています。広宣流布誓願で結ばれた師弟は、永遠に一緒に生き抜き、一緒に戦い抜いていくと約束されているのです。

 創価教育の父・牧口常三郎先生と戸田城聖先生の師弟が、深く敬愛し、学んでおられた人物に、アメリカの偉大な教育哲学者であるジョン・デューイ博士がいます。博士は、教育の目的は絶えざる

「成長」であり、それ自体が幸福であると考えました。教師と生徒が共に学び、共に成長していく──教育の根幹も「師弟」なのです。

 私も、デューイ博士の人生と思想をめぐって、その精神を継承するヒックマン博士、ガリソン博士と語り合いました。お二人との対話でも、「師弟」が大きなテーマとなりました。

      

 ──お二人ともデューイ協会の会長を務められた大学者ですね。

 ガリソン博士は、「ともに探究の道を歩む──創価学会の表現で言えば『師弟の共戦』がきわめて重要になります。師が遙か先を歩んでいても、師弟はともに強い絆で結ばれています」と述べられています。

 ヒックマン博士も、「いかなる危機に直面してもなお貫き通し、さらに強まり成長するような“良き師弟関係”を呼び起こし、称揚する(褒めたたえる)ことがとりわけ重要」と語られています。

 

名誉会長 師弟は、人間生命の真髄の道です。

 仏法において、師匠と弟子は、一対一の関係でありながら、別々の存在ではない。上も下もない。それを「不二」といいます。

 「師弟」は「不二」なのです。

 ゆえに、どこまでも「共に」進むのです。

 私の恩師・戸田先生も、青年の意見を最大に尊重してくださった。こまかなことにも耳を傾け、青年の真剣な求道心を、心から愛してくださいました。

 私は、折あるごとに、「大作は、どう思う?」「大作の考えを聞かせてくれ」と、意見を求められました。

 “一青年にすぎない私のことを、ここまで信じてくださるのか!”──感動の日々でした。ありがたい師匠でした。

 デューイ博士は記しています。

 「私たちの責任は、受け継いだ遺産としての価値を守り、伝え、改善し、大きくすることである。そして、あとに続く人たちが、私たちが受け継いだときよりも、さらに確かなかたちで、その価値を受け継ぎ、さらに多くの人びとのあいだで、豊かに分かち合えるようにすることである」

 これは、博士の墓標にも刻まれている言葉です。今回は、後継の愛弟子である皆さんに、このデューイ博士の言葉を贈ります。

 ガリソン博士は、「この精神を完全に成し遂げているのが、創価学会なのです」と評価してくださっています。

 少し難しい表現になりますが、「師匠は原理」であり、「弟子は応用」です。師匠に学んだことを、弟子が自身の行動で、何倍にも、何十倍にも広げていく。これが、勝負です。

 私は青春時代、戸田先生から教わったことを生命に刻みつけました。冗談で言われたようなことでも、絶対にいいかげんにしませんでした。

 そして、同志を励まし、日本中、世界中に、恩師の偉大な構想を、具体的に一つ一つ、実現し抜いてきました。

 

 ──師弟といえば、デューイ博士にも師匠がいたそうですね。

 デューイは、15歳で当時の高等学校を卒業。大学、さらに大学院へ進学し、哲学を専攻しました。この時、モリス教授という師匠と出会います。

 

名誉会長 モリス教授は、博学の人でした。しかも、それを鼻にかけることなど決してなかった。授業では誠実に、情感を込めて、分かりやすく教えてくれた。

 デューイ青年は、モリス教授の純粋さ、一生懸命さ、常に快活な人柄に魅了され、いっそう勉学に励んでいった。そして、教授に教わった哲学をもとに、さらに偉大な思想を形成していったのです。

 デューイ博士は、自分の子どもに「モリス」という名を付けました。恩師をどれだけ敬愛していたか、伝わってくるエピソードです。

 みんなは「従藍而青《じゅうらんにしょう》」(藍より青し)という言葉を聞いたことがあるかな。大聖人も御書で用いられています。

 青色は、藍という植物の色素から染められますが、もとの藍よりもさらに鮮やかな青になります。

 「弟子は、師匠以上に立派に成長していくべきである」という意味です。

 私にとっては、未来部の皆さんが「従藍而青」の直弟子です。

 ゆえに、君たちよ!

 偉くなれ! 断じて偉くなれ!

 強くなれ! 徹して強くなれ!

 そして羽ばたけ、広い世界へ!

 「師弟不二」なるがゆえに、君も必ずなれる。あなたも絶対にできる。

 創価の師弟に、不可能などありません。わが未来部に、あきらめなどない。断じて、勝利できる!

 私は、永遠に、こう叫び抜いていきます。

 

 ──「まだ師弟について深く理解できたわけではありませんが、くじけそうな時、池田先生の本を読み、題目をあげると、“今できることをしよう!”と思えます。これが今の私の『師弟の道』だと思います」と、素直な決意を語ってくれたメンバーもいます。

 

名誉会長 ありがとう。その心こそ、私の喜びであり、大いなる希望です。

 みんなにとって「師弟」の行動は、一日一日の生活の中にたくさんあるんです。

 困難を恐れずに学ぶ。

 父母を大切にする。

 一生涯の友情を築いていく。

 読書に挑戦していく。

 語学を習得していく。

 クラブ活動などで心と体を鍛え抜く。

 いじめを絶対に許さない。

 題目根本で、一つ一つ、目の前の課題に立ち向かっていくことが、自身の勝利となる。

 それが、やがて、民衆の幸福を開く力となり、世界平和を確立する智慧の源泉ともなるのです。

      

 ──「私たち師弟が“題目で固く強く結ばれている”ということは、どういうことでしょうか」という質問がありました。

 

名誉会長 今、若田光一さんが船長として乗り組んでいる国際宇宙ステーションが、はるかな天空の軌道を回っています。

 遠く離れていても、地球の基地とのやりとりは、電波を使って見事に行われます。発信機が出す強力な電波を、受信機で受けます。受ける側がスイッチを切らなければ、確実に届きます。目には見えないけれど、間違いなくつなかっているのです。

 心と心、生命と生命も同じです。私は、未来部のみんなの大成長を信じ、大勝利を信じて、毎日毎日、題目を送り続けています。

 御書には「題目を唱える声は、十方世界(=宇宙)で届かぬところはない」(808㌻、通解)と説かれるように、最も強い生命の波動です。

 だから、みんなも、自分自身の大成長と大勝利を確信して、題目を唱えてください。

 師弟一体の祈りです。間違いなく、つながります。

 たとえ今、自信が持てなくても何も心配する必要はありません。努力の人には、必ず「自信の太陽」が昇ります。

 大聖人は、「師匠」と「弟子」の心が一致すれば、何事でも成し遂げることができるという方程式を示してくださっています。

 戸田先生は、私を信じてくださいました。

 私も、「戸田先生の弟子なんだから、不可能はない!」と、自らに言い聞かせ、戦ってきました。

 当時は「不治の病」といわれていた結核も乗り越えることができた。どんな迫害にも屈することなく、あらゆる場所で、戸田先生の弟子として、厳然と勝利の歴史を残しました。

 もちろん、若い時代は、常に心が揺れ動きます。自分のことがイヤになる時や、可能性を信じられない時だって、あるでしょう。それでもいい。

 私が、その分、いや、それ以上に、みんなのことを信じている。見守っている。祈り抜いている。

 元気に、明るく堂々と、前進してもらいたい。

 私たちは、いつでも、どこでも、心で対話ができる。一緒に悩んで、一緒に前を向いて、一緒に勝ち進んでいこう!

 みんなには、断じて朗らかな大勝利の青春を進んでほしい。喜びあふれる幸福の人生を飾ってほしい。これが師匠の心です。

 みんなが歩んだ一歩が、そのまま、黄金の師弟の道になる。

 さあ、出発しよう!

 共に歩む勝利の道へ!